忘却は宇宙を糾合するのです
あの星々は蒸発し去った魂の欠片たちなのに違いない。
地上で焼き焦がされた骸の数々。
見るも無残な変わりよう。
ああ、でも、地上に肉片一つ残せなかった人たちもいる。
腐臭すらなく、飛び出した眼球を手で戻すことも叶わず消え去った人々。
道端の石ころに影だけが残っている。
あの日の高い太陽にじりじり焼かれて、肉の形に黒々と刻まれている。
なのに、あれから幾度も降った雨が、ダメだよダメだよの声も空しく、片鱗すら残さず洗い流してしまった。
地上の星々が天の星々となって、みんな散り散りになって、酷いくらいの煌めきを放っている。
孤独の深さ、憤りの強さ、恨みのしつこさ、諦めの悪さ。
幾夜もの嘆き、日々の妄執。遠ざかる蒼穹。忘却への誘惑。
空白の深さを思い知れとばかりに、今日も空は晴れ渡る。明る過ぎて、哭くこともできない。
死の灰は今日も降り続く。まるで平和のシンボルを気取っている。
地上が黒い雨にしとどに塗り込められたら、忘却の念に浸りきったなら、きっとその日こそ、点々は宇宙の攪拌を止め、地上の星々となって糾合し、あの日の復讐を遂げるに違いない。
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