夢二題
早朝にかけて、二度、夢で目覚めた。
一度目は四時半過ぎ。二度目は六時半過ぎ。
どちらも、かなり淋しい夢だった。なので、ほとんど忘れた夢の断片だけでもメモって、気を紛らそうとしている。
何処かの四畳半の部屋。学生時代の仲間内のアパートなのか、それともやはりオレの部屋だったか。
四角い部屋は、窓が一つあるのが見える。あとは壁か。出入り口は見えない。オレは部屋の隅で固まっている。
集まっているのは、学生時代の四人組である。なぜかオレなんかより、遥かに優秀な連中ばかりである。それぞれの高校のトップクラス。オレは平均付近をうろうろしている平凡な奴。なのにオレの友達になってくれた三人は、オレには圧倒的な知能に内心委縮するばかりだったっけ。
そんなオレとの四人。
当時、中国で糾弾されている幹部を中国当局が四人組と呼ぶ、その呼称をオレたちも集まるのはいつも四人であることにひっかけ、オレは勝手に内心で四人組と呼んでいた。みんなにはそんな呼称など堅苦しくて黙っている。
そう、オレは部屋の片隅で固まっていた。
その日はみんなオレのために集まってくれていたのだ。そう、今日はオレの誕生日。
祝ってほしい、でも、祝ってほしくない、何もめでたいことなどないのだし。オレは勝手にだんまりの蟻地獄に嵌りこんで、どこまでも暗くなっていく。
オレの態度が他の三人に伝わっていく。
誕生日なのを他の三人は分かっていて、わざわざ集まってくれた、でも、肝心の当人であるオレが誕生日だってことをまるで口にしない。なので、祝っていいのかどうか、判断が付きかねているのだ。でも、祝いたい気持ちはいっぱい溢れている。
オレ次第なのだ。でも、なぜかオレは頑なに黙り込んでいるばかり。
部屋の空気も凍て付いていくばかり。
覚えているのはこれだけである。何のドラマ性もない。脈絡もない(あったかもしれないが、忘れた)。
ただ、目覚めた瞬間、どうしようもなく淋しかったのは確かである。
二つ目も、目覚めた瞬間、夢の大半を忘れた。
何処かの広い空間。何かのイベントがあり、そのための衣装や道具類を作っていた部屋(サンバカーニバルのための待機の部屋?)。
イベントは終わったようだ。早々に帰ろうとするオレに、聞こえよがしに誰かが片づけもあるから手伝わないと、などと言う。
もしかしたらオレのためのイベント(誕生日会)だったのかもしれない。でも、オレのせいでイベントは低調なものに終わった、そんな息苦しい雰囲気が濃厚に漂っている。なのに、オレがさっさと帰ろうとするものだから…。
手伝うふりをしながら、誰の目も離れた瞬間に、自分の荷物を集め、慌ただしくその広い部屋を後にした。
あれっ、あの大事な水色のあれは、バッグの中に仕舞いこんだっけ?
でも、急いでいるので、中を確かめる余裕などない。
なかったら、町へ出て買いに行けばいい。
そとは明るいように見えたのだが、土砂降りの雨だった。目を開けるのも辛いくらい。傘など持っていない。そんなことより、とにかく、その水色の何か(マフラー?)を買いにいかないといけない。
それこそバケツをひっくり返したような雨の中、繁華街を目指して駆けだした。
真昼間で、明るい。日も差している。なのに、豪雨。頭に新聞か何かを被って、何処かを目指して突っ走った。
水色の何かを早く手に入れないと、という焦燥感。
あまりに細切れで、夢の脈絡や全貌どころか、断片さえ、拾い集めるのに苦労。
だけど、淋しいという感覚、気分だけが濃厚に残ったことは事実である。
(「夢二題」(2014/02/27)より)
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