愛の偽装表示
街角で、自転車を引く女と遭遇。俯いて「乗っていいのよ」と。オレ、?? 女、語気を荒げ、「乗って」オレ、上半身を屈める女の腰を見て、生唾ゴクン。女はついに切れ、「早く乗りなさい」オレ、慌てて後ろから及ぼうとしたら、柱の陰からガキが現れ自転車に乗せられ去っていった。
お前の店、素材、虚偽表示だろ。そんなことありません。ウソ言え。牛肉だって表示なのに、豚じゃないか。とんでもありません。だったら、一口、食べてみろ。そうですか。じゃ、一口。うーん、もう一口。さっきから、もう一口って、食べ過ぎじゃないか。ああ、全部、食べちゃった!
お前とこの建築、どうなってんだ? 見ろ、この壁、ベニヤじゃないか。そんなはずないです。そんなはずないって、現にほら、ちょっと拳固で突いたら、べりべりって破けるぞ。そりゃ、お客様のパンチが凄いんです。私じゃ、大丈夫ですもの。そうか、オレが凄いのか。だったらいいや。
先生たちは、生徒の成績アップに懸命だった。学力テストの結果が全て公表されることに決まったのだ。ランクが下位と知れたら、生徒の数が減るのは必定。先生方は目の色を変えて努力した。お蔭で成績は学区でトップに。でも、生徒が減った。学校に入れる優秀な生徒が見つからないのだ。
どうして別れましょうなんて。あなたの愛が信じられないの。俺の気持ちはちっとも変ってないぞ。見ろ、こんなにも昂ぶってる。でも、あなたは他の女にはもっと鼻息が荒いじゃない。そんなはずはない。お前が一番さ。ふん、他でも言ってるくせに。俺を信じろよ。もう、親子丼は嫌なの。
先生たちは、ゆとり教育の呪縛から逃れられないでいた。生徒に点数で序列を付けることへの躊躇いが消えないのだ。いつしか、運動会でも試験でも、みんなトップ、みんな満点に。これですべては穏便に行くはずだった。が、気が付いたら、みんな最下位、みんな零点になっていたのだ。
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