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2013/09/04

粉骨砕身そして鬼哭啾愀

 この頃よく夢をよく見る。
 明日への夢ではなく、過去の亡霊が化けて出てきたような夢。
 夢というより夢の骸と云うべきか。

 暗幕の陰で骸骨が躍っている。
 裸だからか、滑稽で惨めな姿。淋し過ぎる。隠しようがない。せめて浴衣でも羽織って、風流を気取ればいいのに、輝く骨身を自慢したいのか、コツコツ音を鳴らせながら、誰も見ていないことをいいことに、踊り狂っている。
 狂っているだけなのかもしれない。

 肉も身も削ぎ落とされ、自棄になってしまったのだろうか。
 今夜は晴れ渡った月夜。
 今夜にも半月になろうという月影が地を睥睨している。

 月の表に揺れる影が映っている。
 月の兎は、耳が殺がれて淋しそう。
 でも、あと数日もすれば、しゃれこうべ(髑髏)どころか上半身が影に埋もれていく。
 そうすれば、足腰と臼が残るだけ。黒っぽい煙が虎視眈々と。
 月光が地に満ちている。光が地に溢れているのだ。

 光の波が潮となって押し寄せ、引いていく。
 地の角が光という柔らかな鏨(たがね)に摺られて嬲られている。

 気を付けなくっちゃ!

 光は魔物だぞ。光は上っ面だぞ。決してお前の理解者なんかじゃない。お前の表面を抉っていくだけなのだぞ。
 そうさ、その証拠にお前は今じゃ、露骨なばかりの裸体の極み、骨の連なり、そう、骸骨じゃないか。
鬼哭啾愀(きこくしゅうしゅう)とばかりにシクシク惨めったらしく哭いている。

 骸骨は喚き、叫び、祈り、希(こいねが)い、平伏する。
 ああ、そんなに踊りまくって。硬骨漢のお前には、筋肉はもとより軟骨なんて洒落たものは無縁だろうな。骨身を削って磨り減って、終いには骨の欠片、粉みじんの骨の粉だ。
 お前を待つのは、粉骨砕身の挙句の蒼白なる砂漠だ。
 
 そうして目覚めるたびに歯ぎしりする自分がいるのだった。

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