海月(くらげ)なす
海中をゆらゆら漂う海月を見るともなしに見ていると、幻想的な気分に陥っていく。濃厚な非現実感の純粋結晶が舞っているようです。
海水へ姿の見えない何物かが飛び込んだ。
空中にあっては全くの透明体。風さえ柳のしなるように避けていく。
そいつが或る日、海に飛び込んだ。
自殺? それとも、ただの気紛れ?
海中にあっても、そいつの姿は見えない。
でも、形は分かる。海に沈んだときの水流、次々に変幻する泡の行方。
やがて、ついにそいつが姿を現す日が来た。
でも、良く見ると、やはりそいつは姿を日の下に晒したくなかったのだろう。
人の目に見えたそいつは、そいつと思ったそれは、実はそいつが海中で泳ぎ漂ううちに身に纏った透明な衣だったのだ。
そいつが波に、海に、泡に刻み込んだそいつの記憶だったのである。
命は目に見えない形。海月はそのことを象徴してくれているようです。
海に月の精が舞い降り、海月という命の塊へと結晶したのかも。
(「水母・海月・クラゲ・くらげ… 」(2007/04/05)より) 下地の小文として、「浮ける脂の如く」、あるいは「寅彦忌…海月(くらげ)なす湯殿の髪の忘れえず」など参照するもよし。)
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