ツイッター小説(8)
満員電車に乗った途端、嫌悪の視線を痛く感じた。正面の女は露骨に嫌な顔をする。俺の何が変なのか。嫌だからって、仕方ないじゃないか。窮屈な思いはお互い様だろ! 会社に着いた。同僚が居たので、おはようと云おうとしたら、奴が云いやがった。お前、チック、濃すぎるぜ!
俺は迷った。云うべきか否か。相手が男なら、前が開いていると云えるが、女となると。あんなにパックリと。中が丸見えだ。みんな素知らぬ顔。電車が目的地に着いたら、降りる際に教えてやるか… それまで誰も、云ってくれる奴はいなかった。着いた。あなた、ぐっすり寝過ぎですよ!
電車の音が響きが俺を悩ます。やばい! ホントにやばい! 一刻を争うんだ。早く降りてトイレへ駆け込みたい。脂汗が流れる。汗に色や匂いが沁みている。頭の中は真っ白。着いた! 俺は走った。間に合った、と思ったら、トイレは満員だった。クソ。俺はトイレにペイントしてやった。
別れの一夜が明けようとしていた。私はこの一夜に賭けていた。情熱の限りを尽くしたら、あなたは私を忘れられなくなる。けど、朝から彼は目を合わせない。私はシャワールームへ。彼はベランダへ。きっと煙草ね。私は紫煙のように消されていくの? 私は湯煙の中に虹を探していた。
何でも消せる消しゴムがあった。何でも消せる。書き損じも、壁の沁みも、顔の汚れも。手当たり次第に消した。面白かった。気がついたら、周り中が消え去っていた。あと、残っているのは、心の悩みだけ。けれど、それだけは消せなかった。私のすべては、あなたへの叶わぬ思いだから。
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