ツイッター小説(6)
「時計じかけのオレンジ」を観た。何十年ぶりに。原作の完全版が出たから、観に行ったのだ。あの頃以上に興奮した。記憶とは内容が違っていた。主人公は復讐を念じている。決して屈していない。いつか来た道を再び歩こうとしている。そうか、オレはそれを確めたくて観たんだ。
煌めく星々が夜空を横切る。星屑が欲しいとあの子が云った。手を差し出してご覧。素直に手を伸ばす。あの子の腕が星明りに映える。細い…細過ぎる腕。(お前より美しい星はないんだよ。)命が果てる間際の輝きがあの子の目にあった。涙が頬を伝う。ああ、それこそが星屑なんだよ!
未明の電話だった。また、誰か死んだのか。病床の誰彼の顔が浮かんだ。余儀なく電話に出た。ハイスイコウ、ハイスイコウと、怨念の籠った女の低い声。イタズラ? 返事のしようもない。否、声が出なかった。恐怖の念を糊塗するため、ハイセイコウと聞きなすことにした。上手くいった!
空白の頁があった。ボクが入院していた一か月。戻ってきたボクに居場所はない。みんな他人の顔。ボクは迷い子。みんなそばに居る…でも、みんなボクを無視する。命を限りに呼んだ。ボクを見て! お喋りの輪に加えてよ! すると先生が来て、ボクを連れて行った。あんたの教室は隣よ!
俺はあいつの後をつけていた。今日こそ、決着をつける。もう、我慢ならない。俺の気持ちを告白しないと。あいつにだけは分かって欲しい! あの角を曲がる前に! なのに、背中がドンドン遠遠ざかる。俺は焦った。ああ、今日もダメなのか。突然、あいつが振り向いた。早くしなさいよ!
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