ツイッター小説(3)
俺がこうなったのは、全部、あいつのせいだ。奴に出会ってしまってから、歯車がくるってしまった。もう、我慢ならない。奴を殺すしかない。その機会がとうとうやってきた。奴は目の前だ。俺は手を握り、狙いを定め、奴を思いっきり殴りつけた。血飛沫が飛んだ。割れた鏡と共に。
俺は走る。何処までも、何時までも。人は何処から来て何処へ去るのか、誰も知らない。そのように俺は走る。息の苦しさが限界を超えると、あるのは雲の上を浮遊しているような感覚だけ。喘ぐ自分が何だか可笑しい。困ったことが一つある。ルームランナーの上を走るのに飽きたことだ。
徹夜の日が続いて睡魔に蝕まれている。ノルマを終えないと帰さんと上司が凄む。こなすと次のノルマ。際限のない日々。眠気で電車に吸い込まれそうで駅のホームに立つのが怖い。あ! ホームに上司が居た。悪魔の誘惑。どうする?押すか、それとも飛び込むか。答は血の海が告げるだろう。
俺が逝くか、奴が果てるか。愉悦の海に溺れるはずが、真っ赤な炎が身を焦がす。我慢の限界。奴もだ。奴の頬が透き通るほどに上気している。炎熱の穴倉は命を呑む蟒蛇の巣。無数の蛭が大蛇にへばり付く。薄皮が剥がれて紅色の壁を傷つけ苛む。俺たちは延々と祭りに興じる。観客の前で。
少女はバレンタインチョコを物色していた。少女は一体、誰にあげるのか。キャラメル、ボンボン・オ・ショコラ。俺の口に合いそうもないスイーツが並ぶ。違う、それじゃない、あっちのウイスキーボンボンにしろ! 気になってあとを追った。すると少女は食べながら去っていった。
後を付けられている。気配で分かる。振り返る勇気がない。足を速めてみた。奴もついてくる。角を曲がってみた。奴も曲がる。振り向けばそこにあの子が…なんて夢想する。そんなはずはないのに。いつまで続くこの悪夢。先を急いだ。するとあの子がそこにいて、付いて来ないでと云った。
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