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2013/02/24

ハイスイコウ

(前略)起きたのは悪戯電話でだった。

 タクシーでの徹夜仕事で朝方に帰宅し、寝入ったのが9時頃、電話があったのは11時半頃だったろうか。熟睡しているところを叩き起こされた不快感もあり、電話を取る気が起きないので、ベルの鳴るがままにしておいた。
 留守電の設定がされているので、必要ならそこに吹き込んでくれるだろうし。
 その電話(録音テープ)に、女が低い声で、「ハイスイコウ、ハイスイコウ、台所のハイスイコウ」と繰り返す。そしてやがて静かに受話器を置く音が録音された。

 半分、寝惚けていたので、ハイスイコウがハイセイコウと聞こえたりした。小生、干支が午なので、競馬はしないが馬の名前や話題には敏感。だから最初はハッキリとは聞き取れず、栄光の名馬の名前とダブって聞こえたのだろう。

 もしかしたら悪戯電話をしてきた女も小生と同じ懸念というか心配があったのだろうか、わざわざ「台所の」と冠(かんむり)を付して、小生が誤解しないようにと配慮してくれていたのが印象的だった。
 多分、悪意のある悪戯電話を受けるのは初めてなので、ベッドの中で少々、その余韻を味わおうとしたが、今一つ、乗り切れず、ベッドの脇のテーブルに置いてあった読み止しの伊藤整の『変容』を手にしたのだった。あと数十頁を残すのみ。
 一気に読了し、起きて椅子に腰を埋めて中村真一郎氏の解説を読んだ。

 中村氏の本作品への解説に、以下のような一文がある。「この小説は、女性が六十歳を過ぎても充分に性的に活発であり、男性は老年になってもなお、年上の女性に魅力を感じるという、一般の社会常識では考えられない恐るべき事実を描き出したのである。」
 今日となっては、熟年以上の男性・女性の性的な面も含めた恋愛が赤裸々に描かれることは珍しくなくなっているし、何を今更だろうが、この作品は(以下、略)


伊藤整著『変容』…ハイスイコウ」(04/01/08)

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