3 + 3 = 6?
花子が3足す3は幾つ?と太郎に聞いた。
二人は被災地のボランティアセンターにいる。
花子のは、質問と云うより、何か思惑のありそうな聞き方。
太郎はそんな花子の表情など頓着しない。
6に決まってるだろう。何だよ、いきなり。
例えばさ、ミカンが三つにリンゴが三つあったら?
同じだよ。6だよ6。 3 + 3 は、6 って決まってるの。今さら何だよ。
二人は被災地でのボランティア活動に初めて参加した。何かしたくてならない。リーダーは不在で、二人で物事を決めなくちゃいけない。
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あのね、ミカン三つにリンゴ三つ、被災者への支援と云うかお見舞いってことで貰ったの。
それがどうした?
だからね、それを被災者に平等に配りたいのよ。
配りたかったら、さっさと配ればいいじゃん
だからさ、平等にって云うけど、どうやったら平等なのか、分からないのよ。そもそも被災された方たちは、何人もいるし。
そんなもん、あるものを片っ端から配るしかないじゃん。
もう、目をつぶって、目に付いた方から順番に配ってくわけ?
それ以外に、どんな方法があるんだ?
だってさ、ミカンが好きな人もいれば、リンゴが好きな人もいるし、ミカンもリンゴも好きって人もいる一方、ミカンもリンゴも嫌いって人もいるわけでしょう? なのに、片っ端から配給すればいいって、ちょっと乱暴じゃない。
じゃあ、どうすればいいんだ、と、やや苛立ってきた太郎。
ミカンの好きな人、手を挙げて、リンゴの好きな人、手を挙げてって、やるのか? それじゃ、競争になるぞ、下手すると、奪い合いで喧嘩が始まっちゃうぞ!
うーん、やっぱり、順繰りに配っていくしかないか。
そうだよ、あとは貰った人たちが、交換するとか何とか工夫してもらうしかないさ。
工夫するったって、そう都合よく、行く? すぐ近くで交換とか、できるかなー?
太郎は花子の心配が理解できない。
花子はとにかく心配性なのである。
あのね、そもそも、人って体の大きな人もいるし小さい人もいるでしょう? 食欲のある人、育ち盛りの人とか、と花子。
そりゃ、逆に体の具合の悪い人だって、いるだろうさ。そんなに心配なら、ミカンもリンゴも細かく分割してさ、もっといろんな人に配れるようにするとかすれば? いっそのこと、すりつぶしてジュースにして、少量ずつ、配るとかさ。
太郎は、花子の話の細かさに、今にもキレそうである。
逆に花子は太郎の大雑把さが理解不能なのである。とにかく平等に誰にも不満なく配りたいのだ。太郎が、花子に構わず、ミカンとリンゴの入った籠を持って出ていこうとするのを止める。
おめえーよー、必要なところに急いで配らなくて、どうする?
分かってるわよ、そんなこと。でも、だからこそ、みんなに平等に配りたいじゃない。
足りねえのは、分かってるんだろう? 多少のことは目をつぶって、あるだけ、配ればいいんだよ。あとのことはあとのことさ。
そんなんでいいのかなー?
いいかどうかじゃなくてさ、当面は、多少は妥協してやるしかないじゃん。そのうち、追加の支援も来るさ。
ああー、それがまた悩みの種なのよ。
何がー?
だってさ、追加の支援で、今度はバナナが三個にトマトが三個、来たらどうする。
どうして、いつも三個、三個なんだよ。
たとえばの話よ。
その三個、三個、どう配るの? やっぱり、あてずっぽうに片っ端から配ってくわけ? それでも、数が足りないし万遍なく配れないのよ。
そんなこと、知るか! とにかく、配ればいいんだよ。
だってさあー、下手するとよ、同じ人にミカンにリンゴにバナナにトマトが一個ずつ行ってさ、逆にまるで何も届かない人も出てくるかもよ。それでもいいの?
いいわけねえだろ、そりゃ。でも、じゃ、どうすればいいんだ。
二人の議論は延々と続いた。ボランティアセンターには、果物がドンドン山のように溜まってきている。最初の頃に送られた支援の果物はもう腐りかけている…
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