« 「ラヴェンダー・ミスト」断片 | トップページ | 犬の目 猫の目 »

2012/08/10

あの子は18まで…

 過日、銭湯に行った。
 平日の午後ということもあり、湯に来る客も大概、年配の人が数人程度。
 小生が一番、若手のことが多い。

 が、その日は、 洗い場に珍しく、お爺ちゃんと、その(恐らくは)孫との二人連れが居た。

 お爺ちゃんといっても、還暦を何歳か過ぎたほどの方。
 お孫さんは、幼稚園(保育所)に入園したかどうかという年頃。

 髪を洗っていたら、ありがちな会話が聞こえてきた。

 さ、お湯にちゃんと浸かるんだよ。足元、滑るから気をつけるんだよ、肩まで浸かって、50、数えたら、出ていいよ。

 子供は懸命に、一心不乱に数えはじめる。

 イーチ、ニー、サン、シー、ゴー、ローク、シーチ、ハーチ……
 そしてジューシーチ、ジューハーチ
 
 18までは順調に行くのだが、あとが続かない。
 
 幼子は、お爺ちゃんに数え直せと云われたわけでもないのに、最初から数え直す。

 イーチ、ニー、サン、シー、ゴー、ローク、シーチ、ハーチ……
 そして ジューローク、 ジューシーチ、ジューハーチ
 
 やはり、後が続かない。
 18で途切れてしまう。

 幼子が四回目にチャレンジする、ジューゴー、ジューローク、 ジューシーチ、ジューハーチを耳にしつつ、小生は洗い場をあとにし、脱衣場へと移った。

 あの子は、そのあと、何回、イーチ、ニー、サン、シー…… ジューローク、 ジューシーチ、ジューハーチを繰り返したのだろうか。

 それとも、さすがにお爺ちゃんが止めさせたのか、或いは50までの数え方を湯船の中で教えてもらい、漸くにして、湯船を出ることを許されたのか。

 何となく湯船の方を伺う気にもなれず、小生は黙々と着替え、銭湯をあとにした。


( 12/08/03 作 )

|

« 「ラヴェンダー・ミスト」断片 | トップページ | 犬の目 猫の目 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: あの子は18まで…:

« 「ラヴェンダー・ミスト」断片 | トップページ | 犬の目 猫の目 »