カラスのことあれこれ
小生の気のせいかと思っていたら、どうやら実際に東京ではカラスの数が減ってきているようである。なんらかの形で数えられているのかどうかは知らないが、そういう話を耳にするようになってきた。
そういえば、いつだったか、東京都知事の石原慎太郎氏が、東京のカラスの数が減っているという話をしていたような。いつだったかの談話で、都内の白いハトは、カラスの跋扈のため駆逐され、黒っぽいカラスばかりが目立つようになったのだとか。
そうか、小生は、東京のスモッグなどのせいでハトが薄汚れているのだとばかり思っていた。とんだ勘違いだったのだ。
余談だが、過日、両国にある東京江戸博物館に行った際、博物館を出て、近くに止めておいたスクーターのところへ戻って、ヘルメットを被ろうとしていたら、カラスが、トコトコ歩いている。驚いたのは、背中などの模様の美しさ。虹の七色のような色が明瞭に発色している。
仕事柄、都内を車で走り回っている。駅の構内などで客待ちしていることも多い。すると、駅の庇などの裏か何処かに潜むハトが、餌を求めてか、ロータリーに舞い降り、アスファルトの路面を啄ばんでいる。
そうしたハトの背などを何気なく観ていると、排気ガスか埃などのせいなのかは分からないが、薄汚れている。汚れを通して、なんとなく模様があるらしいとは分かるのだけど、とても、綺麗だとは言えない。そんなハトを見慣れている小生には、両国で観たハトの羽根の模様の美麗さは驚きそのものだったのだ。
繰り返すが、小生は、ハトは一昔前は白っぽかったのが、都会の俗塵に塗れて薄汚れていったのかと思い込んでいたりする。白いハトというのは、飼われたハト、何かのセレモニーの際か、手品などに使われるだけなのかと思っていた…。
そうか、白いハトは、カラスに駆逐されていたのか。
さて、その強い、また、強そうなカラスの数が減っている。一頃は、ゴミ置き場の生ゴミを漁ったりするということで、社会問題にまでなり、ゴミに網を張ったりして防御対策に大童だったりしていたものだ。今も、そうだ。
で、カラスの駆逐作戦が都内でも始まった(これは石原都知事の音頭によって始まったのかどうかは覚えていない)。実際、カラスの数が減った。作戦が効を奏したということかとばかり思っていた。
しかし、予想に反して、実情は違うらしい。これは(テレビで)石原都知事の談話を見聞きして知ったのだが、カラスは、カモメに敵わないのだという。そのカモメが増えている。カモメはゴミ置き場の生ゴミを漁ったりしないので、目立たないが、運河などを人生を儚みつつ、つくねんと眺めていると、水面を白い鳥が群れをなして飛び交ったり、あるいは漂ったりする光景を目にすることがあるはずである。それらがカモメなのだ。
それにしても、近くで見ると、嘴の頑丈そうなこと、切っ先の鋭さからして、カラスは獰猛そうに見える。大人の小生でも、カラスが生ゴミを漁っている傍を通り過ぎる際は、目を背けて、わたし、なにも、みてない、あるよ、と静かに息を潜めて、ひたすら何事もありませんようにと思いつつ、祈るような気持で居る。
そのカラスを圧倒するカモメって奴は、どんな奴等なのだろう。幸か不幸か、近くではカモメの怖いかもしれない形相を眺めたことはない。
仄聞するところによると、カラスは頭がいいという。目もいいが記憶力もいいのだとか。カラスを虐めた奴等は、覚えておいて、後で仲間と一緒になって、虐めた奴に仕返しするのだとか。暴走族みたいな連中だ。が、そのカラス、頭のよさが禍するのか、カモメには負ける。何も考えずに突っ込んでくる連中には、さすがのカラスも退散するのだろう(か)。
さて、そんなカラスではあるが、一昔前までは、カラスというと、童謡に歌われるような、何処か郷愁を誘う生き物でもあった。
そう、ちょっと前までなら、誰もが知っていたであろう童謡『七つの子』に唄われている世界である。野口雨情の詩を、改めて味わってみよう:
からす なぜなくの
からすは山に
かわいい七つの
子があるからよ
かわい かわいと
からすは なくの
かわい かわいと
なくんだよ
山の古巣に
いって見てごらん
丸い目をした
いい子だよ
間違っても、「からす なぜなくの」に続けて、「からすの勝手でしょう」とは歌わないほうがいいだろう。気分がぶち壊しになる。
遠い昔、小生が紅顔の美少年(?)だった頃、近所のガキ連中と遊び疲れ、気が付くと、みんなそれぞれの塒(ねぐら)というか自宅へ帰っていって、何故か一人、取り残されたりする。すると、宵闇迫る空の何処かからカラスの鳴き声が聞こえてくる。なんとなく、赤ん坊が泣き喚いているような、あるいは産声でもあるようなオギャーという声に思えたりする。時折は姿も垣間見えたりするが、大概は、薄暮を背に真っ黒なシルエットが見えるだけの林の黒に溶け込んでいて、カラスの影を見ることの叶わないことのほうが多かったような気がする。
そうそう、落ち零れで、出来の悪かった小生は、カラスの鳴き声が、気のせいか、バカーバカーとか、アホーアホーと聞こえたりして、カラスが忌々しかったりしたものだった。
ところで、余談の徒然ついでに書くと、多くの方が童謡『七つの子』を思い入れタップリに唄いつつも、この歌詞に疑問に感じたことがあるに違いない。
「からすは山に かわいい七つの 子があるからよ♪」と唄いつつも、小生も疑問に感じていた。七つの子って、七歳の子供という意味なの、それとも七羽の子供があるという意味なの、という疑問だった。
小生は、至って小心で内気でもあったので、もしかしたら回りのみんなはとっくに正確な理解が出来ているに違いにない、分かっていないのはボクだけなのだ、
だって、学校の成績だって、悲惨なんだし、先生に質問なんかしたことないから、今更、先生にも友達にも聞けない…。その疑問は、脳裏にこびり付いたまま、とうとう、忘れ去ってしまった。それとも、忘れることにしたのだろうか。
ところで、では、立派な大人として更正(?)した今、改めてこの歌詞を読んで、あるいは唄ってみて、すんなり理解できるか。どうも、あやふやである。今でも、こうなのだとしたら、厚顔の、いや、紅顔の美少年だった小生に分かるはずがないと納得する。よくも、こんな難解な歌詞の歌を堂々と歌わせたものである。どうも、童謡や唱歌には、理解不能ないし困難な歌詞の歌が多いように思う(この辺りのことは、前にも書いたので、ここでは略す)。
でも、幼少だった小生が、仮に先生か、あるいは母親に、この歌詞について説明を求めても、到底、理解は及ばなかったと思う。
ちょっと、想定問答を以下に書いてみた:
「からす なぜなくの」
「それはね、からすは山に かわいい七つの 子があるからよ♪」
「ふーん。ところでさ、山にいるのは七羽のカラスの子供なの、それとも七歳の子供なの?」
「それはね、からすの子供が待っているんじゃないの」
「えっ、じゃ、からすは、人間の子供が可愛いからって、カアカア鳴いているの?」
「バカだね、この子は。カラスの子供が七歳じゃ、とっくにお爺さんかお婆さんでしょ。とてもじゃないけど、丸い目をした いい子だよ♪ なんて、唄えるはずなわよね」
「分かんなくなってきた。からすが鳴いているんでしょ。巣に子供が居るからって、待っているからって。巣に居るのが人間の子なら、飛んでいるのは、からすじゃなくて、人間ってこと?」
「ばかだね、お前は。つくづく、我が子だね。人間が空を飛べるはずないでしょ」
「あーあ、ますます分かんないや。巣に人間の子供が待っているってことは、何? からすって、人間の子供を捕まえて巣に閉じ込めているの。その子供を早く食べたい、腹減った、と鳴きながら飛んで帰っているってわけ?」
「何て子だろうね、お前は。できることなら、お前の脳味噌と、カラスのと入れ替えてもらいたいもんだね」
「大体さ…。あれ、飛んでいるのがからすだったらさ、どうして、巣に子供を残しているんだろうね」
「それはね、親は餌を探し求めて、まだ幼い我が子を巣に残して働いているんだよ」
「ふーん、だから、母ちゃん、いつもいないんだね。父ちゃんは、でも、いつも家に居るよ。父ちゃんは、働かなくていいの。いつも、部屋でグータラしているよ?」
「いいの、父さんはね、夜、しっかり、働いてもらってるから」
「?????」
さて、カラスというと、比較的最近の歌で好きなのは、元モーニング娘のメンバーだった中澤裕子の『カラスの女房』。小生は、彼女のキャラクターと、なんといっても声が好きなのである。
『カラスの女房』の歌詞は下記:
http://member.nifty.ne.jp/kamon3/morning/karasu.html
一読すれば分かるように、この歌詞にも、童謡『七つの子』の詩が織り込まれている。但し、さすがに、「七つの子」は「七つの子供」と変えてある。
さすがである。
最後に、余談になるが、カラスの行水というが、カラスの入浴時間は結構、長いという。「羽根についたダニやシラミを落とすためで、一日に何度も行うこともあ」るのだとか:
http://www.mirai.ne.jp/~chuousho/22Quiz/mondai/karasukotae.htm
となると、小生はカラス以下の存在ということになる。
どうでもいいことだが。
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