葉桜の散り残っての落ち零れ
桜の季節が終わり、葉っぱだけとなって緑豊かな街路樹や公園を縁取る木々としてわれわれの目を和ませてくれていた葉桜も、その葉っぱが、16日木曜日から金曜日の朝にかけての木枯らしに、すっかり吹き飛ばされ、いよいよ裸木となってしまっている。
が、よくみると、木の立つ位置も関係するのだろうが、葉っぱの落ち残っている木もある。
そのほとんど裸木同然の枝などに散り残っている葉っぱというのは、散らないで頑張っていると見なすべきなのか、それとも、未練がましくしつこく枝や梢に付き纏ったまま離れないとみなすべきなのか、つまりは、本来ならあの木枯らしに、そう、満開となった桜の花びらたちが時が来ると呆気なく、そして潔く散っていくように、ちょうどそのように散ってしまうべきなのであり、ああ、それなのに残っているというのは、見苦しい、下手すると見苦しい以上に滑稽ですらある…のか、そんな感覚がふと小生の脳裏に過(よぎ)ったのである。
あの、冬の風にもめげずに枝にくっ付いている葉っぱたちは、とっくに赤っぽく変色しているのだし、いずれにしても、あと数日もしないうちに散るはずなのだ。だったら、あの木枯らしの日に散っていたほうが、よほど美意識に叶うのではなかろうか。
が、この美意識、小生の勝手な、どちらかというと我が侭な価値観に拠って立つエゴの所産と思えなくもない。むしろ、若いとは言えない小生であれば、懸命に枝にぶら下がりつづける、散る間際の、恐らくは鉄棒にぶら下がる小生であれば、限界を迎えて手がブルブル震えているであろう様を連想させてしまう、そんな切ない、けれど、健気でもある頑張りを、本来は応援すべきはずなのである。
でも、自分のことなら、しつこいと言われても未練がましく、食いついていこう、生き延びようと必死になったりするくせに、他人事となると、もっと潔くしろよ、もっと美意識を大切にしろよ、立つ鳥後を濁さずだぞ、なんて勝手なことを言う。
葉桜や木枯らしに耐え散り残る
[やや戯作調の旧稿「月に雁(かり)」(2004/12/19 作)より抜粋 (08/10/03 記)]
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