黒の河
俺は無性に腹が立っていた。お袋のこと、仕事のこと、あいつのこと、親父のこと。そして自分のこと。
お袋は何だってあんなに年老いてしまったんだろう。この数年でびっくりするほどに痩せ衰えてしまった。
でも、親父にすれば昨日の今日で、別段、お袋が急に老いたわけじゃないという。
そうか、久しぶりに帰郷した俺が迂闊だったんだ。
余計な心配も掛けたし、俺のせいで老けたんだと思うのは、俺の思い過ごし、時の流れが俺たちをも確実に何処へともしれない彼方へ押しやっていくだけのことなのだ。
道楽息子の御帰還を喜ばせようと、不意を襲ったのがいけなかったのだ。庭先で立ち木鋏を持ったまま、唖然と立ち尽くす親父の目。
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