メロディが鳴っている
突然、懐かしいメロディが聴こえてきた。
家の近くにある用水に架かる小さな橋を渡っていたときだった。
引っ越してきて、家の周辺を一人で散歩するのは初めてだった。
何日か前、誰かと一緒にこの橋も渡ったことは覚えている。
初めての橋じゃない。
辺りには誰もいない。
直前に見知らぬ人が自転車で駆け抜けていったから、もしかしてその男がとも思ったけれど、後姿はとっくに小さくなっていた。鼻歌も何も聴こえるはずがない。
大体、近付くときには何も聴こえなかったはずだ。
周囲を見回してみた。
せいぜいこの十年ほどの間に建ったような家々が並んでいる。
人影はない。窓も扉もしっかり閉じられている。
春が近いとはいえ、まだ寒いのだ。
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