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2008/03/31

メロディが鳴っている

 突然、懐かしいメロディが聴こえてきた。
 家の近くにある用水に架かる小さな橋を渡っていたときだった。

 引っ越してきて、家の周辺を一人で散歩するのは初めてだった。
 何日か前、誰かと一緒にこの橋も渡ったことは覚えている。
 初めての橋じゃない。

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 辺りには誰もいない。
 直前に見知らぬ人が自転車で駆け抜けていったから、もしかしてその男がとも思ったけれど、後姿はとっくに小さくなっていた。鼻歌も何も聴こえるはずがない。
 大体、近付くときには何も聴こえなかったはずだ。

 周囲を見回してみた。
 せいぜいこの十年ほどの間に建ったような家々が並んでいる。
 人影はない。窓も扉もしっかり閉じられている。
 春が近いとはいえ、まだ寒いのだ。

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2008/03/05

煙草に火を点けて

 街がやたらと変化していく。
 ほんのしばらく足を向けないだけで、気が付くと嘗てはあったはずの木造二階建てのアパートや古びた工場が消え去って、更地か駐車場になっている。

 俺は某町の一角にあったアパートを見るのが好きだった。
 何十年という歳月を感じさせる朽ちかけた木の塀や壁。きっと開け閉てするとギーという音がするだろうし、びったり閉まることはないだろうという窓。
 雨が降ったら、紙の家のように水が染み込み、そう、きっと廊下とか誰かの部屋のベニヤ板の天井には雨漏りの染みの痕が生々しいに違いない。
 モルタルの壁の透き間にはウレタンのテープなどが巡らせてあるに違いない。触るとポロポロ剥げ落ちる壁には、麻田奈美のポスターなどが貼ってあったりして。
(奈美の奴、あの顔で、凄い胸だった。)
 今度、強い風が吹いたら倒壊するに違いない。

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