« 2007年8月 | トップページ | 2007年10月 »

2007/09/27

一家団欒

[本作は、「Mystery Circle 9-22締め切り分出題」参加作品です。本作については、「「あれは、オレのものだ!」書いたけど」を参照願います。但し、題名を表題の如く「一家団欒」に変更しました。]

「近頃じゃテレビ・タレントも、嗚咽なんてことを知らないくらいだものな。」

 そう、オレはヴァラエティ番組を見ながら突っ込みを入れていた。

 返事はない。
 一人暮らしのオレに返事などありえない。

「嗚咽…。」

 オレが嗚咽したのは、一体、いつのことだったろう。

 そんなことさえ、まるで覚えていない。

 けれど、何かわだかまるものがあった。

 何かがあって、オレは…。

 そうだ、あれは親父の嗚咽だった!

続きを読む "一家団欒"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/09/11

靴職人の夢

 靴に魅せられたのは、オレが十歳の頃だった。
 オレは父と居間でテレビを見ていた。普段はサラリーマンで日曜日などは農業に携わっている父は、趣味が他にないわけじゃないけど、食事の際は、テレビを見るのが楽しみ。
 チャンネルの選択権は父にある。オレが選べるのは父が居ない時だけ。
 ちょうど、あの日も、父がチャンネルの抓みを回していた。
 何を見るかと思ったら、NHKの教育番組ではないか。
 ガキのオレはアニメが見たかったのに。

5171b64b76l1

← サルヴァトーレ フェラガモ著『夢の靴職人―フェラガモ自伝』(堀江 瑠璃子訳、文藝春秋) (画像は、「Amazon.co.jp 通販サイト」より)

 でも、オレは何も言えない。
 それに、オレはアニメ好きだが、そもそもテレビが好き。
 テレビで画面が動くってのが未だ感動の時代でもあった。
 確か、家にテレビが来て、そんなに日にちが経っていなかったような気がする。
 番組の内容は覚えていない。
 けれど、何故かオレは退屈なはずの教育番組に釘付けになってしまった。
 確か、ドイツの靴職人の世界を淡々といった調子でドキュメントしたような番組だった。
 オレの印象にはそのように思えた。

続きを読む "靴職人の夢"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/09/06

涸れない女

 奴はオレを急かす。

 確かめなくていいのかって言われると、オレだって引き下がれない。

 でも、一体、どうして奴が彼女のことを知っているのか。
 記憶をどう辿っても、奴に彼女のことを喋ったことなどないのだ。
 というか、オレは誰にも彼女のことは喋っていない。
 親友の誰も知らないはずなのだ。

Volvo_c7028openair_style29

→ 「2005 VOLVO C70(屋根開)」 (画像は、「クーペカブリオレ - Wikipedia」より)

 そんなオレの戸惑いなど知ってか知らないのか、奴はドンドン先へ急ぐ。
 とある町の一角。人通りが多い。
 
 いた! 彼女だ。あの日の彼女だ。
 あの日のままじゃないか!

続きを読む "涸れない女"

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007/09/04

ポケット一杯の小銭

[本作を読むに際し、「短編「釣銭」書きました!(追記あり)」を参照されると一層、理解が深まるかも。]

 雨の夜だった。オレは見知らぬ町に居た。
 どうして自分がここに居るのか訳が分からなかった。

 雨。
 傘がない。
 でも、何故か体は濡れない。
 濡れているのかもしれないけど、まるで気にならない。

 違う! 雨もオレを避けているのだ。

 喉が渇いたわけでもないのに、目に付いた自動販売機の前に立った。
 雨のせいもあって薄暗い中、スポットライトに照らし出されている自動販売機にふらふら寄って行ったに違いない。

 オレは…自動販売機という誘蛾灯に惹かれる一匹の虫なのか。

 百円玉を2個、投入し、缶入り珈琲を一本、買った。
 いや、買おうとしたが、商品が出てこないのだった。

 おカネはしっかり販売機が呑み込んでいる。
 
 見ると、嘲笑うかのように、釣銭が、ジャラジャラと釣銭受け口に出てくる。
 お釣りは80円のはずなのに、十円玉が山のように吐き出されている。

 …これはどうしたことなのだ。

続きを読む "ポケット一杯の小銭"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/09/03

釣銭

[本作を読むに際し、「短編「釣銭」書きました!(追記あり)」を参照されると一層、理解が深まるかも。]

 雨の夜だった。オレは見知らぬ町に居た。
 どうして自分がここに居るのか訳が分からなかった。

 喉が渇いたわけでもないのに、目に付いた自動販売機の前に立ち、何か買った。
 雨のせいもあって薄暗い中、スポットライトに照らし出されている自動販売機にふらふら寄って行ったに違いない。

 オレは…自動販売機という誘蛾灯に惹かれる一匹の虫なのか。

 雨。
 傘がない。
 でも、何故か体は濡れない。
 濡れているのかもしれないけど、まるで気にならない。

 違う! 雨もオレを避けているのだ。

 それより、自動販売機の釣銭がやたらと多い。百円玉を2個、投入し、缶入り珈琲を一本、買った。

 いや、買おうとしたが、商品が出てこないのだった。

 おカネはしっかり販売機が呑み込んでいる。
 
 見ると、嘲笑うかのように、釣銭が、ジャラジャラと釣銭受け口に出てくる。

 が、お釣りは80円のはずなのに、十円玉が山のように出ている。

 …これはどうしたことなのだ。

続きを読む "釣銭"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2007年8月 | トップページ | 2007年10月 »