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2007/08/30

ウラ版・浅草レポート「敗軍の将、兵を語らず」

 オモテ版レポートは既にアップ済み:
私的第27回浅草サンバカーニバル
 以下は、表には書けなかった手記風なレポート。
 題して「敗軍の将、兵を語らず」 !
 サブタイトルは、「ウラ版・浅草レポート

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← 以下、アレゴリア置き場である浅草寺の駐車場で撮影。パレード直前の各チームの作業状況画像が続く。撮影は小生。

 何ゆえ、「敗軍の将、兵を語らず」なのかは、一読すれば分かる。
 本来ならドキュメントに仕立てるつもりだった。なので、事実乃至は真率な心情のみで綴っていくつもりでいた。
 でも、結果として、多少なのか相当なのか分からないが事実と虚構と願望と妄想とが入り混じってしまった(書き手は分かっているはず…だが、書いているうちに脳味噌が興奮状態になったこともあり、話が膨らんできて、収拾が付かなくなった)。

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 ま、真実というものは、そしてこうした心情溢れる文というものは、虚実皮膜(きょじつひまく乃至きょじつひにく)の微妙な按配と韜晦とにあってこそ滲み出すもの生きるものだという小生なりの信念で、通常のレポートでは書けない領域まで踏み込んで描けるのでは、という野心というか目論見というか算段というか切ない希望で以て書いてみた。

 一言で言うと筆の行くまま興の湧くまま書き連ねてみたのである。
 話を分かりやすく、あるいは面白くするため、謎のダンサーを登場させている。我輩には餌が必要なのである。

 レポートというか手記というかモノローグの主体たる書き手(我輩)の設定は、日頃はあるサンバチーム(リベルダージ)のパレードの一追っ駆け野郎でありカメラ小僧(実際は既に立派な中年)である。
 チーム内には密かに憧れているダンサーがいる。しかも、何人も!
 奴を知っている人は誰もがそう思っている。奴がチームに居る魂胆はみえみえなのである。が、奴自身は秘密はバレテいないものと思っている。ただの純粋なカメラ小僧と思われていると思っている!

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 奴にしたら、カメラ小僧とかチームの追っ駆けなんてのは、それは世を忍ぶ仮の姿であり、本当は違うチームの謎のダンサーのファンであり追っ駆け野郎なのである!
 或る日、ひょんなことで見初めてしまい、それが違うサンバチーム(バルバロス)のダンサーと分かって、なんとか今日の浅草でこそダンサーの踊る姿を撮りたいと虎視眈々だったのである。
(ダンサーをバルバロスの方という設定にしたのは、小生はリベルダージが優勝できなければ、優勝候補は今年もバルバロスだろうと予測していたから、である。ウニアンさん、御見逸れしました! → 「おもしろき こともなき世を おもしろく第27回浅草サンバカーニバル優勝(歴代画像つき) - livedoor Blog(ブログ)」はウニアンファンなら必見!)

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 気の小さい奴(我輩)は、他のチームのパレード見物に行けないのだ。行ったのが自分のチームのメンバーに知られたら気まずいと思っている。肝っ玉が小さいのだ。
 追いかけられているダンサーは少々辟易しているが、基本的に無視している。適当にあしらって、時に手玉に取っている。
 薄々おちょくられていることに気付き始めている奴(我輩)。でも、懲りないのが追っ駆け野郎なんだよね。

 設定としては更に、『ノートルダムの鐘』的要素、つまり、カジモトとエスメラルダの関係といった複線も入れようかと思ったけど、そうすると話がリアルになりすぎるし、それ以上に、ブログという日記的性格の枠内に収まらなくなるので止めておいた(手っ取り早くこの要素を知りたい方は、「sumu note, Inc.炎の中心に愛を叫んだフロロー - livedoor Blog(ブログ)」や「『ノートルダムの鐘』 醜い外見と醜い内面と - *モナミ* - 楽天ブログ(Blog)」などを参照。加藤登紀子さんが歌ってヒットした『百万本のバラ』の歌詞も参考になるかも。思えば、この歌が流行る直前、薔薇のような人に失恋したのだった!)。

 なお、以下の3チームが話の中に登場するが、話(表記)の都合上、略記させてもらう:
ウニアン:G.R.E.S. União dos amadores(ウニアン ドス アマドーリス)
バルバロス:G.R.E.S. 仲見世 バルバロス
リベジ(リベルダージ):G.R.E.S. リベルダージ

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敗軍の将、兵を語らず」(ウラ版・浅草レポート

 我輩は今日はスタッフである。
 なので自分のチームのパレードも撮影はできない。多分、そんな余裕はないだろう。
 多分、他のチームのパレードも撮影は叶わないだろう。

 でも、我輩は前夜からワクワク気分である。
 何故なら、勝手にファンになっているダンサーさんが同じ浅草のパレードコース上に立つ。
 立つ時間帯はまるで違うなんて、そんな小さなことは気にしない。同じ浅草のコースで一人はパフォーマンスし、一人は(我輩は)黒子として頑張る、それだけで嬉しいのである。

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 スタッフしている以上は、その人の踊るところは観れなくても、せめて一言、挨拶だけでも出来るかもしれないではないか。
 小さな胸に収まりきらないそんな期待と不安の念を我輩のふくよかなお腹に一杯に詰めて浅草へ。

 我輩はスタッフである。アレゴリア(山車)押しのスタッフである。なので、浅草駅を出て浅草寺界隈に近づくと、まずは浅草寺の駐車場へ向った。
 浅草寺の裏手にある大きな駐車場がS1リーグ(昨年のパレードコンテスト上位10チーム)の山車の待機場所なのである。
 居並ぶ山車群。壮観である。真っ先に我がチームの山車が目に飛び込んでくる。
 
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 これか、これなのか!

 既に完成していて、細部の手直しやチェックをしている。

 既に完成していて当たり前じゃないかって?
 鈴木さりなにあらず…さにあらず!
 パレードの前夜から徹夜で作業してもパレード直前まで完成に至らずということが間々あるのだ。

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 でも、我がチームについては、みんなの(そこに我輩は入らない!)の頑張りと協力があって、余裕だった。
 この余裕がパレードをする上での余裕や気持ちのゆとりに繋がる。

 ああ、でも今の我輩の胸中はそんな感懐に浸る暇はない。
 
 浅草寺の境内でも路上でもさるお方とは遭遇せず。それどころか、知っているダンサーさんとは誰一人、遭遇しない!

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 かくなる上は控え室でチラッとでも観たいもの。
 控え室は東京都立産業貿易センター(台東館)の中を1フロアー全てを借り切り、さらに他の階のフロアーも借り、それでも足りなくなって、今年は近くのホテルまで利用させてもらっている。

 パレードで身にまとう衣装や小道具が、そして出場する面々がやたらと広いフロアーを所狭しと埋め尽くしている。所々でハグハグの挨拶が交わされ、久しぶりとか、今日だねとか、ワイワイガヤガヤと賑やかである。

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 その広いフロアーは、間の通路で大きく二つに分けられている。我輩の属するリベジのエリアの隣がウニアン。あとS1リーグのチームが昨年の順位で以て控えのエリアが割り当てられている。
 通路の反対側は、男性の更衣エリアとS1リーグの中の下位のチーム(これが間違いの元だった)。
(女性の更衣室は違うフロアーが割り当てられているらしいが、我輩は現認していない!)

 ってことは、ウニアンの奥、壁際がバルバロスのはず。
 我輩、正午過ぎに控え室に入ってからは、自分のチームの方に挨拶をしつつも、視線(関心)は奥の壁際のチームの面々に。

 ああ、でも、ダメ、どうやっても、かのお方の姿が見えない。
 
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 控え室と浅草寺(山車置き場)とを往復すること、何度か。山車の制作や監督に携わっていた人たちも、出場する時間が迫ると、山車の傍に付きっ切りというわけにはいかない。
 チームを監督する人や、日頃、あれこれチームを世話してくれている人、さらに今日のスタッフとなっている人など数人が残っている。
 我輩も僭越ながら、山車の傍で出場(スタンバイ)までの時間を過ごす。時間が経つに連れ、下位のチームの山車がパレードコースへ向うため、段々、山車の台数が減ってくる。

 尤も、テーマサンバリーグである大塚サンバチームの山車は早々とオープニングパレードを終え駐車場に戻ってきているが。
 さすがに、大塚サンバチームの山車は造作が立派だ。番組の小道具係りの方が作っているのだろうか。費用も相当程度に掛けているのだろう。

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 3時過ぎにスタッフの面々もパレードのための着替えを終えて山車の周辺に集まることになっている。
 2時半前には控え室に戻って、我輩もスタッフのための衣装を羽織る。馬子にも衣装だろうか。

 控え室で依然、彼女の姿が見えないかなと廊下をウロウロ、奥の壁際をキョロキョロ。やっぱり、あの人は謎の人なんだろうって、納得するしかないのか…。

 そう思っていたら、突然、何処から現われたのか、さるお方の姿が!

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 何処から来たの。天から? 海の彼方から?
 ちょっとだけ挨拶。クールな目。
 そして彼女は一言、
 「ジスタキは何処」

 我輩には突拍子もない言葉に呆然しつつも、視線だけは体をねじってそちらのほうへ。
 彼女はさっさと立ち去る。
 そうか、我輩に用があったんじゃないのね。
 そりゃそうだよね。

 ふと見ると、どうやらお目当ての人物を発見したようだ。とっても喜んでいる様子に嫉妬。
 チクショー、何がジスタキだ。小生の心は、ムスタキだぞ! 
(「マルチ100円ライター・高島与一 『私の孤独』とジョルジュ・ムスタキ」参照)

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→ コースを目前に出場スタンバイするリベルダージのアレゴリア群。

 それからしばらくして控え室の通路で、もう一度、擦れ違う。まだ彼女はパレードのための着替えしていない(その時に、バルバロスの控えエリアを聞けばよかった…。我輩、とうとう、バルバロスの控えエリアを最後まで勘違いしたままパレードが終ってしまった)。

「まだ、だね」
 と、彼女の服装を見て我輩。
 彼女のダンサー姿を見たくてたまらなかったのだ。
「まだ、まだ」と、彼女はあくまでクール。

 我がチームのパレードが終って、山車の浅草寺への運搬も滞りないのを見て、やっぱり、観たい! とパレードのフィニッシュ地点へ。

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→ これより以下6枚の画像は、パレードコースでのG.R.E.S. リベルダージのアレゴリア画像が続く。画像は、Charlie K.さんの「浅草サンバパレード 2007 - 写真共有サイト「フォト蔵」」より許可を戴いた上、借り受けている。Charlie K.さんのサイトは、「Charlie K's Photo & Text

(ここより、「私的第27回浅草サンバカーニバル」から転記)
 情けないことに、我輩、パレードが終った時点で体力を消耗しきって、ヘトヘトだった。山車を商店街を抜けて浅草寺の境内裏の駐車場へ運ぶのも、途中、リタイアしてしまった。手伝う若手が何人も居て、出る幕もなかったし。

 ……が、そうだ、今なら、最後のパレードである昨年まで連続優勝を果たしていた強豪G.R.E.S. 仲見世 バルバロスのパレードを少しは見ることができるかもしれない。間に合うかも!

 我輩、解体作業をサボタージュして、パレードコースのフィニッシュ地点へ戻った。
 凄い人だかり。4年前、初めて浅草サンバカーニバル会場へ来て観客の多さに圧倒されたのを思い出した。
 しかーし、我輩、これでも4年以上のカメラ小僧(中年)という実績がある。
 常に観客の中、観客の後ろでカメラ小僧してきたのである。
 足を伸ばし、手を伸ばし、鼻の下まで伸ばして、懸命にリベルダージのパレードを追っ駆けしてきた燦然と輝く貴重な実績があるのだ。
 負けてたまるか、である。

 フォアグラとしてなら絶品となれそうな体に鞭打ち引きずって、幾重にもなって犇く観客の後ろから、デジカメを持った手を伸ばしてバルバロスのパレードの模様を懸命に撮ったのである。
(以上、「私的第27回浅草サンバカーニバル」より転記)

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 アーケードの下は凄い人だかり。掻き分け掻き分け、少しでもパレードを観れる場所を探す。なんとか、バルバロスの先頭がフィニッシュに差し掛かる間際に間に合ったようだ。一安心。
 でも、彼女の属しているポジションは分からない。なんとなく衣装が色っぽいというヒントがあるだけ。でも、どのアーラを見ても、色っぽく見える。

 とにかく、デジカメを高く翳して取り捲る。目でも追う。我輩の節穴というか目で見逃してもデジカメに彼女の画像が残っているという奇蹟もありえないではない。

 おお、あのアーラだ。あそこにいるに違いない。目でデジカメで探しつつ撮影。
 …だけれど、とうとうデジカメには収められなかった…。

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 と、諦めた瞬間だった。
 あの方の姿を幾重にもなっている観客の透き間から見えた。それこそ、コンマ1秒か2秒。
 デジカメに収めることは叶わなかった。でも、ほんの一瞬でも彼女の姿を見ることができたのだ。それで良しとしないと。

 疲れきった体を引きずって控え室へ。我輩、ほとんど敗残兵である。自分のチームの写真を撮れない、憧れのダンサーの姿を一瞬、垣間見たものの、一枚たりとも写真に収められない。精魂尽き果てるまで山車を押して頑張ったのに、画像というご褒美が何もない。
 控えエリアに戻って、スタッフ衣装のままに、チームのメンバーにご苦労様と声を掛けたりしつつも、呆然となり横たわっている。

 自分のチームのパレードは観れないのは覚悟の上とはいえ、あの方をしっかり見れなかったのはガッカリ。

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 そのうちに、控え室も、先にパレードしたチームのメンバーが去って二次会場かパレード結果発表会場などへ写っていったこともあり、すっかり見通しがよくなった。

 と、そのとき、あの方を発見!
 それも通路を挟んで反対側に?!

 えっ、あんなところに居たの? 最初から?
 あそこって、S1リーグの下位のチームたちの控えエリアじゃないの?

 ……。しばし、沈思黙考。

 ……あの娘(こ)、もしかして居場所、間違えている? 自分のチームじゃなくって、他のチームの控えエリアに居る……?

 んなわけ、ないか……。
 …ってことは……。

 そうか、そうだったのか!

 で、小生、夕方の六時半頃、浅草サンバカーニバルでスタッフ役を務めるため通って4年目も終わりになって、やっとバルバロスの控えエリアに気付いた次第。

 愚か者よ!

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 この広い控え室に浅草サンバカーニバルの(自分のチームの)スタッフするために来ること4年目。
 これまでずっと、バルバロスの控えエリアはリベジと通路に面して同じ側にあり、優勝してからはリベジよりも控え室の入り口からは奥の部分となる、壁際にバルバロスの面々がいるものとばかり思い込んでいた。

 で、通路を挟んだ向こう側は、下位のチームなんだろう…って。
 
 ホントに、ゲッ、である。

 ってことは、リベジの隣は壁際まで全部、昨年は準優勝で今年は見事優勝したウニアンのメンバーで犇いているってこと?

 ウニアン、凄い数、居るじゃん!
 
 そういえば、かのお方がいるに違いないと、お姿を探し求めて、時おりチラチラと、でも内心、必死になって凝視した際、壁際までのメンバーは、みんな若いなー、バルバロスってメンバーの層が若いのかな、どうやってメンバー、集めてるんだろう、などとボンヤリ思っていたのだった。
 学生主体のチームであるウニアンだったら、若いのは当たり前じゃん!

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→ パレードコースでのG.R.E.S. リベルダージのアレゴリア画像。画像は、Charlie K.さんの「浅草サンバパレード 2007 - 写真共有サイト「フォト蔵」」より借り受けている。Charlie K.さんのサイトは、「Charlie K's Photo & Text

 憧れのサンバメンバーらの写真を撮れなかったというショックで気落ちしていた我輩に、こうして更なる驚愕の事実(というより自分がそこまで愚かだったのかを思い知らされたショック)が圧し掛かり、立ち上がる気力も着替える気力も喪失してしまった。
 それからは、疲れきった体を休めるという意味(名目)もあり、ずっと横になっていた。失恋し、雄同士の生存競争に負けたトドのように!
 
 することはというと、遠くからあの方のほうをチラリチラリ。

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← これより最後までの4枚は、同じくパレードコース上でのアレゴリアの光景。画像は、「Sambadrome」のくまごろうさんに許可を戴いて掲載しております。


 パレード衣装を脱いで、多分、女性陣の着替え室へ向う彼女(手ぶらだったし、そのまま帰るふうではなかった)。それとも化粧室へ向ったのか。なんて悩ましい後姿。後光が差している。遠いなー!

 一層、だだっぴろく感じられる控え室。

 戻ってきたのは気付かなかった。
 いつの間にか、同じ場所に座っている彼女。パッと花が咲いたよう。化粧しているのだろうか。遠目には分からない。バルバロスさんのエリアだし、じっと見るわけにもいかない。同じチームのメンバーの蔭になって見えなくなることもしばしば。

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 でも、同じ空間にいるというだけで嬉しい。

 時間は何時になったのだろう。七時はとっくに回っていたようだが。

 ああ、何もかもがちぐはぐ。連続優勝しているバルバロスの控えエリアさえ、完璧に勘違いしていただなんて、どう考えても愚かだ。こんなこと、誰にも言えない。きっと、永遠の秘密になるに違いない。
 分かっていたら、そのエリアで彼女を探し、機会を見つけて、挨拶に出向いたものを!

 山車押しという役目はともかく、肝心の(?)目的は何一つ果たせなかった…。

 ああ、俺って…。さすがにこの年になると自分の愚かさは自分でも悟ってはいるけれど、まさかここまでとは思わなんだ。

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 まあ、これが我輩なのだ。愚かしさで一杯の自分。猫より劣る。
 こうなったら、我輩は猫より愚かですって、小説でも書くしかないかもしれん。

 茫然自失の我輩。


 気がつくと控え室が最後にパレードしたバルバロスのエリアを除くと、寂しいほどガラガラになっている。
 リベジのメンバーも大方の人は着替えを終え、数人が掃除や片づけで残っているだけ。
これは燃えるゴミ、これは燃えないゴミってやっている。
 我輩も、これ以上トドのようにドテーと横たわっていたら、ゴミに間違えられそう。
 我輩は燃えないゴミなのだろうか。でも、心は燃焼し尽くしているけれど…。

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→ ここまでの4枚は、同じくパレードコース上でのアレゴリアの光景。画像は、「Sambadrome」のくまごろうさんに許可を戴いて掲載しております。
 
 小生は、あの方が身支度なのか化粧なのか、まだ何かをしているのを尻目に、悄然たる面持ちで控え室を去った。

 挨拶は? せめてさよならの挨拶は?

 いいんだ。敗軍の将、兵を語らずだ。

 すっかりくつろいでいる彼女のところに、ノコノコ出向いても迷惑だろう…。
 変なのが挨拶に来たら、周りのメンバーの手前、彼女に迷惑だ。

 ついさっき、バルバロスの控えエリアが分かりましたって、なので挨拶に来ましたとも言えないし!

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