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2007/08/30

ウラ版・浅草レポート「敗軍の将、兵を語らず」

 オモテ版レポートは既にアップ済み:
私的第27回浅草サンバカーニバル
 以下は、表には書けなかった手記風なレポート。
 題して「敗軍の将、兵を語らず」 !
 サブタイトルは、「ウラ版・浅草レポート

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← 以下、アレゴリア置き場である浅草寺の駐車場で撮影。パレード直前の各チームの作業状況画像が続く。撮影は小生。

 何ゆえ、「敗軍の将、兵を語らず」なのかは、一読すれば分かる。
 本来ならドキュメントに仕立てるつもりだった。なので、事実乃至は真率な心情のみで綴っていくつもりでいた。
 でも、結果として、多少なのか相当なのか分からないが事実と虚構と願望と妄想とが入り混じってしまった(書き手は分かっているはず…だが、書いているうちに脳味噌が興奮状態になったこともあり、話が膨らんできて、収拾が付かなくなった)。

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 ま、真実というものは、そしてこうした心情溢れる文というものは、虚実皮膜(きょじつひまく乃至きょじつひにく)の微妙な按配と韜晦とにあってこそ滲み出すもの生きるものだという小生なりの信念で、通常のレポートでは書けない領域まで踏み込んで描けるのでは、という野心というか目論見というか算段というか切ない希望で以て書いてみた。

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2007/08/24

夕焼け雲

 ずっと昔、ずっとずっと昔のこと。
 おれがボクだった頃のこと。
 
 ボクにはお兄ちゃんがいた。頼りになる近所のお兄ちゃんだ。ボクがいじめられていると、助けてくれる。
 でも、二人っきりだったりすると、時々、ボクをいじめるので、そんな時はボクはお兄ちゃんをオニちゃんと声に出さないで呼んでいた。
 ある日、何処かの町をボクはお兄ちゃんと歩いていた。
 はっきり覚えていないのだけど、縁日へ行く途中だったような気がする。
 一人ぼっちで庭先でしょんぼりしているボクを見かねてお兄ちゃんがボクを連れ出してくれた…ような。
 お兄ちゃんは縁日は隣の町でやっているという。
 隣の町!
 ボクには遠い遠い、山の向こうとも思える。そんな見知らぬ町へ行くなんて、ボクには大冒険だ。
 
 夏の日差しはようやく和らいでいた。砂利道も照り返しでまぶしいってことはない。運河に掛かる橋の上から遠くの真っ青な空も段々運河の水面の濃紺に負けそうになっていた。

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← 真っ青な空。空の青以上に紺碧の運河の水面。

 どういう話の流れだったのか、夕焼けの話になった。
 それが段々と、夕焼けと朝焼けの違いの話に変わっていったような気がする。

 その疑問はお兄ちゃんが口にしたはずだった。…でも、記憶が曖昧だ。もしかしたらボクが兄ちゃんに訊いたのかもしれない。
 夕焼けの空と、朝焼けの空を、写真で見た時、その写真の光景だけで見分けることができるかどうか。

 思い出した! 前の晩、ボクの姉ちゃんがボクにそんな話をしたのだった。
 
 お兄ちゃんはできると言った。
 ボクは仕方なくできないよって言った。
 ホントはボクができるって言うつもりだった。だって、姉ちゃんはできないって言っていた。だから、お兄ちゃんにはできないと言ってもらって、できると言い張るボクをたしなめてもらうつもりでいたのだ。
 そしてお兄ちゃんはボクのこと、ダメだな、なんて言って可愛がってくれる…はずだったのに…。

 見分けるなんて、出来ないよね、ボクは申し訳なさそうに小さく言うしかなかった。

 できない? できるさ。お前、夕焼けや朝焼けをあんまり見たことがないんだろう。

 そんなこと言われても、ボクは困るだけだった。夕焼けはボクだって、何度となく見たことがある。
 でも、朝焼けはどうだろう。朝寝坊ってわけじゃないけど、朝焼けが出ている頃は、寝床の中のはずだ。

 ボクは懸命に朝焼けと夕焼けの光景を思い浮かべようとした。でも、似たような空の感じがぼんやり浮かぶだけだった。

 どうにも困ってしまって、苦し紛れに、「空の方角が違う」って言ったら、お兄ちゃんにフン! と言われてお終いだった。

 写真だけって言ってたじゃないか! それも見知らぬ土地の夕焼け写真なんだろ?

 ボクは見知らぬ土地、とお兄ちゃんに言われただけで訳もなくビビッてしまっていた。
 見知らぬ土地の空なんて、見たことがないんだから、なーんにも分るはずないよ。
 そう、言い切ることができたらすっきりするんだろうけど、ボクにそんなことが言えるはずがなかった。

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→ 夕焼け空 (画像は、「夕焼け - Wikipedia」より)

 お前、今度、夕焼けとか朝焼けを見ることがあったら、空の様子をジッと見てみろ。

 ジッと?

 そうさ、ジッとだ。するとな、白い雲が真っ赤に染まった、その後ろに何かが見えるはずだ。

 何か? 何かって?

 何かだ! 見りゃ、分るって。 あのな、夕焼けの空にゃ、後ろに風の神様がいるんだ。

 風の神様?

 風神さ。

 フウジン?

 そう、風の神と書いて風神だ。ほら、夕焼け雲をよく見ろよ。あれは風神様の衣(ころも)だ。風に吹かれてなびく白い着物なのさ。

 えっ、あれは雲じゃなくて、白い着物なの?

 そうさ、神様の神々しい衣装ってわけさ。その衣装が赤く染まるんだ。

 何が染めるの?

 何が染める? お前、トンチンカンな質問をするんじゃないよ。太陽に決まってるじゃないか。

 太陽が染めてる…。でも、日中のほうが太陽、カンカン、照ってるんだから、昼間のほうが神様の白い服も赤いんじゃないの?

 ボクの疑問がお兄ちゃんを怒らせたみたいだった。
 
 お前のへ理屈にも呆れるよ。 分かった、お前、夕焼けと朝焼けを写真だけ見て区別する仕方が分からないものだから、話を逸らそうとしてるんだろ。ずるいぞ!
 あのな、昼間は暑いから風神様も休んでるんだ。空にはな、水神様に雷神様もいるんだぞ!

 ずるいって…、そんな。ごめんなさい。

 そっか、風神様だって、真昼間は辛いよね。じゃ、夏の空の白い雲は…、きっと、風神様が脱いだ白い着物を干しているんだね。(赤くならないのが不思議だけど…。)

 ボク、分からないや。……そうだ、朝焼けの雲は、フウジン様もまだ朝で元気だから、きっと雲も、その、白い着物も真新しいに違いないよ。パリッとしてさ。
 で、夕方になると、空を飛び回って疲れているから、着物もシワが寄ったり、汚れたりして…、そうだ、分かった。白い着物が新しいのが朝で、夕方のは多分、よれよれなんだよ、きっと。ほら、雲、千切れそうだし。

 朝焼けの雲はあまり見たことがないので、ボクは自信がなかった。もう、当てずっぽうだった。破れかぶれだ。どうにでもなるがいいんだ!

 この答えはお兄ちゃんをもっと驚かせたみたいだった。そんな答えがまさかこのボクから返ってくるとはお兄ちゃんは想像もしなかったに違いない。

 段々、話が予想外の方向に流れてしまって、お兄ちゃんはダンマリを決め込んでしまった。お兄ちゃんが頭に来ている証拠だ。このままだと縁日にも行くのをやめるって言い出しかねない。仮に行っても、いつだったかみたいにボクを置き去りにするかもしれない。

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← 暮れなずむ空に怪しい色と形の雲が。風神様か。

 その時だった。二人の背後でビューという音がした。振り向くと、空に一本の鋭い剣(つるぎ)のような形の雲が飛んでいた。妖しい色が不気味だった。

 あれは!

 あれが…もしかして…、風神様?

 そうだ、風神様だ。どうだ、風神様はやっぱり居るだろう!

 うん、居るんだね。凄いね。お兄ちゃんの言った通りだ。
 
 さあ、縁日に急ごう。

 お兄ちゃんは鼻高々という表情をしていた。
 平気を装うお兄ちゃんの足がブルブル震えていたのをボクは見逃さなかった。
 でも、ボクは見て見ぬふりだ。
 縁日へ行くのがフイになっちゃ、困るもの! 

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2007/08/22

雨の夜の夢

 俺は眠れないままに闇を見詰めていた。
 じっと眺めていると、見えないはずの闇の中にいろんなものが見えてくる。分厚いカーテンの向こうの何処か靄の掛かったような夏の終わりの夜の闇が、まるで船底の罅割れから水の洩れ入るように俺の部屋を満たしているようだった。

 内と外とを厳格に分けるために、高いカネを払っておんぼろなアパートには不似合いな遮光カーテンを下げたのに、まるで役目を果たしていない。
 漆黒の闇が次第にただの闇となり、やがては遠い記憶の海の底のブルーへと変わっていく。
 俺は海中が嫌いだ。浜辺から眺めるだけなら呑気に構えていられるけれど、海の中となると、溺れる! としか思えない。
 海水が俺の体の隅々まで浸透する。俺を何処までも膨らます。俺は脹れていく。パンパンになるまで膨張して、俺は気が付いたら、裏返しにされた肺の風船、壁に張り付く皮脂、踏み潰された猫、捨てられた硬膜、ゲロを溜めたポリ袋。

 闇の底には終わりがない。
 いつか固い岩盤に降り立つという希望など無い。加速度を増す落下。それともあの世への上昇なのか。体がグルグル回り、目が回り、眩暈がし、吐き気を催し、脳味噌はメニエル病患者の円舞。

 眠れない。
 俺は救いようの無い孤独に吐き気を覚えるばかりだった。腸がひっくり返るようだった。胸が掻き毟られる。常に研ぎ澄まされた爪で身体中を引っ掻いた。夜毎、体にビュランで刺青を入れた。気が狂いそうだった。だけど、ギリギリの土壇場になると狂気の世界から引き戻される。お前はまだ、生きなければならないと誰かが告げる。そうは簡単に気を狂わせてなるものかと、闇の中ののっぺらぼうの手が俺を引っ張り挙げる。得体の知れない鉤が俺の首を吊り下げる。俺はバカみたいに足をジタバタさせる。
 くそ!俺のこの格好を見て、みんなが嗤っているじゃないか!

 みんな? みんなって一体誰だろう。俺の周りに誰かがいたことがあったろうか。俺には誰も見えた試しがなかったじゃないか。それがこの期に及んで誰かが現れたとでもいうのか。
 不意に懐かしい音が聞こえてきた。雨だ。夏の終わりの雨だ。夜の雨だ。雨が俺の胸を叩く。俺の心を濡らす。俺はビショビショになる。周囲の全てもグッショリ、濡れている。
 ああ、そうだ、みんなって、こういうことだったのだ。

 雨。

 雨の夜は切ない。
 あの遠い日のあの人を思い出させるからなのか。でも、あの人って、一体誰だ。俺に会いたい人などいただろうか。会うためなら魂を抉り出しても、その人に会いたい…、そんな人がいたのだろうか。
 何処かに誰かがいるのだろうか。
 もしかして、この世に俺一人なんてことは、ないよな。
 ないって誰か言ってくれよ。
 俺は、俺は助けて欲しいんだ。恥も外聞もあったもんじゃない。俺は崩れちまって、形がないんだよ。だから、町で行き過ぎる人も、俺がここに居ると気づくことは無い。俺は幽霊。そこにいるのに、誰にも見えない幽霊。その存在を否定はできないけど、さりとてあるというのも、憚られる曖昧な影の影。

 雨はこの世の何者をも濡らす。この俺さえも濡らしてくれる。
 雨は、部屋の中の俺さえも濡らしてくれる。俺の目。俺の頬。俺の枕。
 雨は、この世界を歪めてくれる。世界が思いっきり形を崩して、そうして俺の心と同じほどに崩れ去ったなら、その時は、俺はやっと息衝くことができるのかもしれない。

 怯えきった心。日の光をみない目。咲かない花。
 あまりに深い夜。底の見えない夜。終わりのない目覚め。堰き止めようのないダム。塞ぎようの無い亀裂。
 何者でもない俺。あの人の影。
 夜の果ての旅を何処までも続けて、やっと俺はあの人の影を見た。この世の何処にも居ないあの人は、黄泉の原に咲き誇る黄色い花を捧げ持つ。
 あの人は、静かに歩いている。
 その先にあるのは? 奥津城。誰の?
 ああ、俺のじゃないか!
 待ってくれ。俺はこれでも生きているんだ。お前の仲間などじゃないんだ。俺はお前を愛している。けれど、俺はこの世の人間のはずなんだ。そうだろう?
 ああ、早まるんじゃない。その花を手向けたなら、俺は本当に死んでしまうんだぞ。それでもいいのか?!

 けれど、歩みを止める気配はまるでなかった。あの人の氷の彫刻のような横顔が見えるばかりだった。違う。俺は死にたいんじゃない。それどころか、死ぬのが怖くてならないんだ。俺は臆病者なんだ。俺が死ぬのが怖いのは、俺は一度も生きたことがないからなんだ。お前をあの日、拒否したのも、二人で生きることが怖かったからだ。だから、お前だけがあの世で生きる道を選んだ。

 ダメだ。もう、止まってくれ。許してくれ。臆病な俺を見逃してくれ。お願いだ。俺など、どうでもいいじゃないか。そうだろう? 

 けれど、あの人は立ち止まることはなかった。不思議なことに、あの人だけは濡れていない。部屋の中にも雨が降っていたはずなのに、あの人は秋の日の高い空の下、白いドレスの裾を翻し、墓の前に立った。そして、ついに手向けの花を墓に供えた。と同時に、俺は消え

                         (03/09/17)

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2007/08/19

誕生日に寄せて

 以下は、物語でも虚構作品でもありません。数年前、ある人の誕生日に寄せて書いた、やや感傷的なエッセイです。既に公表済み。
 ただ、エッセイと言いつつ、一読すれば分るように、薄っすらと虚構の隠し味があったりする。
 
 つい先日、ある方が誕生日を迎えられたので、遠くからの囁きめいたメッセージとして贈ろうかと思ったけど、メッセージとしては長過ぎるし、ある意味、誰彼へというより自分に向けてという気味が紛々と漂ってくるようで、ちょっと気後れして、気がついたら誕生日を数日も過ぎてしまった。

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2007/08/03

ハーフロック

[本作は、「Mystery Circle 企画MC 《Funny story Mystery Circle》」参加作品です。制作の背景事情などを、「「ハーフロック」アップ!」に書いておきました。]


ハーフロック

 あった。あの店だ。
 オレは浩美に教えてもらった店をようやく見つけた。

 やっぱり、あの店だったんだ。

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 小さなネオンの看板があることはあるが、灯りが弱々しい。人がやっと擦れ違えるほどの通りをしばし歩かないと見つけられない店。夜半にはまだ時間があるけど、閉店間際に入るのは嫌だった。だから、早めに辿り着けてラッキーだった。

 場所からして、誰が見ても常連しか相手にしてないような店のように思えるだろう。
 浩美がつい先日の夜に寄ったという小さなジャズ・バーだ。
 別にジャズの生演奏が聴けるわけではない。店が女性好みの洒落た作りってわけでもない。男が一人旅の町でふらっと入りたくなるような雰囲気。せいぜい、そんなところか。

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