酔 漢 賦(花名篇)
お前の顔、葵じゃないか、もう、降参か。
てやんでえ、てめえが辛夷(こぶし)を振り上げるからじゃねえ。そういうてめえこそ、青っ花、垂らしやがって。そんなことくらいで、駒草(こまくさ)な顔、すんじゃねえよ。
汚ねえな、そっちこそ、手鞠花(てまりばな)しやがるじゃねえか。
おーおー、意地張って、今に赤紫蘇を掻くなよ。アキレア顔しやがって。おめえの顔が薊(あざみ)なったって、誰も何とも思やしねえよ。橙(だいだい)、頑丈な顔なんだから、明日葉(あしたば)直るってことよ。
何を、おめえこそ、油菊(あぶらぎく)った顔しやがって、甘茶(あまちゃ)ものばっかり喰ってるからだ、油桐(あぶらぎり)しやがれってんだ。
おおお、おめえ、泡吹(あわぶき)してんじゃねえか、もう、菜種切れか。
南天(なんてん)言いやがった。オレが蓼(たで)切れなわけ、ねえだろうが。おらあ、これでも、世間じゃ、種漬け花で通ってんだ。
けっ、あちこちの女郎花(おみなえし)に梯姑(でいこ)付けやがって。
しかたねえさ、みんな、オレを茉莉花(まつりか)よ。だから、待宵草(まつよいぐさ)や松虫草(まつむしそう)じゃ、可哀想だから馬酔木(あしび)てやってんじゃねえか。
木通(あけび)た奴だ、お前は。そういや、おめえ、継粉菜(ままこな)ってな。満作(まんさく)尽きたってな。
おめえ、何処でそれを。
蝋梅(ろうばい)すんじゃねえ。なんなら、オレが、継子の尻拭いしてやろうじゃねえか。烏薬(うやく)むやにしてやろうか。大丈夫、沈丁花(じんちょうげ)やってやるからよ。
ところで、お前は、う棕櫚(しゅろ)専門だってな。
菊(きく)! 胡瓜(きゅうり)、桔梗(ききょう)なこと、言うんじゃねえ。
どうだ、羊蹄(ぎしぎし)して、いいか? あの子の雛菊(ひなぎく)が、菖蒲(あやめ)て、今じゃ木槿(むくげ)ってえじゃねえか。
もう、よそう、桐(きり)がねえ。
そうか、この話は、金糸梅(きんしばい)。
(04/05/03 記)
| 固定リンク
「駄文・駄洒落・雑記」カテゴリの記事
- 昼行燈4(2023.09.21)
- 虎が犬たちを(2023.09.20)
- 昼行燈3(2023.09.19)
- なにがゆえの悪夢だった?(2023.02.09)
- 観る前に飛ぶんだ(2022.10.25)
「酔 漢 賦」カテゴリの記事
- 酔 漢 賦(河川名篇)(2007.02.27)
- 酔 漢 賦(花名篇)(2007.02.27)
- 酔 漢 賦(鳥名篇)(2007.02.20)
- 酔 漢 賦(県名篇)(2007.02.11)
- 酔 漢 賦(迷言篇)(2007.02.09)
コメント