行く先は何処
「○×」まで。お客はただそれだけ言う。「横浜の、ほら、▲◆で有名な」
小生、分からない。聞いたことがあるような、ないような。大体、話がよく聞き取れない。随分とお酒が入っていらっしゃるようで、ご機嫌な様子だ。
「えっと、横浜のどの辺りでしょう」
「なんだ、知らないのか。お宅、何年、運転手、やってんの。大丈夫、オレが道、知ってるから走らせろ」
走らせろと言われても、一体、どの方向に走ればいいのか検討が付かない。小生、必死でお客さんが言われた地名を脳裏に響かせて、横浜のどの辺りかの見当を付けようとする。皆目、見当が付かないのだけど、やるしかない。
「あの、高速を使いますか。」
「そうだよ。だから、○×だってば。」
小生、そろりそろりと走らせ始める。とはいっても、いきなり右折か左折の選択を迫られるのだが、小生は左折を選んだ。
薄ボンヤリだが、あの辺りかもしれないという気がしてくる。随分と頼りない話だが、お客さんがそのうち怒り出すような気がする。トラブルだけは御免だ。
車を走らせて、交差点での信号待ちに賭ける。僅かな信号待ちの時間の間に地図を見て、お客さんが言った地名を探す。きっと、高速道路のどこかのインターの名前に決まっている。
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