今日も走るぞ! ブヤ篇
[「今日も走るぞ!」 本編はタクシードライバーの書くに書けない日誌です。でも、虚構ですので真に受けてはいけません。信じたら魔に受けて笑われます!
キャスト: [運]=中堅どころの運転手(弥一ではありません)
[客]=お客さん(多分、あなたではないでしょう)。
[?]=冷やかしの客紛い
走行場所: 東京23区がメイン(+武蔵野市+三鷹市+郊外)
場 所: 主にタクシーの車内、たまに路上かも
時 間: 日中だったり夜間だったり未明だったり
時 代: 平成十年代以降(特に規制緩和以後)
注意事項:
1.()内は胸中の思い、あるいは独り言です。
相手(不特定多数を含めて)が居ての発言ではありません。
言葉遣いが荒かったり、雑だったりしても、大目に見るように。
2.「」内の言葉は科白で、誰彼に向かっての発言です。
(困るのは意が通じないこともしばしばだということ:独り言)
3.重ねて断っておきますが、実際にあった話ではありません。
4.時折聞える雑音はラジオや無線、街頭のざわめきなどです。
(たまに耳鳴りがしましたら、病院に行ったほうがいいかも)
5.斜字体の部分は、背景などの説明や雑音です。]
6・言うまでもなく筆者である弥一は、タクシー業界を代表するものではなく、よって、文中に書いてある内容についても、業界の正式な見解を代弁するものでもない。それどころか、標準的な見解ですらない可能性が大である。あくまで個人的な見解(時に偏見とも呼ばれることがあるが、それは、ちと、あんまりであろう)に止まる。
『今日も走るぞ! ブヤ篇』
[運](ああ、今日も暇だ。客が見つかんねえや。ラジオでも聴くか。あっちゃー、リミックスがどうとか言ってるよー。おじさんにゃ、そんな音楽、分かんねえっちゅーの。ブチッ! ざま見ろ、切ってやったい。シーン…。ああ、沈黙に耐えられない。やっぱ、何か聴いとくか。ラジオは運ちゃんの車内での唯一の友だっちゅうの。ととと、後ろから空車のタクシーが猛スピードで来やがった。クソ! 追い越されてなるものか。そうだ、前の車で追い越されないようブロックしちゃおう。ととと、あそこにこっちを向いているのは…、あれは客だな。うん、あのそわそわ感は、間違いない。よしよし、後ろから来たタクシーに奪われなくってよかったって)
「はい、どうぞ!」
[客](無言)
[運](こいつ、喋れないのか?)
「どちらまで」
[客]「……」(何か呟いたらしい)
[運](ああ、ボソッと喋るから、何、言ってんだか、分かんねーや)
「すみません。申し訳ないですけど、もう一度、お願いします。」
[客]「おめ、新米か。地理、分からんのか。」
[運]「いえ、すみません。話が遠かったもので。もう一度、お願いできませんか。」
[客]「…ぶやだよ!」
[運](あああ、渋谷(しぶや)か日比谷(ひびや)か、聞き取れない。ブヤ…、まさか蚋(ぶよ)じゃあるまいし、ぶやって、言ったようだから、渋谷かな)
「渋谷ですね。」
[客](無言)
[運](何も言わないってことは、渋谷で正解だってことだろうな。そうだ、念を入れておこう。でも、渋谷ですかとは聞き返せないぞ)
「渋谷は駅で宜しいですか?」
[客]「…うん。」
[運](よし、よし、やっと、返事したぞ。間違いない。お客さん、短気そう。怒られないよう、そうっと、丁寧に、恙無く、運転しないとな…。おや、煙草、吸い出しやがったぞ。断りもなく。ま、禁煙車じゃないから、我慢するしかないか。窓くらい開けろよな。と思ったら、開けたか。車で煙草、吸うの慣れてそう。と思ったら、吸殻、窓から捨てやがった。ああ、躾とか人間性がばれるね。お、あの店の先に一方通行の道がある。あそこを通るべきかどうか。お客によっては、多少、渋滞してても大通りを走るほうが好きだっていもいるし、逆に裏道が好きだって人もいる。さて、この客はどうなんだろう。顔つきとか表情じゃ、読めない。まだ、ベテランとはいえないなー。ここは勘でいくしかないな。いや、それはまずい。これまでの経験からして、好みの道じゃないと、あとで文句を言うに決まってるんだ、こういうタイプの客は。)
「あの、こちらの方を通りますが、宜しいでしょうか?」
[客]「…うん。」
[運](よし、よし。やっと、客のタイプが読めてきた。下手(したで)に出ておけば、細かいことは言わない人だ。短気そうだけど、自分が熱中していることが邪魔さえされなければ、あとは良しなにってタイプだね。うん、うん。とにかくスムーズに、安全に、的確に)
「はい、着きました。ここで宜しいでしょうか。」(とにかく、丁寧が第一だ。感情の地雷原を踏まないよう、細心の注意を払って勘定も済ませないと)
[客]「…運ちゃんよ、大きいのしかないけど、いいか」
[運](あんれ、ま。今度は、お客さんのほうが、丁寧な言葉遣いだよ。最初の勢いはどうしたんだ。そっか、短気そうだけど、結構、気が小さくて不器用な人だね。だから、無愛想に振る舞っちゃうんだね。いんだよ、おカネさえ、払ってくれたら、お客さんなんだからね)
「はい! 大丈夫です。」(慌てず、騒がず、勘定を間違えないよう、ちゃんと計算して、と)
「はい、お釣り、○×▲円です。レシートはどう致しましょうか。」
会社ではレシート(領収書)は必ず毎回、発行しろと言う。でも、客の半数は要らないという。で、レシートを渡し返すか捨て去る。仕方ないので、節税対策に使う…じゃないくって、不要なレシートは捨てるしかない。紙が勿体無い。だから、現実的には、その都度、お客さんに必要かどうか窺うしかないのである。
[客]「いらね」
[運](おお、ちゃんと会話できるじゃん。この人、顔見知りするタイプなんだね。優しく接したら、結構、お喋りが弾むかもね)
バタム! と、ドアが閉まった。
[運](あーあ、これでやっと、五人目のお客さんだ。つらいなー。今日の売り上げも期待できないなー。でも、頑張らなくっちゃ。家じゃ、女房が鬼の形相で待ってるし。いや、鬼じゃない。この頃、やけににこやかに迎える。何かあったのか…。今更、浮気じゃあるまいし。と、そんなこと考えてる場合じゃない。次のお客さん、探さなくっちゃ。でも、オレ、渋谷は苦手なんだよね。松涛とか円山町とか、裏道が複雑で、未だに理解できないでいる)
という、わけで、車は、ブブーと渋谷の町を走り去ったのであった。
[もしかしたら、続くかも]
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コメント
すっごーいおもしろーい((゜m゜;)
続けて続けて・・是非続けて・・
こういうの大好き・・
次回が((o(▽ ̄*)oワクワクo(* ̄▽)o))
投稿 tanu | 2005/02/20 19:45
tanuさん、嬉しいよ。
あっし、頑張るけんね。あっしも書くのが楽しみだ!
投稿 弥一 | 2005/02/21 02:40