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2005/02/27

今日も走るぞ! ここは何処?篇

[読まれるに際しては、予め、別ページの注意書き をどうぞ、よーく、お読みください!]


[運](あああ、今日は不調だ、客が見つかんねえや。今日は、じゃねえな、今日も、だ。このままじゃ、一時間も空気、運んじゃう、辛い! 仕方ねえや。何処かの駅に付けるか。何処がいいか。近場だと…、あ、○▲駅がいい。あそこはターミナル駅じゃないから、そんなに空車のタクシーの列も長くないし…。)

 ターミナル駅とは、複数の(鉄道)路線の交差している駅で、新宿駅、東京駅、品川駅などを指す。

[運](長くないと思ってたのに、付け待ちの列がやたらと長い! 不況なんだなー。みんな、考えることは同じか。それに、集配のトラックとか、送り迎えの自動車などが多くて、止めるのも容易じゃねえな。クソ!)

[運](さっき、お客さんを降ろしてから、一時間以上も経過しちゃったよ。日報にブランクが。休憩もしてないのに、一時間半も乗せていない時間帯があるなんて、情ねー。さて、このお客さんは、何処かな。サラリーマン風。近場は間違いない。いいんだ。とにかく、まずは、乗って貰って、仕事のリズムを変えることだ。自分じゃ行かないような場所にお客さんに連れてってもらえるし…。)
[運]「はい、どうぞ!」
[客]「運転手さん、近場で悪いけど、◆○ビルまで頼むよ。」
[運]「はい、◆○ビルですね。」(いいのよ、いいの。近場だって、遠慮しないで乗ってね。空気よりはずっとましなんだから。大体、ターミナル駅じゃない駅だと、客さんってのは、大概が近場なんだから、こっちもそのつもりなんだけどなー。ま、お客さんは、そんな事情、知らないから、人のいい客、普段、タクシーに乗り慣れない客だと遠慮がちになっちゃうんだよねー。)

 タクシーは走り出す。目的地、目指して…。が、あまりに長く、お客さんを乗せなかったせいか、それとも、何か考え事をしていたせいか、いや、もしかしたら、さっき、目の前を通り過ぎた女性が素敵で見惚れてしまったせいか、いずれにしろ、つい油断したせいで、とんでもない事態が発生した!

[運](やっと、お客さんだ。とりあえず、目的地まで走らせて、無事、お届けして、走行のリズムを変えて、流しでお客さんを拾えるようになったら、いいなー。……、はて?)

[運](あ、まずい。目的地が何処か、分からなくなった。町の名前だったっけ、ビルの名前だったっけ、それとも、交差点の名称? ああああ、まずい。地名が吹っ飛んじゃったぞ。)

 運転主君、パニックである。コメントしようにも、目的地を忘失した原因が不明。まして、何処へ走らせるべきか、告げる術(すべ)もない。自業自得だ、頑張るしかないね。さて、奴、どのように苦境を打開するか。それとも、打開できずに瓦解するかな。

[運](ダメだ。完全に消え去ってる。なけなしの脳味噌を掻き削っても、何も出てきやしねえ。お客さんに、もう一度、聞くか。あの、わたし、何処へ行けばいいんでしょう。まさか、そんなこと、言えるはずがない。あああ、何処だ? オレは何処へ行けばいいんだ?)
[客]「(無言)」
[運](お客さんの顔を見て…も、分かるはずないし。えっと、車はこっちを向いている。この方向だと、あの交差点とあれと、あれと…。ビルだと、あれかこれか、それか、どれか。分かるわけねえや。とにかく、走り出した瞬間は、間違いねえはずだ。ああ、一体、何処へ行けばいい。あと少し走ったら、交差点だ。信号がある。頼む、信号機よ、赤になってくれ。赤で信号待ちしている間に、きっと、思い出すから…。おお、天の恵みか、日頃の行いがいいせいか、黄色だ、赤に変ったぞ!)

 お客さんは、相変わらず、無言のままである。そりゃそうだ。一人の方だし、携帯電話を使っていないし、一人でブツブツ喋ると、反って怖い!

[運](こうなりゃ、お客さんの口から聞き出すしかない。ええと、どうやって口を割らせるか。そうだ、天気だ。きっかけはー、ライブドアじゃない、フジテレビってんだ。ちと、古いか。さて、この客は、話に乗るか。それとも、逸るか、だ。)
[運]「今日は、いい天気ですね。夕べの雨が嘘みたいですね。」
[客]「ああ、ゆんべは、凄い雨だったね。」
[運](ゆんべだって、あんた、何処の在所じゃい、なんて、そんな茶々を入れてる場合じゃない。おーおー、このお客さん、乗ってくるよ。いいね。オレッチのタクシーに乗って、話にも乗る。ダブルでラッキーだねって、そんな場合じゃないっちゅーの。)
[客]「ゆんべはさ、オレさ、仕事でさ、外回りで大変だったよ。で、あの雨だろう。パンツまでずぶ濡れさ。」
[運]「ほー、それは大変でしたね。」と相槌を打つ。
(あああ、信号が点滅している。青になっちゃう。直進か、左折か。それとも、挫折か!)
[客]「でさ、あの雨、パッと上がったじゃない。オレ、営業先のHビルから出るとき、うっかり、傘、置き忘れちゃってね。だってさ、すっかり上がってんだもん。誕生日に女房に貰った、高級な奴でさ。忘れました、じゃ、済まないんだよ。これから取りに行かなくっちゃいけないんだ。」
[運](傘、取りに行く…? Hビル…。あ、Hビルだ、思い出した! 右折だ、右折。ウインカーを出さないと。信号が青になっちゃった。)

 運転主君、慌ててウインカーを出すと同時に右折開始。急な進路変更で、後ろの車が警笛を鳴らし、アクセルを吹かしながら勢いよく脇を走り抜けていく。

[運]「そうでしたよね。春の雨は気紛れですものね。なーるほど、奥さんからのプレゼントですか。そりゃ、大切にしないと。」(ああ、心臓がバクバクしている。どうなることかと思ったよ。お喋りの、いいお客さんでよかった…。)と、いい加減な相槌。語調などは平静を装っているけれど、内心は、安堵の胸を撫で下ろしている。
[客]「そうなんだよ。今朝、女房の奴、機嫌が悪そうだったから、傘、置き忘れたの、気付かれてたのかなって。とにかく、早めに取り返しておかないと、先々が心配でさ。」
[運](傘を取り戻しにHビルに行くのか! ああ、こんな客もいるんだな。ありがたいというべきか、分からんけど。よしよし、ビルの前は、今日はタクシーを止めるスペースがあるぞ。滑らかに止めてっと。)
「ここで宜しいですか。」と、声が弾んでいる。
[客]「ああ、いいよ。ああ、運転手さん、万札だけど、いいかな。」
[運]「大丈夫ですよ。」(この際だ、万札だろうと、馬券だろうと、偽造の金券だろうろ、なんでもいいさ。無事が何より。やっと、心臓が落ち着いてきたよ。)
[運]「660円ですので、御釣りは*#円です。領収書、どうぞ。」
[客]「領収書はいいよ。それより、悪いねー、近場なのに、万札で。」
[運]「いいえ、とんでもないです。ありがとうございました。」

 バタム! とドアの閉まる音。車内が静かになった途端、運転手の心臓の音が聞えてくるようでもある。心臓に毛が生えているわけじゃなし、まだ、実は鼓動が早い。こんなことが何回もあったりしたら、早死には間違いない。まあ、とりあえずは、一件落着である。終わりよければ全て善し、と、この場合、評していいものか、判断が付きかねる。運転主君、くれぐれも、同じ失敗を繰り返さないように。目的地は、惰性で復唱するだけじゃ、ダメなのよ。日頃、やっているように、脳裏に走行すべき地理の情景を明確に描かないとね。
 やがて、運転主君、気まずい失敗を拭い去るようにアクセルを強めに吹かして、走り出すのだった。さあ、気持ちを切り替えて、次ぎのお客さんを早く、探そうね。

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2005/02/20

今日も走るぞ! ブヤ篇

[「今日も走るぞ!」 本編はタクシードライバーの書くに書けない日誌です。でも、虚構ですので真に受けてはいけません。信じたら魔に受けて笑われます!

 キャスト:  [運]=中堅どころの運転手(弥一ではありません)
        [客]=お客さん(多分、あなたではないでしょう)。
        [?]=冷やかしの客紛い
 走行場所: 東京23区がメイン(+武蔵野市+三鷹市+郊外)
 場 所:   主にタクシーの車内、たまに路上かも
 時 間:   日中だったり夜間だったり未明だったり
 時 代:   平成十年代以降(特に規制緩和以後)
 注意事項:
  1.()内は胸中の思い、あるいは独り言です。
    相手(不特定多数を含めて)が居ての発言ではありません。
    言葉遣いが荒かったり、雑だったりしても、大目に見るように。
  2.「」内の言葉は科白で、誰彼に向かっての発言です。
   (困るのは意が通じないこともしばしばだということ:独り言)
  3.重ねて断っておきますが、実際にあった話ではありません。
  4.時折聞える雑音はラジオや無線、街頭のざわめきなどです。
   (たまに耳鳴りがしましたら、病院に行ったほうがいいかも)
  5.斜字体の部分は、背景などの説明や雑音です。]
  6・言うまでもなく筆者である弥一は、タクシー業界を代表するものではなく、よって、文中に書いてある内容についても、業界の正式な見解を代弁するものでもない。それどころか、標準的な見解ですらない可能性が大である。あくまで個人的な見解(時に偏見とも呼ばれることがあるが、それは、ちと、あんまりであろう)に止まる。


『今日も走るぞ! ブヤ篇』

[運](ああ、今日も暇だ。客が見つかんねえや。ラジオでも聴くか。あっちゃー、リミックスがどうとか言ってるよー。おじさんにゃ、そんな音楽、分かんねえっちゅーの。ブチッ! ざま見ろ、切ってやったい。シーン…。ああ、沈黙に耐えられない。やっぱ、何か聴いとくか。ラジオは運ちゃんの車内での唯一の友だっちゅうの。ととと、後ろから空車のタクシーが猛スピードで来やがった。クソ! 追い越されてなるものか。そうだ、前の車で追い越されないようブロックしちゃおう。ととと、あそこにこっちを向いているのは…、あれは客だな。うん、あのそわそわ感は、間違いない。よしよし、後ろから来たタクシーに奪われなくってよかったって)
   「はい、どうぞ!」
[客](無言)
[運](こいつ、喋れないのか?)
   「どちらまで」
[客]「……」(何か呟いたらしい
[運](ああ、ボソッと喋るから、何、言ってんだか、分かんねーや)
   「すみません。申し訳ないですけど、もう一度、お願いします。」
[客]「おめ、新米か。地理、分からんのか。」
[運]「いえ、すみません。話が遠かったもので。もう一度、お願いできませんか。」
[客]「…ぶやだよ!」
[運](あああ、渋谷(しぶや)か日比谷(ひびや)か、聞き取れない。ブヤ…、まさか蚋(ぶよ)じゃあるまいし、ぶやって、言ったようだから、渋谷かな)
   「渋谷ですね。」
[客](無言)
[運](何も言わないってことは、渋谷で正解だってことだろうな。そうだ、念を入れておこう。でも、渋谷ですかとは聞き返せないぞ)
   「渋谷は駅で宜しいですか?」
[客]「…うん。」
[運](よし、よし、やっと、返事したぞ。間違いない。お客さん、短気そう。怒られないよう、そうっと、丁寧に、恙無く、運転しないとな…。おや、煙草、吸い出しやがったぞ。断りもなく。ま、禁煙車じゃないから、我慢するしかないか。窓くらい開けろよな。と思ったら、開けたか。車で煙草、吸うの慣れてそう。と思ったら、吸殻、窓から捨てやがった。ああ、躾とか人間性がばれるね。お、あの店の先に一方通行の道がある。あそこを通るべきかどうか。お客によっては、多少、渋滞してても大通りを走るほうが好きだっていもいるし、逆に裏道が好きだって人もいる。さて、この客はどうなんだろう。顔つきとか表情じゃ、読めない。まだ、ベテランとはいえないなー。ここは勘でいくしかないな。いや、それはまずい。これまでの経験からして、好みの道じゃないと、あとで文句を言うに決まってるんだ、こういうタイプの客は。)
   「あの、こちらの方を通りますが、宜しいでしょうか?」
[客]「…うん。」
[運](よし、よし。やっと、客のタイプが読めてきた。下手(したで)に出ておけば、細かいことは言わない人だ。短気そうだけど、自分が熱中していることが邪魔さえされなければ、あとは良しなにってタイプだね。うん、うん。とにかくスムーズに、安全に、的確に)
   「はい、着きました。ここで宜しいでしょうか。」(とにかく、丁寧が第一だ。感情の地雷原を踏まないよう、細心の注意を払って勘定も済ませないと)
[客]「…運ちゃんよ、大きいのしかないけど、いいか」
[運](あんれ、ま。今度は、お客さんのほうが、丁寧な言葉遣いだよ。最初の勢いはどうしたんだ。そっか、短気そうだけど、結構、気が小さくて不器用な人だね。だから、無愛想に振る舞っちゃうんだね。いんだよ、おカネさえ、払ってくれたら、お客さんなんだからね)
   「はい! 大丈夫です。」(慌てず、騒がず、勘定を間違えないよう、ちゃんと計算して、と)
   「はい、お釣り、○×▲円です。レシートはどう致しましょうか。」

 会社ではレシート(領収書)は必ず毎回、発行しろと言う。でも、客の半数は要らないという。で、レシートを渡し返すか捨て去る。仕方ないので、節税対策に使う…じゃないくって、不要なレシートは捨てるしかない。紙が勿体無い。だから、現実的には、その都度、お客さんに必要かどうか窺うしかないのである。

[客]「いらね」
[運](おお、ちゃんと会話できるじゃん。この人、顔見知りするタイプなんだね。優しく接したら、結構、お喋りが弾むかもね)
 バタム! と、ドアが閉まった。
[運](あーあ、これでやっと、五人目のお客さんだ。つらいなー。今日の売り上げも期待できないなー。でも、頑張らなくっちゃ。家じゃ、女房が鬼の形相で待ってるし。いや、鬼じゃない。この頃、やけににこやかに迎える。何かあったのか…。今更、浮気じゃあるまいし。と、そんなこと考えてる場合じゃない。次のお客さん、探さなくっちゃ。でも、オレ、渋谷は苦手なんだよね。松涛とか円山町とか、裏道が複雑で、未だに理解できないでいる)
 という、わけで、車は、ブブーと渋谷の町を走り去ったのであった。


[もしかしたら、続くかも]

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2005/02/14

瓢箪の夢(蛇足)

 そもそも、瓢箪など思い浮かぶから、拙かったのじゃ。
 ああ、もう一度、寝よう。
 二度と目が覚めないことを祈るばかりじゃ。

 そんな祈りが通じたのか、ワシは二度とこの世の日の目を見ることがなくなった。喜んでいいのか悲しむべきなのか、ワシ自身にも分からん。
 日の目を見ないとは、ワシとしては目を開けているつもりなのじゃが、なぜか世の中が真っ暗なのである。
 真っ暗といったら、ワシが経験したことのない暗さで、ワシの根性よりも暗いほど薄気味悪い暗がりなのである。
 もしかしたらワシは目覚めてはおらんだけなのかもしれん。なので思いっきり目を閉じて、そうして恐る恐る瞼なんどを開いてみたのだが、何度繰り返しても同じことじゃ。真っ暗闇といったら漆黒の闇、射干玉の闇、烏の濡れ場じゃない、濡れ羽色の闇磨墨の闇、磨かれざる黒曜石の闇、頭の中がパニックになるほどの闇、脳溢血で倒れそうな真っ赤な闇…。
 とにかくワシには筆舌に尽くしがたい闇の中なのじゃ。
 思わず呟いた願いが叶ってしまった。叶ったはいいが、さて、一体、何処にいるものやら、さっぱり分からん。体が動くような感覚はある。何しろ、瞼が動くほどだから、体は動くのは間違いないのじゃと思う。ワシのドロンとした脳味噌もとにかく微動くらいはしているようじゃし。心臓もバクバクドキドキ動いている。しまいにはドックンドックンと高鳴り、いつぞやのように眩暈が起きそうなほどに早鐘の鼓動となりそうじゃ。でも、動いていることには間違いない。
 不思議なのは肺だ。肺も動いている。息をしているのじゃから、誰にも文句の付けようがあるまいて。
 困るのは、胃や腸までが生き生きと活動しているらしいことじゃ。お腹の虫が、三時を告げるハトのようにグーグーキューキューと鳴いておる。ふくよかなお腹がへっこんで背中とくっ付きそうなくらいじゃ。
 ワシは上体を起こしてみようと、腕を突っ張ってみた。すると、真っ赤な衝撃が脳天に生じた。火花が吹いた。
 何が起こったのか。
 分からん。ただ、頭蓋が天井らしいものにぶつかったようじゃった。こんなに低い天井などあるものか。駅前のカプセルホテルじゃあるまいし。
 ああ、頭がゴンゴンしている。ジンジンする。ぶつかったショックが体全体に波となって伝わっている。腕の先、足の先まで伝わって、そうして戻ってきて、揺り返しの衝撃波がまた脳味噌の弱い部分を直撃する。
 だが、そんな痛みより、もっと衝撃的な事実にワシは驚愕しておった。
 腕を突っ張った際に、何か妙な感覚を覚えたのだ。指先の感覚がまるでなかったのだ。何かのぺっとしたような、平べったいものを押し潰したような、ワシが今まで感じたことのない奇妙な感触が闇の中にのっぺりと広がったようなのじゃ。
 それはガマガエルかヒキガエルを押し潰したような、気色悪い、胸糞悪くなるような、二度と味わいたくないようなブニュッととした感触だった。
 いや、ワシは記憶する限り、ガマガエルなど、踏み潰したことなどない。ただ、そのように思えるというだけのことじゃ。
 が、もっと、不思議なのは、指先の感触がない代わりに、それこそ、魚の鰭(ひれ)のような、そう、フィンのような平板だが、床にぴったり吸着するような、ある種、心地いいとさえ言えそうな初めての快感もあったことじゃ。
 平板…。いや、天井もそうじゃったが、何処か丸みを帯びていないこともなかったぞ。
 ワシは、その手先というべきか鰭先というべきか分からない体の突端部分で天井と言わず、床といわず、両側の壁といわず、障りまくった。どこもかしも、ぬめぬめにょろにょろぺたぺたしているではないか!
 そのうちに、ふと、とんでもない直感が脳裏を駆け巡った。
 もしかしたら…。
 もしかしたら、ワシは、瓢箪の中に封じ込められているのじゃないか。ワシは、瓢箪の中のワシになってしまった。しかもじゃ、ワシの体は、ワシの体であって、ワシではない。
 勇気を以って言おう。そう、ワシは、鯰になってしまっている。腕や手先の感触ばかりを言っていたけれど、実のところ脚のほうも妙だったのじゃ。
 ガキの頃、悪戯でお袋のスカートなどを穿いて、鏡の前でシナを作ってみたことがあった。が、いきなりお袋が帰ってきたもので、スカートを脱ぐ暇もなくて、押入れの蒲団の山の中に頭から突っ込んでいって、とにかく戸を閉めて、蒲団の中で悶々していた。お袋はなかなか去らない。こういう時に限って、女というものは、長く鏡の前などで徒な時を過ごすものだと、つくづくと嘆いたものじゃったが、そのうち、窮屈な思いに耐えられなくなった。蒲団がワシの口を塞いでいる。手の自由が利かないので、顔を幾分か左右に振るのが精々で、息苦しさは募るばかり。
 それどころか、スカートの中の脚が毛色悪い。剥き出しの太股や脛(すね)が擦れ合って、えも言えぬ感触が体をムズムズさせ始めている。スカートがまた、タイトだったし、蒲団に押されているから、両足の自由が利くどころか、スカートと一体になってしまって、ワシは蒲団という海を押し潰されそうになりながら泳ぐ魚になった気分だった。なんたって、足を動かそうとすると、スカートがぴっちりと締め付けるものだから、魚が胴体をくねらせ、尾っぽを振り振りするような、そんな無様な状況じゃったのじゃ。
 ああ、ワシはもしかしたら、やはり、瓢箪の中の鯰になってしまったのだ。
 真っ暗闇じゃけれど、息ができるということが、せめてもの救いだ。息苦しくはあるが、次第に酸欠になるという予感もないのだし。
 ワシはいつだったか、悪魔が怖くてならなくなったことがあった。悪魔に捕まえられるという強迫観念に囚われて、二進も三進もいかないことがあった。
 どうやったら悪魔を退散させることができるか、真剣に考えたことがあった。懸命じゃった。魔除けや厄除けのためなら何でもやったものじゃった。その挙げ句、ワシが至った結論というのは、そうじゃ、自分が悪魔になればいいんじゃ! というものじゃった。
 瓢箪というのは、魔除け信仰の象徴と聞いたことがあった。そうか、いつぞやのワシの願いが聞き届けられたというわけか。願いは叶う。願いつづければ、どんな願いも夢も叶う。ワシの夢とは、瓢箪となることだったのか。
 いや、違う。ワシは今、瓢箪の中にいる鯰なのじゃ。ワシは、瓢箪なら許せるが、鯰は嫌じゃ。見る分には滑稽というかユーモラスでいいし、地震予知のために役に立つかもしれないが、自分が鯰になるなんて、真っ平御免だ。
 そうだ、段々、思い出してきた。ワシの願いは瓢箪のような存在になることだった。
 ワシの記憶に間違いがなければ、瓢箪は、種がたっぷりの植物なのじゃった。羨ましいほどの艶福家なのじゃ。ワシが瓢箪になれば、種が多いし、多産だし、子孫繁栄は約束されたも同然じゃ。
 そうじゃ、駄洒落に凝った頃は、瓢箪が六つで六瓢、つまり「むびょう」と洒落て、無病息災のシンボルでもあった。文字通りのチンボルなのじゃった。
 しかもじゃ、瓢箪はウリ科の植物で蔓がウネウネしておる。何処かセクシーでもあれば、何にでも絡みつく、そんな根性をも象徴しえる。
 けれど、ワシは、瓢箪そのものになりたかったのではなく、瓢箪のような魔除けの道具が欲しいだけだったのだ。
 ん? とすると、瓢箪の中にいるワシは、鯰の代わりどころか、鯰なのだとして、一体、何を象徴しておるのじゃろうか。
(続くかも)


October: 瓢箪に蔦」を参考にしたかったのですが、小生には使い切れませんでした。

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2005/02/13

瓢箪の夢

 夢から覚めた。なぜか瓢箪が欲しくてならなくなった。
 瓢箪。一体、何処にあるのか。いや、その前に、瓢箪とは一体、植物なのか道具なのか食べ物なのか、それどころか本当は想像上の産物に過ぎないのか、それさえも分からない。
 でも、瓢箪という言葉は剽軽という言葉ほど、好きだ。なんだか軽いし、それでいて漢字が重々しいようでもある。重そうだけど軽いというべきか。
 ところで剽軽とは、「ひょうきん」と読むと知ったのはいつのことだったろう。オレ達ヒョウキン族に被れていた頃だったろうか。それとも、金属の研究に勤しんでいる最中、金属の仲間にヒョウ金属があったら、研究もさぞかし楽しかっただろうにと思っていた頃だったか。
 カミさんに瓢箪って何、どんなものって聞こうと思った。確か、カミさん、瓢箪水を使っているという話をしていたし。
 でも、ダメだ。教えてくれそうにない。大体、ワシは結婚などしとらんかった。
 それに、あれは瓢箪ではなく、ヘチマの話だった。隣りの奥さんが、寝物語に、最近、ヘチマに凝ってるの。ヘチマ水っていいのよ。肌にいいの。人間の体内にある水分にもっとも近い成分バランスを持っていて、瞬時に肌に吸収されて水分を補給し、肌の活性化を促進するの。浸透圧だったっけ。ま、いっか。肌荒れにもいいし、乾燥肌のわたしには最高。それに、へちまの導管を適当に細工して水を受けるだけでいいから、手間も少ない。一日にタップリ4リットルは溜まるわね。なんたって天然水ってのがいいわ。天然、ナチュラル、ウオーター、リーズナブル…、これだけ並んだら、鬼に金棒ね。あなたもどう? え? 要らない。男は乾燥肌の方が貫禄があっていいって? へえ、そんなものかしら。え? わたしだって、オレが濡らしてやるって。ばーかねー、あなただって年のせいで乾いてるのよ。唾液だって体液だって、あなた、砂漠の水道じゃない。あたしゃ、ヘチマ水で我慢してあげてんのよ。
 ああ、いい女だったのに。情を重ねすぎると、生意気になっていかん。
 くそ、瓢箪に戻ろう。
 瓢箪。ワシは水墨画か何かで見たのを脳裏に思い浮かべようと頑張った。が、なぜか鯰(なまず)が頭に浮かんだ。もう、ぬるぬるしていて掴み所がないほどに、鯰の野郎は、ワシの顔に体に背中にお尻に腰にと飛び跳ねやがるのだった。さんざんワシを弄び尽くしたあと、せいせいしたとばかりにワシの手を逃れ、足元の小川にどっぽんと飛び落ちた。そのまま水流に乗って目の前の池に滑り込みやがった。
 なんだ、あの野郎、池の中で、こちらを振り向いて、ベロを出して、バーカなんてやってやがる。あんたに弄ばれた子達は、こんな目にあってたのよー、なんて言って、目まで剥いて。
 くそ、ドイツもコイツもイタリアもワシをコバカにしやがって。
 思えばワシも、我が鯰であいつやこいつやあの子やその子をたっぷりと弄んでやったっけ。鯰、大活躍だった。みんなに感謝されていた。ワシもみんなも有頂天だった。
 今は夢だ。一期は夢よとと儚く潰え去った過去の栄光じゃ。ああ、瓢箪から困ったことになったものじゃ。
 ふと、思いついた。
 そうじゃ。瓢箪で鯰を捕まえればいいんだ。そうすれば、瓢箪の中に鯰が納まっているから、いつだって必要な時に取り出せる。顔だけとか、首までとか、腰までとか、背びれや胸鰭が見えるまでとか、相手の要求次第では、モノは相談で、場合によっては尾っぽまでみーんな見せびらかして、のた打ち回って、そうして収めるところに収めればいいんだ。ワシも鯰もあいつらも喜ぶこと請け合いじゃ。
 でも、問題は瓢箪でどうやって鯰を捉えるかじゃ。鯰だって連戦練磨の兵(つわもの)だて。そうは容易く捕まりはしまいて。それこそ鰻(うなぎ)のようなものだ。初めての時のあいつの腰みたいに、ニョロニョロツルツルヌルヌルウネウネクネクネコネコネしやがる。その上、髯まで生やして生意気ったら、ありゃせん。
 ワシは、脳味噌の中にこびり付いて残っている僅かな記憶をたどってみた。どこかで瓢箪と鯰の話を聞きかじったことがあったような気がしたのじゃ。
 そうじゃ、室町の頃、足利将軍が暇に飽かして近習の高僧どもにどうすれば瓢箪で鯰を捉えられるかという難題を吹っかけたのだった。
 おお、なんと今のワシは足利将軍の心境ではないか。それとも将軍の気侭な命令で奇異な禅の問答の場に引っ立てられた禅僧の心境か。
 ま、どっちでもいい。ワシも枯れてきたのだ。そろそろ達観してもいいのかもしれない。そう言えば、目覚めた瞬間に忘れ去った夢も、何処か雅(みやび)な趣きがあったようじゃぞ。
 ついでに、お尻の辺りから高貴な香りも漂っていたような…。
 瓢箪で鯰を捕まえる。掴まえられなくとも、とにかく瓢箪で鯰の野郎を押さえつけて、ギューという目に遭わせてやる。それこそ、小生意気な髯を引っこ抜いてやって、鯰を鰻に変えてしまうのだ。どうだ、お前は今じゃ、鰻じゃないか、悲しいだろう! なんて言葉で甚振ってやるんじゃ。
 ん? でも、鯰の野郎、何、言ってんで。オラはよ、初手から鰻になりたかったんだ、念願が叶ってありがとうって言いたいくらいだよ、なんて減らず口を叩くかもしれん。
 その場合に備えて、何か奴をピシャとさせるような、グーの音も出ないような決め科白(せりふ)を考えておかないといけないな。
 いや、でも、鯰の野郎だ。ワシがうまくやって瓢箪の中に奴を収めたって、ふふん、オラはよ、池の中で安眠できる寝床が欲しかったんだ。オラほどになると、岩の透き間とか土の寝床で寝そべるなんて、こっぱずかしくって、できるもんじゃねえ。瓢箪なんて、池の中にそんな高級な宿を持っている奴は、オラの他にはいないわさ。
 そんな負けず口を叩くかもしれない。
 これじゃ、瓢箪の中に鯰がいるのか、鯰が瓢箪をヤドカリの宿のように抱え込んでいるだけなのか、訳が分からない。胡蝶の夢のような、掴み所のない話だ。
 ああ、でも、一体、瓢箪って、植物なのか道具なのか、そもそも、この世にあるのかどうかも分からない。足利将軍や禅の画僧が取り沙汰するくらいだから、紛い物なのじゃったろうか。
 ああ、そうかもしれんのー。
 そもそも、瓢箪など思い浮かぶから、拙かったのじゃ。
 ああ、もう一度、寝よう。
 二度と目が覚めないことを祈るばかりじゃ。

 参考:「不思議な絵 ―如拙筆「瓢鮎図」―


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カレー賛歌(改編)

カレー賛歌(カレーは世界のエキスが詰まってる)


 カレーはシバ神の恵み
 インドの賜物
 カレーは世界のエキスが詰まってる
 胡椒もマサーラーも小麦もターメリックも
 さあ、グツグツ煮込むのさ
 みんな一つに溶け合うよ
   
 カレーは平和の象徴
 大地の賜物
 カレーは世界のエキスが詰まってる
 トマトもピーマンも唐辛子もジャガイモも
 さあ、グツグツ煮込むのさ
 みんな一つに溶け合うよ
 
 カレーは大海のエキス
 海神の賜物
 カレーは大洋のエキスが詰まってる
 ホタテもエビもスルメイカもアサリも
 さあ、グツグツ煮込むのさ
 みんな一つに溶け合うよ

 カレーは人類の願い
 知恵の賜物
 カレーは世界のエキスが詰まってる
 古代も現代も未来も将来も
 さあ、グツグツ煮込むのさ
 みんな一つに溶け合うよ

 カレーは日本の宝
 平和の賜物
 カレーは世界のエキスが詰まってる
 インドもアフリカもアジアもヨーロッパも
 さあ、グツグツ煮込むのさ
 みんな一つに溶け合うよ

[ 「雑炊と粥とカレーと」や「10円カレー」などを参照のこと ]

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2005/02/12

カレー賛歌

カレー賛歌(カレーは世界のエキスが詰まってる)

 カレーはシバ神の恵み
 インドの賜物
 カレーは世界のエキスが詰まってる
 胡椒もマサーラーも小麦もターメリックも
 さあ、グツグツ煮込むのさ
 みんな一つに溶け合うよ
   
 カレーは平和のエキス
 大地の賜物
 カレーは世界のエキスが詰まってる
 トマトもピーマンも唐辛子もジャガイモも
 さあ、グツグツ煮込むのさ
 みんな一つに溶け合うよ
 
 カレーは人類の願い
 知恵の賜物
 カレーは世界のエキスが詰まってる
 古代も現代も未来も将来も
 さあ、グツグツ煮込むのさ
 みんな一つに溶け合うよ

 カレーは日本の宝
 平和の賜物
 カレーは世界のエキスが詰まってる
 インドもアフリカもアジアもヨーロッパも
 さあ、グツグツ煮込むのさ
 みんな一つに溶け合うよ

[ 「雑炊と粥とカレーと」や「10円カレー」などを参照のこと ]

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2005/02/03

雪幻想

 降り頻る雪の道を歩いていた。
 振り返れば、あるのは足の跡だけ。それも、ほんの数歩ほども形が残っているかどうか。
みんな雪に降り込められはかなくなっていく。
 道などない。なだらかな白い起伏に細い筋がゆるやかに続いているように見える。
 その一本の影の筋を辿っているだけである。
 フードを深く被り、俯きになり、口を真一文字にし、背を屈めて歩いている。
  息が苦しい。胸が痛い。冷たい空気が肺を凍て付ける。
 歩く一歩一歩が雪にごぶっていく。サラサラの乾いた軽い雪。一息吐けば、飛び散りそうな淡い粉雪。なのに、雪は容赦なく僅かな透き間を見つけては入り込んでくる。
 何処から来て何処へ行くのか分からない。ただ歩いている。無闇に前へ前へと歩いている。ただあの人に会いたくて一人歩いている。怖くて怖くてならないのに、会いたくてならない。会わないといけない。
 このまま雪の世界に埋もれていくのかもしれない。もしかしたら、そう願っているのかもしれない。この道の先に誰が待っているという確かな証しがあるじゃなし。
 白い影に我が身さえもが染まっていく。掻き消されていく。
 朝、見た夢は幻だったのか。ただの誘惑の声に過ぎなかったのか。紺碧の海から浮かび上がってきたあの姿は、あの人そのものだった。氷の彫刻のように輪郭が鮮やかで、触れれば指が氷の刃に鋭く抉られそうなほど、あの人は厳然とそこに立っていた。
 会いたくてならなかった…。
 そう、呟いたのはオレだったか、それともあの人だったのか。
 オレに会いに来たんだろ。会うために現れたんだろ。そうでなきゃ、こんな雪深い里の一軒家に来るわけがない。
 雪は降り続いていた。誰一人いないはずの世界で、どうしてこんなにも津々と、倦むことなく降りつづけるのだろう。
 あの人の影は、固く閉ざされたはずの窓の外に消えていった。手招きするように、小さく手を振りながら、後ずさりしていき、やがて真っ白な砂丘に姿を埋めていった。
 胸を掻き毟られるような悲しみがあった。
 寝床から飛び起きた。
 枕元は濡れていた。間違いない。あの人の涙で濡れたのに違いないのだ。末期の喘ぎに溢れた涙に違いないのだ。
 追わなければいけない。今、追わないと、二度と逢えなくなる。
 消え行く姿を追い求めた。
 そうして、今、闇雲に歩いている。もう、方角など分からない。意識が朦朧としている。苦しいのか痛いのか悲しいのか、それとも痺れるような快感に陶然としているのか、分からなくなっている。
 あの日、どうして捨て去ったりなどしたのだろう。
 捨てた?! 違う。オレはただ、見えなかっただけなのだ。何一つ、見えなかった。愚かだった。あの人より夢を貪っていた。でも、それが罪だというのか。
 いつの間にか真っ白な世界だったはずが、真っ赤に燃え上がる灼熱の世界へと変貌を遂げていた。手足の指先どころか鼻の頭、耳朶、肩と凍て付いていて、神経が麻痺していたはずが、今はジンジンするほどに熱い。体中が耕運機か何かを長く運転しすぎたような痺れ具合だ。
 深紅の洪水。怒涛の波飛沫。吹き上がる熱湯。膨れ上がった風船が破裂して腸(はらわた)の全てが飛び散っていくかのようだ。
 しどけなく縒れ曲がる小腸がまるで長すぎる襟巻きのように、それとも温血動物に変身した蛇の身のようにオレの体に絡みつき巻きつき、やがて雁字搦めにしてしまった。
 喉さえも締め上げられている…。
 なのに、何処か温みに満ちた快感があった。
 全てが弛緩していた。弛みきって、オレの体が放恣に解けた帯のように赤い空間に与太っていた。
 帯は愛しいあの人に寄り添うごとくに艶かしくくねらせている。あの人がオレの腕の中にいる。あの人が寝床でオレと一緒に臥している。心地良さそうに寝息を立てている。
 オレはあの人の中に入ろうと思った。蛇になった。あの人が好きだといつか言っていた蛇になったのだ。
 にょろにょろとゆっくり白い起伏を舐め登り這い伝い滑り降り絡み擦り赤い闇の中のさらに紅い深淵に伝い下りていった。
 ああ、今だ。今こそ、全てが叶う。
 そしてオレは雪の寝床であの人と結ばれたのだった。永遠に。

 


 雪の道足跡だけが付いてくる
 見返れば来た道さえもはかなかり
 雪女郎怖くて怖くて会いたくて
 一人行くこの道の先雪の中
 深深と降り積もる雪誰も見ず
 雪道に消え行く影を追う我か
 消えた影夢見に出ては朝悲し
 雪女末期の枕濡らすのか
 いつの日か現れ出でて消える人
 雪に臥す恋しい人に添うごとく
 みちのくの雪の音にも騒ぐ胸 
(以上の句は、「雪女郎」よりのもの)

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