2020/03/29

町の匂いがしない

 昨夜来、朝方までの風雨。窓がびりびりし、木立がしなる。空き缶か何かが転がりぶつかるカン高い音。明け方、風が弱まって嵐が過ぎ去ったかのような静けさ。カーテンを開くと、外は既に明けている……いや、雪が降ってるぞ、富山。半信半疑だった天気予報、的中! 疑ったりして、ごめんなさい。

 富山県は、幸いなことに(?)未だに一人も新型コロナ感染者が確認されていない、全国でも稀有な県の一つ。昨日、内科医院へ。折角なので、今も富山、感染者、確認されていないんですよね、(更に云わでもがなの一言)検査、やってるんですかね? って。先生、ピシャリと「やってます!」と。

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2020/03/04

呆然自失の朝が今日も

 夜陰を通り過ぎ行く人影。折々の月光が沈みがちな影をこの世に引き戻すように浮かび上がらせる。しなだれた木立や崩れかけた板塀は懸命に光を遮っている。黒い塊は痕跡を残すことを恐れているのか。
 何を恐れることがあろう。抉るつもりで地を蹴っても素知らぬ顔のまま闇の中の異物を滑らせているだけ。傷一つ残すことはできやしないのだ。
 お前は光を嫌っているのか。何か疚しいことがあるのか。何処から逃げている。何処へ逃げていく。辿り着く宛てなどないくせに。
 凝り固まった蝋、それとも松脂。琥珀か。命の源が封じ込められているとでも? 嘗めたら水飴の味がするとでも?

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2019/01/18

ジェネシス 2

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 ボイラーの不調。修理するにも費用が掛かりそうだし、余儀なく今日は銭湯へ。広々とした風呂は、やはり、いいね!

 クジラを捕獲し食べるのは、なぜ残酷? では、牛や馬や豚や鹿や猪や鳥や魚は殺して食べても構わないのはなぜ? クジラは屠殺の現場が人目に付きやすく、牛や鳥や魚は人の見えないところで殺すから?
 クジラでなくても、動物を殺すのは、殺して食べるのは(定義や状況によるかもしれないけど)残酷だと思う。でも、人(に限らず動物は、あるいは生き物)は、動物(や植物)を殺して食べて生きてきた。人は地上のどの動物よりも残酷な動物なのは明らか。苦痛のない屠殺だったらいいのか。言い訳にしか思えない。しかも、殺して煮て焼いて出汁を取って。
 欧米人は、クジラを殺し過ぎたという原罪意識があるから、一層、ヒステリックに捕鯨を指弾するのか。
 環境保護運動に、クジラは一番シンボリックに仕立てやすいのか。
 日本の軽率としか思えない脱退は、総理の意向でいきなり政治問題化させた照射問題なども含め、現政権による、ナショナリズム意識高揚の一貫ではないのか。政権末期の焦り(あるいは企み)を感じる。

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2019/01/17

ジェネシス 1

 雨が雪に変わった夜に / 浅香 唯
 雨が雪に変わるわペイヴメント / 松田聖子
雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう / 山下達郎
 ほら雨が雪になりそう泣き言は喉で封じた砂時計 / クミコ
 冷たい雨が雪になり君の足跡かくれて消えて涙まじりの雪払い / ばんばひろふみ
 約束の時が過ぎてもあなたはこない雨が雪になるラストナイト・イン・ソウル / 山下恵介
 雨が雪に変わりひょうやら槍やら襲いかかってくるかもしれぬ世に / My Little Lover

 雨が雪に変わる瞬間は人の情を掻き立てるね。
 ということで、富山、先ほどから雨が霙に、そして雪に。
 

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2018/08/28

赤い闇

 どこをどう歩いて行っても、逃げるように遠ざかってみても、まして開き直ってその場にへたり込んでみても、ズルズルと後退していく。不意を打つように後ろへ飛び去ってみても、奴には同じなのだ。

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→ ヴォルス Wols (Alfred Otto Wolfgang Schulze) [title not known] c.1944–5 (画像は、「Wols (Alfred Otto Wolfgang Schulze) 1913-1951 Tate」より)

 高みの見物とばかり、そう、高い空を舞う鷹のように、獲物をじっくりと追っている。
 こっちがじたばたしても、地上を右往左往するウサギのように、滑稽に見えるだけなのだ。
 眼光は鋭い。焦点は定まっている。照準はピタリ合っている。
 ああ、それだったら、じらしたりせず、いっそのこと一思いにやっつけてくれればいいんだ。

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2017/02/16

井田川幻想

 街角に立ち尽くす女が居た。
 吹きっ晒しの風に深くかぶったフードが揺れる。
 時折、男が通り過ぎていく。

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 一瞬、顔を覗き込んでは、やれやれといった顔をして去っていく。
 遠慮のない奴は、フードを引っ張って、顔を晒そうとする。木枯らしより寒々とした男の目線に女は弱弱しげな眼差しで応えようとする。

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2016/09/13

踏切の出来事

 郊外の、のどかな田園地帯。電車が駆けていく。田圃が稲穂を実らせている。
 そこを抜けている静かなる小道。

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 こんな田舎の道すら、コンクリート舗装されて、地の色は見えない。
 吹き渡る爽やかな風。のびやかな稲穂の、尖がった、命に満ちた匂い。
 青い空と、うっすら浮かぶ山並みの影。

 こんなのどかな、死ぬほど退屈な日常の繰り返し以外に何もあろうとは思えない山里なのに、あの子は消えてしまった。
 あの日、鉄の塊に飛び込んで、身と心とが別れ別れになってしまった。
 着ているものは全て剥ぎ取られて、あの世へと旅立っちゃった。一人で。

 おさげが可愛い子だった。
 遠くから見守ってきた子だった。
 だけど、あの日、オレは、命の輝きに目が眩んでしまった。我慢できなくなったのだ。

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 たった一度の過ちが何もかもを奪ってしまった。
 助けることもできず、ただ見過ごすばかりで、あれよあれよと時の悪戯に立ち尽くしていた。

 ある闇夜、妙な胸騒ぎがして、オレは一人で灯篭のある踏切へ向かった。急ぎ足で、気が付けば駆け足で。
 間に合わなかった。そう、何もかもが手遅れだった。
 否、オレは気づいていたはずだ。サインはありあまるほど、あったじゃないか。恨めし気な、未練がましい、あの子の視線を痛いほどに感じてきた。

 目を背けるのもとっくに限界に近付いていた。
 だから、オレはあの日、手を下したんじゃないか。背中を押したのはお前だ。剥ぎ取ったのはお前だ。
 誰もしらなくとも、お前だけは知っている。

 漆黒の闇、濡れ羽色の髪ののたうつ闇、闇を深紅に染める悲しみ。
 そこに揺らめく蝋燭の焔。漂泊する魂の色。

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 臆病者は、夢の中でしか人を愛せない。
 幻の中でしか、人を直視できない。
 だからお前は、死ぬまで夢幻に溺れ続けるのだ。

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2016/06/27

永遠と一瞬の美しき目合ひ

 夜、仕事の合間などに空の星を眺めることがある。
 遠い星。遥かな高みの星。
 あの星に人類はいつか、到達するんだろうなって。

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← お絵かきチャンピオン 作「不詳」 (ホームページ:「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」参照)

 人類は、月に達し、火星にも近い将来、立つのだろう。
 既に地に降り立ったという月の世界すら、小生のようなぼんくらには遥かに遠い世界なのだ。

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2015/10/26

轆轤っ首の女

 茎ばかりがやたらと長い花が咲いていた。
 宵闇迫る中では、花の色は分からない。きっと、黄色だろうという感じはするのだけど。

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 花の名前は何なのか。オニタビラコ? それとも、オオキンケイギクなのか。
 いや、そんな珍しい花なんかじゃなくて、タンポポなのかもしれない。
 ただ、やたらと茎が長い。思いっきり引き伸ばされてしまったような。
 あるいは、迫りくる我らが時、長く深い夜の触手に手招きされているのかもしれない。

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2015/09/07

青い花の女

 どこにでもあるような、青い花。
 どこへ行っても目にする、青い花。

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 そう、お前がどう逃げ回っても、その青い花からだけは逃げられない。
 なぜなら、それはお前の脳裏に刻み込まれた花だからだ。

 お前の真っ青な脳髄には、青い花しか咲かない。
 影も青ければ、血の色も真っ青だ。
 お前には、情ってものがない。人に共感する情けがない。
 そう、お前は、本当に情けない奴なのだ。
 そんなお前には、青い花がお似合いなのさ。

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