地球で起きた進化は普遍的じゃない ! ?
← 松井孝典著『地球外生命を探る 生命は何処でどのように生まれたのか』(山と溪谷社) 「最先端の研究と知見をもとに、「地球外生命は存在するのか」「人類以外の知的生命体の可能性」「生命は何処でどのように生まれたのか」という、人類最大の謎への解答に挑戦」
自宅では、上掲書を読了後、イアン・スチュアート著の『世界を支えるすごい数学: CGから気候変動まで』(水谷 淳 訳 河出書房新社)を読み出した。並行してユゴー作の『ノートル=ダム・ド・パリ(上) 』(辻 昶/松下 和則 (翻訳) 岩波文庫)を読みだしている。
小説系の本と理系(もどき)の本を並行して読むってのが吾輩の読書のポリシー(?)なのだ。
ユゴーはひたすら愉しむとして、イアン・スチュアートの本もこれで何冊目なんだろう。追っかけしてる?
さて、今日あたりからまた雪。しかも、零下になる。気を引き締めないと。
松井孝典著の『地球外生命を探る 生命は何処でどのように生まれたのか』(山と溪谷社)を13日(月)に読了。
本書は、「昨年7月にNHKラジオで13回に渡って放送された「地球外生命を探る」を元に、追加取材を行い、著者の加筆を経て構成したもの」だという。吾輩は、情けなくもこのラジオ番組は全く聴いてなかった(知らなかった)。
書店の天文学や宇宙論の一角で見出し手にした。松井孝典の本は、1993年刊の『宇宙誌』以来かもしれない。この大判の大著であった本も今では電子版や文庫版が出ていて、隔世の感を覚える。今も書架に燦然と。一方、本書はソフトカバー版。93年はバブル崩壊間もなくて、立派なハードカバー本も可能だった。今や最初から単行本ではあるが、ペーパーバック本。ちょっと悲しい。
『宇宙誌』は、内容紹介によると、「我々はどこから来たか、我々とは何か、我々はどこへ行くのか――。科学の飛躍的進展が人類にもたらした劇的変化。我々はどのような思索を経て、現在の科学技術を築きあげたのか。そして新たな文明への途上にあって、宇宙の意味、可能性とは何か。古代ギリシャからホーキングにいたる天才たちの足跡を追い、200億光年の時空を旅する壮大な知的大紀行」というもの。
それから30年を経て、この『地球外生命を探る 生命は何処でどのように生まれたのか』に示される認識に至ったわけである。
隔世の感…科学技術はさらにその感が強い。目次を見比べるだけでも著者の宇宙における生命の認識の深まりを感じる。
目次
1章 この宇宙に地球外生命が存在する可能性
――地球外生命探査の最前線
2章 そもそも生命とは何か
3章 生命はどのようにして〝生きている状態〟を維持しているのか
4章 生命はいつ何処でいかにして生まれたのか
5章 ウイルスは生命の祖先なのか
6章 この地球上で、生命はなぜ進化したのか
――「地球」と「地球もどきの惑星」の違い
7章 地球と生命の進化の歴史
8章 生命の陸上進出とホモ・サピエンスの誕生
9章 生物進化が起こる惑星の条件
「おわりに」によると、著者は長年「この宇宙では生命は普遍的に存在する」、そして「地球生命もまた宇宙から飛来した可能性がある」と主張してきた。が、ここ数年の研究で、主張に若干の変更が生じたという。それは、この宇宙に、生命は普遍的に存在するという主張に変更はないものの、「そのことと、現在の私たちの存在との間には、大きな解離があるという。」「その間に、極めてまれな現象をいくつも乗り越えないと、両者はつながらない」という。
「生命誕生は、この宇宙に存在する無数の海を持つ岩石惑星においては、まれな現象ではない」が、「地球ではその後、さらに多くのまれといえるような生物進化の画期があって、現在の地球生命につながってい」る。「生物の進化に、地球の進化が深く関わっている」というのだ。
そう、(特に地球における)進化の概念が強く認識されるようになっている。「岩石惑星のエネルギーを食べる微生物、あるいはウイルス、あるいは、そこから進化した太陽のエネルギーを食べる微生物が棲む惑星」という地球もどきの惑星段階までは普遍的に存在するだろう。だけど、「地球ではその後、太陽のエネルギーを食べる微生物としてシアノバクテリアが進化し、真核生物が生まれ、多細胞生物が生まれ、知的生命体が生まれ」た。「そうしたまれな現象が起きる確率を計算すると、地球で起きたことは、この宇宙で普遍的に起きることとは言い難い」という。
地球外生命探査の最前線も触れているが、なにより上記しように、「ウイルスと生物の共進化の可能性」などに言及せざるを得ないほどに、知的生命体誕生という稀な現象を思うに至ったわけである。
一層、地球生命の掛け替えのなさを痛感させられた。
著者プロフィール:「1946年静岡県生まれ。千葉工業大学学長。東京大学理学部卒業、同大学大学院博士課程修了。専門は地球物理学、比較惑星学、アストロバイオロジー。NASA客員研究員、東京大学大学院教授を経て東京大学名誉教授。2009年より千葉工業大学惑星探査研究センター所長。12年より政府の宇宙政策委員会委員(委員長代理)。86年、英国の『ネイチャー』誌に海の誕生を解明した「水惑星の理論」を発表、NHKの科学番組『地球大紀行』の制作に参加。88年、日本気象学会から大気・海洋の起源に関する新理論の提唱に対し「堀内賞」、07年、『地球システムの崩壊』(新潮選書)で、第61回毎日出版文化賞(自然科学部門)を受賞。」
最後に、前にも触れたが、なかなか面白い本なんだが、校正ミスが目立つ。鈍な我輩でも気に障る。拙速な出版だったのか、この出版社には不馴れなジャンルだったからか。情けない。著者に、読者に申し訳ないぞ!
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