「ホモ・パックス」へのトリビュート
← 小泉八雲著『日本 一つの試論』( 平井呈一訳 恒文社 ) 「日本研究の集大成といわれる世界的名著の一つであり、外国人の書いた日本国民精神史として、われわれに多くの示唆を与えてくれる、八雲の終生の大著」
ここに感想を書く二冊を読了したので、せっかくの連休だし、山内 マリコ著の『ここは退屈迎えに来て』 (幻冬舎文庫)を読み出した。ロードノベルだとか。楽しめたらいいな。
このところ、快便。でも、毎日のようにあると、せわしない。だけど、嬉しい。すっきり感は何物にも代えがたい。済ませると、一日の仕事の大半をやりきったような。
小泉八雲著の『日本 一つの試論』( 平井呈一訳)を十日(火)に読了。年末年始にかけて、チャールズ・C.マン著 の『魔術師と予言者 2050年の世界像をめぐる科学者たちの闘い』(布施 由紀子 訳 紀伊國屋書店)と共に読んできた本。
買ったのは、上京して間もない頃だったか。十冊ほどの中の一冊。温存してきたわけじゃないが、ずっとキープしてきた。この数年、コロナ禍もあって徐々に読んできている。
本書は、内容案内によると、「日本研究の集大成といわれる世界的名著の一つであり、外国人の書いた日本国民精神史として、われわれに多くの示唆を与えてくれる、八雲の終生の大著」とある。
読了直後に、「八雲の遺著。大学を罷めさせられ(後任は漱石)悲憤慷慨なるも日本(人)を愛し、渾身の思いで書き上げた大著。公刊を見ることなく亡くなった。異論反論はあっても読むべき本。今まで読まずに来たことを悔いている。」と書いた。そう、終生の大著というより、畢生の遺著なのである。
「辛抱強さ」「素朴な心」「察しのよさ」…日本人の古き良き、空気に馴染む温厚な人柄がどのようにして涵養されてきたか。八雲は日本の長い歴史を辿ると共に、その秘密を平田篤胤や賀茂真淵、本居宣長らの諸著に答えを見いだそうとする。仏教よりも神道にこそ日本人らしさの原点が見出し得ると。
が、その神道が過激に走って廃仏毀釈の暴挙に至り、天皇崇拝で国家の暴走に異論を挟む余地がなくなって敗戦に至ったのも事実。その予感めいたことは書いているが、さすがに八雲の生前には悲惨な末路は知る由もなかった。そもそも日露戦争での悲惨な人海戦術の人命軽視…自己主張できない風土の悲惨も見逃せないはずだ。
後付けで批判は可能であっても、日本人には当たり前で敢えて語らないことを、外国人の眼ならではの観察眼で縷々語ってくれている。日本(人)への愛情が満ちている書。
← 長沼毅 著『生物圏の形而上学 -宇宙・ヒト・微生物-』(青土社) 「宇宙はなぜ〈果てない〉のか、ヒトはなぜ〈考える〉のか、微生物はなぜ〈小さい〉のか―― 分野を横断し、時制を越境して、生きものの可能性をラディカルに照らす」
長沼毅 著の『生物圏の形而上学 -宇宙・ヒト・微生物-』(青土社)を十日(火)に読了。ブックオフで発掘。仕事の車中で楽しんできた。残り30頁ほどとなったので、自宅で読了。
長沼毅の本は、僅かに長沼 毅/藤崎 慎吾共著の『辺境生物探訪記―生命の本質を求めて』(光文社新書)を図書館本で楽しんだことがあるだけ。もっと読んできたはずだが。
本書は「現代思想」などに書いてきた小論10篇を編集したもの。どの章も面白いが、個人的には第9章が印象的。「微生物はなぜ小さいのか?」だが、卵子の大きさも含め、その大きさ(小ささ)には必然性があることを説いてくれて面白い。専門家には常識なんだろうが。
著者は、人類ホモ・サピエンスは強者たること、賢いから生き延びてきた…のかもしれないとしても、未来は平和的であるヒューマニティを進化してほしいという。それを「ホモ・パックス(平和なヒト)」と名付ける。
著者は、本書は、未来の「ホモ・パックス」へのトリビュートとして捧げたのだとあとがきで書いている。
長沼毅は、「1961年、人間初の宇宙飛行の日に生まれる。南極、北極、砂漠、深海へと、冒険と探求をやめない生物学者。」「1989年 筑波大学大学院生物科学研究科修了。理学博士号を取得。海洋科学技術センター(現・海洋研究開発機構)研究員、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校海洋科学研究所客員研究員を経て、1994年広島大学大学院生物圏科学研究科助教授、2015年10月に同教授に昇格。第52次南極観測隊員。」(Wikipedia参照)
余談:本書によると、宇宙飛行士になれなかったので、南極観測隊員になったとか。
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