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2022/12/13

出口なし逃げ場なし

 ← レミギウシュ・ムルス著『あの日に消えたエヴァ』(佐々木申子訳 小学館文庫)「ポーランドNo.1ベストセラー作家によるスリラーが満を持して日本上陸」だって。

 13日は自分にはややドラマチックな一日。その詳細は昨日の日記に書いた。大事な要件を忘れる。会社の人間も注意を喚起することはないし、自分で注意しなきゃいけないのだが、あまりに雑用が多いし、そもそも認知力に疑問符が付きそうな気もしないではない。

 半日は会社の用件と歳暮や仕事用のズボンを買う、床屋へ五か月ぶりに(!)行くなどの雑用で潰れた。休日の楽しみである、ゆったり読書する時を持てたのが夕方になってようやく。慌ただしいこと! 師走…年末だからだろうか。

 

 レミギウシュ・ムルス著の『あの日に消えたエヴァ』を12日、これは自宅で楽しんだ。

「ポーランドNo.1ベストセラー作家によるスリラーが満を持して日本上陸」だとか。そんな謳い文句に誘われたわけではなく、読書メーターで本書の感想を目にして手にした。ウクライナがポーランドに(誤って?)ミサイルを撃ち込んだ事件がまだホットな余韻を漂わせていた頃ということも誘因になった?

「十年前、プロポーズの直後に暴漢に襲われたエヴァとヴェルネル。目の前でレイプされたエヴァはそのまま失踪した。絶望の日々を送るヴェルネルは、偶然フェイスブックで見つけた彼女の写真を手がかりに、単身で捜索を始める。チャットを通じて彼を助けるのは、調査会社経営者の妻カサンドラ。彼女にもまた、決して人には言えない秘密があった……。」

 まさに劇的な結末が待っていた。ミステリーに満ちたサスペンスドラマだった。ネット社会のダークでディープな側面が存分に描かれているのも特色。だが、一番の本書のテーマはDV(家庭内暴力。本書ではすべてを支配し拘束する夫による妻への暴力)である。ミステリーよりこちらの叙述が鬼気迫って筋を追うのを忘れるほど。

 著者(訳者による解説)によれば、ポーランドでは年間七十万人の女性が家庭内で暴力を受けていると推定され、そのうち週に三人のペースで亡くなっているという。その衝撃の事実を知ったことが本書を書くきっかけだったとか。交通事故や癌で亡くなる女性より多い。

 家庭という密室。男性の圧倒的支配。出口なしの状況。妻もだが、虐待の対象が子供だったりしたら逃げ道がなく絶望だろう。

 ポーランドのルメートルという世評はともかく印象に残る作品だった。

 ← 色川 大吉【著】『昭和史 世相篇』(小学館ライブラリー)「「昭和」を3つの時代に区分。写真、映画、民衆、運動、儀礼、犯罪、天皇観を通し、世相から昭和史を論究。柳田国男の名著「明治大正史世相篇」を引き継ぎ、新しい視線で考察」

 色川 大吉【著】『昭和史 世相篇』を12日、仕事の車中で待機中に読了。ひょんなことから入手した本。残念ながら楽しめなくて、最後は流し気味。昭和も遠き闇に沈みつつある…のか。昭和の半分は同時代に生きた自分として、個々の具体的事例や貴重な写真に懐かしさを覚えて楽しむことはあった…が、それが本書の未読の仕方ではないだろう。

「「昭和」を3つの時代に区分。写真、映画、民衆、運動、儀礼、犯罪、天皇観を通し、世相から昭和史を論究。柳田国男の名著「明治大正史世相篇」を引き継ぎ、新しい視線で考察」したというものだが、柳田の書にある常民の思想とか、南方熊楠風なこだわりも感じられなくて、どうにもとりとめがない印象。恐らく色川の本書に通底する着眼点が吾輩には嗅ぎ取れなかったのだろう。

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