飼ってるつもりが飼いならされて
← 乃南アサ著『軀 KARADA』(朝宮運河解説 文春文庫)「女性の膝に異常に興奮する男、怪しい育毛剤に手を出す青年、アヒルのようなお尻の女子高校生。体に執着する恐怖を描く新感覚ホラー。」
二日、サッカーワールドカップのスペイン戦の劇的勝利の熱冷め遣らない日に読了。乃南アサ作品は初めて。書店で表紙画像に惹かれて手が出たかも。小生は女性作家の小説やエッセイを読むのが大好き。発想法の根っこや生理感覚を嗅ぎ取りたいのかもしれん。
その意味で本書は絶好の短編集だった。内容紹介に、「人体のパーツへの異様な執着が日常の殻を突き破る五つの物語」とあるが、自身肉体的不具合を抱えてきた小生には息苦しくなるほどにリアル感を覚えさせられた。肌感覚を絶妙に描ける作家なのだと思った。
参照:「呪いと自由――体にかかわるコンプレックスや執着が生む恐怖譚 『軀 KARADA』(乃南 アサ) | 書評 - 本の話」
← アリス・ロバーツ【著】『飼いならす―世界を変えた10種の動植物』(斉藤 隆央【訳】 明石書店)「(前略)該博な知識と非凡な行動力を兼ね備えた著者が、考古学や最新の遺伝学の知見等も織り交ぜながら、人間とその盟友となった種とのかかわりを軸に、人間とは何者なのかを探究する旅に読者を誘う。生動感あふれる筆致で描かれた「われわれの物語」の金字塔」
アリス・ロバーツ著の『飼いならす―世界を変えた10種の動植物』を1日、十日ほどを費やして読了。
「狩猟採集民だった人間(ホモ・サピエンス)は、野生の動植物をそのまま享受するだけだった。やがて人間がいくつかの野生の種に手を加えて飼いならす(家畜化・栽培化する)ようになると、歴史は激変する。人口は増え、文明が興った。そしてそれらの種は人間の生存と繁栄にますます欠かせない存在となっていった…」ドラマを描くもの。
野生の動植物として採り上げているのは、「イヌ コムギ ウシ トウモロコシ ジャガイモ ニワトリ イネ ウマ リンゴ ヒト」の数々。いずれも今となってはあまりに馴染みで身近。
著者の主張は、人間が各種の動植物を飼いならしたが、同時に人間も飼いならされてきたのだということ、さらに、そうして歴史を通じて自然世界も激変してしまったということ。環境問題は、近代顕著になったが、実は飼いならしが始まった新石器時代には影響が出始めていたのだ、という指摘にあろうか。
最初の「イヌ」の章で、人間がオオカミを飼いならしたのか、あるいはオオカミこそが人間に近付いて来て、やがて飼わせるように仕向けたのかもしれないというドラマが面白い。
著者のアリス・ロバーツは、「人類学者。バーミンガム大学教授(「科学への市民の関与」講座)。1973年イギリス生まれ。テレビ番組の司会者や著作家としても知られ、BBC2で人類進化をテーマとするいくつかのシリーズに出演」という方。『人類20万年 遙かなる旅路』は広く読まれたようだ。
本書は書店で発掘したのだが、訳者が斉藤 隆央という小生には何冊も手にしてきたということも、安心して選ぶ材料になった。
参考:「ヒトと自然との調和を探る人類史の傑作『飼いならす』 生物学者・成田聡子氏 が解説|じんぶん堂」
← 風雨で舞い散った椛。せっせと掃き寄せた。落ち葉の季節の終わりは近い。まもなく雪の日々。午後、講演会に行くつもりだったが、氷雨で諦めた。講演会場は遠くはないが、歩いていくのはしんどい。近隣での講演会には今年だけで三回。いずれも天気に恵まれ、自転車で。今日も雨じゃなかったら自転車のつもりでいた。車だと止める場所を探してウロウロだろうし。
今日(日)は休み。雨なので庭仕事はない。外出も上記したように頓挫。ほぼ終日、洗濯二回はルーティーンとして、あとは居眠りに読書、合間には気分転換に書庫の整理を少し。
読んでいるのは、レベッカ・ウラッグ・サイクス著の『ネアンデルタール』と、横山 秀夫著の『クライマーズ・ハイ』 (文春文庫)である。ともに裏起毛パンツを買いに行った際に、書店に立ち寄っての衝動買い。
前者は、「ホモ・サピエンスと交配した「わたしたちにもっとも近い人類」。その文化や暮らしを、最新の研究をもとにいきいきと描く」というもの。ネアンデルタール研究は、近年加速している。ネアンデルタール像は一変したといって過言じゃないとか。サイクスの筆は軽快。ただし、やや文学調かも。
後者の横山 秀夫は初読み。テレビドラマの原作作家という認識だったが、いずれ読みたいと思い続けてきた。書店で、本作品がジャンボジェット機墜落事故に絡むものと知り、即ゲットした。
元は2003年に単行本で出ていたのだから、ファンならとっくに読んでしまっているのだろう。小生もテレビドラマは観た。ちょっと先入観が入りそうで、ややためらいがあったが、そこは横山作品だし、事故にも思い入れがあるので、敢えて読む。
「(前略)著者渾身の傑作長編。著者・横山秀夫がこの当時、地元群馬の上毛新聞の記者であったことはよく知られている。事故の模様を、おそらくもっとも深く知り、受け止めたジャーナリストであったろう。事故から十七年後、主人公「北関東新聞」の「日航全権デスク」悠木に託し、渾身込めて作品化した。(後略)」(後藤正治「解説」より)とあれば、手にするのは必然だったろう。
前者は今日は既に60頁余り。後者も昨日から読み始めて既に270頁。全く描かれる世界が違うが、どちらも面白い。ショパンのCDを繰り返し聞きながらの読書。楽しい。
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