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2022/12/19

ネアンデルタール人やら宇沢弘文など

 ← レベッカ・ウラッグ・サイクス 著『ネアンデルタール』(野中 香方子 翻訳 筑摩書房) 「けが人をケアし、肉を加熱調理し、ホモ・サピエンスと交配した「わたしたちにもっとも近い人類」。その文化や暮らしを、最新の研究をもとにいきいきと描く。」

 レベッカ・ウラッグ・サイクス 著『ネアンデルタール』を19日(月)の夕方読了。二週間を費やして。中身が濃厚だし、読み出して名著の呼び名もありかと感じたので、600頁余りの大著を敢えて日に30頁ずつ読んできた。

 実際、「人類の親戚としてのネアンデルタール人を、最新の研究の知見をもとに親愛をこめて描く。人間に関心のあるすべてのひとに――ユヴァル・ノア・ハラリ」という評が刊行された昨年早々と出たほど。

 ネアンデルタール人関連の書は、今年度のノーベル賞受賞者の一人でもあるスヴァンテ・ペーボ著の『ネアンデルタール人は私たちと交配した』(文藝春秋)やクライブ・フィンレイソン著の『そして最後にヒトが残った―ネアンデルタール人と私たちの50万年史』(白揚社)川端 裕人著『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』 (ブルーバックス)
など何冊も読んできた。その中でも本書は傑出している。

 著者は、「英国の考古学者。中期旧石器時代、特にネアンデルタール人を専門とする。2010年、イギリスのネアンデルタール人後期の証拠をまとめて博論を提出。」「PACEA研究所にてマシフ・サントラル山地のネアンデルタール人および先史時代の遺跡に関する研究に従事。現在、リバプール大学及びボルドー大学の名誉フェロー。(中略)テレビ番組でサイエンスコミュニケーターとしても活躍」といった人物。

 本書の原題「KINDRED 親戚:ネアンデルタールの生活、愛、死、そして芸術」が本書のテーマを直截に示している。この十数年でネアンデルタール人理解は大転換した。ネアンデルタールとホモ・サピエンスとのあいだに血の交わり(交配)は一度ならずあったし、我々現代人のDNAにその証左は残っていることは知られてきた。

 椹木野衣による朝日新聞書評の言を借りると、「本書の本当の魅力は、そうした学術研究の成果に傾きがちな最新の知見や仮説を、万人に開かれたネアンデルタール人の「物語」として示したところにある。

 著者の物語風な語り口により、「ネアンデルタール人をめぐるこれまでの「野蛮人」像が氷解し、ついには隣人のように思い浮かべられるようになる。飢餓どころか高カロリーの病気に悩まされ、虫歯が痛んでは治療を施したというネアンデルタール人像は、微笑(ほほえ)ましくさえある。

 解説の藤田裕樹(国立科学博物館 人類研究部)の言によると、ネアンデルタール人研究に「劇的な展開をもたらしたのが、二〇〇〇年代に入って飛躍的に発展した数々の化学分析である。各種の年代測定の技術はもちろんのこと、同位体分析やたんぱく質のアミノ酸配列の分析、古代DNA分析などの新技術は、文字通り、遺跡や遺物に残される目には見えない情報を可視化することに成功した。」

 もうホモサピエンスが優秀だったから生き延びたとは言えなくなってきた。何故にネアンデルタール人が死滅したのか、分からなくなってきたのである。その意味で、我々現代人は、ネアンデルタール人という<宇宙人>との遭遇を今、果たしつつあると云えなくもない。

 但し、椹木野衣による朝日新聞書評の言にもあるように、「本書のエピローグは、いささか辛辣(しんらつ)だ。著者はそこで「ホモ・サピエンス」が到達した文明の最終局面を「生産と消費という腫瘍(しゅよう)」と呼び、気候変動の危機やふたたび生じるであろうパンデミックへと警鐘を鳴らしている」ことは銘記すべきだろう。

 物語風で読みやすく、且つ実に内容の濃い、示唆に富む名著と実感しつつ読めた。今年の収穫の書だ。

 ← 佐々木実著『今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて』(講談社現代新書)「宇沢が環境問題の研究を始めたのは半世紀も前であり、地球温暖化の問題に取り組んだのは30年あまり前からだった。先見の明というより、問題を見定める際の明確な基準、つまり、思想があったからこそ、これほど早く問題の所在に気づくことができたのである。」(はじめに)

 佐々木実著の『今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて』を月曜の夜半過ぎ、読了。小著だが中身の濃い本だった。書店で衝動買い。日本でもさすがに新自由主義や市場至上主義の経済は行き詰まりを示し、失われた30年のドツボから脱出すべく若手の経済学者らが台頭してきた。吾輩も何冊か読んできた。その極めつけであり先駆者が宇沢弘文なる傑出した経済学者だ。

 アメリカで早くから注目されていたし、そのままアメリカの経済学界に留まっておれば、日本人初の経済学でのノーベル賞受賞もありえたのかもしれない。なんたって、かのジョセフ・スティグリッツも宇沢のもとで学んだことがある。

 が、彼は60年代に敢えて日本へ、アメリカからしたらローカルな僻遠の地へ飛び込んだ。ベトナム戦争に突き進むアメリカに辟易したとも。

 日本では、学生運動が激しかったり、なんと云っても四大公害病に苦しんでいた。あるいは三里塚闘争が危機的状況でもあった。

 宇沢は、成長優先の政策を批判する立場に立ち、「1974年に都市開発・環境問題への疑問を提起した『自動車の社会的費用』を発表し、「社会的共通資本」の整備の必要性を説いた」り、「水俣病問題や三里塚闘争の仲裁にも関わり、地球温暖化に警鐘を鳴らした」。あるいは、「地球温暖化の問題では、「(比例型)炭素税」を導入を主張した」。

 宇沢は、「東大教授時代は、電車や車を使わず、自宅からジョギングで通っていた」とか。飛行機嫌いでもあったとか(この辺りはWikipedia参照)。

 最後に(はじめに より):「資本主義見直しの潮流が始まった直後、世界はコロナ・パンデミックに襲われ、ウクライナの戦争に直面した。危機に危機が折り重なって、社会は混沌の度を深めている。宇沢の思想に共鳴するかしないかが問題なのではない。生涯にわたって資本主義を問いつづけた経済学者の思考の軌跡は、かならずや混沌から抜け出すヒントを与えるはずである。」

 本書は、まさに宇沢経済学への入門書である。こんな人物が日本に居た。ある意味、彼の思想や姿勢は30年…半世紀は世界に先駆けていたと云えそうだ。これからドンドン再評価されていくだろう。吾輩も遅まきながら宇沢研究の動向を注目していくつもりだ。

 著者の佐々木実は、フリーランスのジャーナリスト。「社会的共通資本の経済学を提唱した宇沢弘文に師事し、彼の生涯を描いた『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』(小社刊)で第6回城山三郎賞と第19回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞をダブル受賞した。」

 

 寒い! 家の中なのに寒い! 暖房のある茶の間や書斎だけ暖房中 やや暖かい。あとは、隣の台所も脱衣場も、廊下も座敷も玄関も寒い! 吐息が白い。一昨年 トイレに卓上型電気ストーブを設置した。

 それは元々は脱衣場のために購入したもの。が、コンパクト過ぎてまるで役立たず。が、トイレという狭い空間では実力を発揮。今ではトイレが我が家で一番 暖かな空間になった。なんならずっとトイレに閉じ籠もっていたいほど。 (12/19 22:33)

(頂いたコメントへのレス)どんな暖房装置も空間が狭く密閉されてないと効果が弱い。トイレは理想的な密閉空間。……とはいえ、ずっとトイレに籠るわけにもいかない。ヒーター付きベストはどうだろう、なんて考えてます。 (12/19 23:17)

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