終日在宅読書三昧?
← 伊藤詩織 著『裸で泳ぐ』(岩波書店) 「あの日二五歳だった私はいま、三三歳になった――。声をあげて、「それから」の日々を綴った待望のエッセイ集。」
夜になって、「東京都立大教授の宮台真司さん、襲われ重傷 大学敷地内の歩道で 」 (毎日新聞)というニュースが。
29日は休み。朝から曇天。雨の予報。これを幸いに庭仕事は休んだ。せっかくだから、先日買った裏地(起毛)のパンツの色違いを買いに行こうかと思った。仕事で穿くスラックスは夏にはいいが、冬は寒い。風がスースーする。
どうせ吾輩は夕方からの仕事で、制服のスラックスとは素材も色合いも違っていたって気づかれにくいだろうし。でも、風雨の外にめげて、読書と音楽の傍ら、書斎の本の整理を運動がてらに。
あれこれ思いつつも、今日は結局在宅に終始。延々と読み続けている、アリス・ロバーツ著『飼いならす――世界を変えた10種の動植物』を今日も。
さらに、折角の連休だし、ハードな本が続いたので、ここらで娯楽の本を、ということで、先日買い置きしておいた、ピエール・ルメートル作の『わが母なるロージー』 (文春文庫)を一気読み。カミーユもののスピンアウト的作品。最後まで飽きさせない。さすがのエンターテイメントだ。
読了の余勢を駆って、乃南アサの『躯(からだ)』に手を付けた。本書を読み出して分かったのだが、短編集なのだが、99年に単行本、02年に文庫本。本書は文庫の新装版。やはり多作家であり、人気作家なのだ。題名に惹かれて手にした。あるいは表紙画像にか。女性作家の作品を読むのが大好き。
伊藤詩織 著『裸で泳ぐ』を29日読了。
「あの日二五歳だった私はいま、三三歳になった――。事件、そして声をあげて、「それから」の日々を綴った待望のエッセイ集。突然、心の奥底で解除された感情。繊細でしなやかな友情。家族との時間。生まれていったつながり……日本の#MeTooを切りひらいた著者が、「ただの自分」の声を見つけるまで。」(本書カバーより)という本。
伊藤詩織は、フリージャーナリスト、映像作家。性的暴行の被害を受けた1人として#MeToo運動で知られ、伊藤の証言やインタビューが複数の海外メディアで報道された(彼女が嚆矢か)。
2020年、米TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出されたことでも有名。
準強姦被害訴訟は、刑事訴訟では2016年7月に嫌疑不十分で不起訴となり、検察審査会も不起訴相当と議決した。民事訴訟では、「2019年12月18日、東京地裁は「酩酊状態にあって意識のない原告に対し、合意のないまま本件行為に及んだ事実、意識を回復して性行為を拒絶したあとも体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実を認めることができる」と認定し、山口敬之に330万円の支払いを命じた」。双方抗告したが、その後、判決は確定している。以上、Wikipedia参照。
最初、本書の題名に違和感を抱いた。性的暴行を受けた…裸で泳ぐ…あまりに事件の様相をあからさまに惹起されるようで、題名としていかがなものかと感じたのだ。
その誤解は本書を読むことで見事にほぐされた。
日本の女性に通有なのか分からないが、痴漢や性的暴行を受けて、「やめてください」「ゆるして」などと、まるで被害者が悪いかのように卑屈な文言が出てしまうことへの違和感が吾輩の中にあった。事柄の異常さ、日本における女性の随従的立場が齎すものなのか。
そんな中、敢えて声をあげる勇気。その後の彼女の壮絶な日々。敢えて声をあげたことで得られた仲間や見ることのできた風景。性的暴行の悲惨は、一生引きずる。乗り越えるなんて、他人には癒えても当人は生き延びるだけで精一杯。自身自殺未遂も経験した。まさにサバイバル。本書は日々の感想を綴ったエッセイ集。最後に、サバイバルではなく、生きることを徐々に勝ち取っていく姿が見えることが希望か。
「私は海にいるとき、自分がただの生物だと思える。被害者、ジャーナリスト、女、人間、どれも水の中では関係ないのだと。」これが本書の題名の『裸で泳ぐ』に表現されているわけだ。
一読を薦めるのも安直には言えない。読みながらずっと苦しかった。読み終えても、彼女は必ずしも裸で泳げているとは素直には思えなかったからだ。
← 白井 聡 著 / 望月 衣塑子 著『日本解体論』(朝日新書)「政治学者と新聞記者が、政治・社会・メディアの問題点、将来に絶望しながら現状を是認し続ける「日本人の病」に迫る。さらに戦後の歴史、国民意識の現在地を踏まえながら、縮小するこの国の、向かうべき道筋を示す。」
「」
白井 聡 / 望月 衣塑子 共著の『日本解体論』を28日、読了。活発な言論活動を続けているジャーナリストの望月 衣塑子。「アメリカのニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、官邸会見で望月の質問が報道室長によってしばしば妨害されたり打ち切られたりすると紹介したうえで、「会見で政治家へ鋭い質問をぶつける」という多くの国で記者が当然の仕事として行っていることが日本では当たり前ではないために、逆説的に望月が著名人になっている、と皮肉を込めて報じた」(Wikipedia参照)など、目立つだけに賛否交々なのは当然か。
白井 聡は、思想史家、政治学者。「『永続敗戦論』において、戦後日本は対米従属的な政治体制により、日本人の歴史的意識から敗戦の事実を追いやり戦争責任を否定することが可能となり、それにより対米従属的な政治権力の正当性を保つことができたと主張している。」(Wikipedia参照)。肝心の『永続敗戦論』は未読。
本書における白井 聡によると、「この10年の間、日本社会の崩壊は加速度的に進行してきた。政界、財界、労働界は言うまでもない。マスメディア、そして私の属する学術の世界も同断である。(中略)劣化は、それ自身で進行するわけではない。その担い手、人間が必ずいる。要するに、劣化しているのはさまざまな現場における個人であると考えない限り、われわれは何をなすべきか、指針が得られることはない。」
望月衣塑子は、「野党やメディアはつねに徹底した政権・権力批判が必要ということだ。政府への「提案」や「補完」にとどまるようでは、野党やメディアの存在価値はない。そして、学者も権力者のいいなりになってはならない。」という主張姿勢で一貫している。
既述したが、スリランカ難民で入管に強制的に拘束されていたウィシュマさんのケース。テレビでは伝えない詳細な記述に衝撃。入管職員の残虐無道な仕打ちには怒りで怒髪衝天。彼女は入管の職員に、つまりは日本国家に、ひいては座視する日本国民に惨殺されたのだ。
読むべき本の一冊として紹介しておく。
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