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2022/09/22

日中国交正常化50周年

 ← 堀田 善衞 著『時間』(岩波現代文庫) 「南京事件を中国人知識人の視点から手記のかたちで語り,歴史と人間存在の本質を問うた戦後文学の金字塔.」(解説=辺見庸)

 堀田善衞 作の『時間』を22日未明に読了。数年ぶりの読了。かなり若いころにも読んだかも。「南京事件を中国人知識人の視点から手記のかたちで語り,歴史と人間存在の本質を問うた戦後文学の金字塔」というもの。

 二度目か三度目だからか、少し作品の出来で粗さを感じた。これは作家の意図したものか。現実の凄まじさの前で言葉が無力に感じられる。それでも、立ち向かわないと風化する、今、書いておかないと…。

 今年は、1972年9月に日中共同声明を発表して、日本国と中華人民共和国が国交を結んだ、所謂日中国交正常化50年に当たるので読んだ。アメリカと中国の対立の先鋭化に巻き込まれたのか、日本もアメリカに追随。これ幸いと、日本の過去の恥部に向き合う努力をしなくて…いややっているがマスコミはほとんど取り上げない…NHKくらいか…軽く済ませている。セコイ?!

「殺,掠,姦――一九三七年,南京を占領した日本軍は暴虐のかぎりを尽した.破壊された家屋,横行する掠奪と凌辱,積み重なる屍体の山.この人倫の崩壊した時間のなかで人は何を考え,何をなすことができるのか.」

「著者の堀田善衞は1945年5月,武田泰淳とともに南京を訪れ,現地にあった草野心平の館に宿泊します.南京の古蹟を見学してまわっていた堀田は,夕陽にうつくしく照り映える紫金山の景観に見とれながら,8年前の1937年にその地で日本軍がなしたきわめて陰惨な殺戮行為に思いをいたします.そして「いつかはこれを書かねばならないであろうという,不吉な予感にとらわれた」と」いう。

「南京事件勃発の直前1937年11月30日から,翌年の1938年9月18日までの南京での日々が,インテリ階級の“中国人”陳英諦の視点から,一人称「わたし」の日記形式で語られます.日本人の作家,つまり加害者の側である作家が,被害者側の中国人の視点からえがく」のだが、少しは堀田の書を読み重ねてきて、どうしても、虚構じゃなく、堀田の知識人ならではの発想臭が鼻に衝いてしまう。眼前に繰り広げられる暴虐のかぎりを尽した日本軍の「殺,掠,姦」の現実の生々しさが描き切れていない…知的ベール越しで隔靴搔痒の感が否めない。

 それでも、こんな作品は今の時代の作家には書けないだろう。日本軍の蛮行を赤裸々に描くのは、自虐史観だと非難轟々だろう。そいつらこそ過去隠蔽史観、過去瞞着史観に囚われているのと思える。過去を冷静に向き合えない国民性…。

 本書の内容についてより詳しくは、「時間 - 岩波書店」へ。

 

 一昨日の台風で荒れた庭。今日の休みに清めようと思っていた……が、雨。雨天順延。お陰で読書ははかどったよ。 (09/22 21:55)

 と思ったら、夜半近くに寝落ち。ま、ブログ日記書いたからいいけどさ。

 

 読んでたのは、R.D.レイン著の『ひき裂かれた自己―分裂病と分裂病質の実存的研究』と、レナード ムロディナウ著の『ユークリッドの窓: 平行線から超空間にいたる…』。後者もだが、前者はやはり重い。

 ただ、初めて読んだ頃より、自分への突き刺さり方が弱い。本書の書き方に、キルケゴールやサルトルやハイデッガーなどなどの匂いを感じてしまうからか、それとも、自分の感性が鈍くなったからか。

 後者なんだろうけど、昔、己が透明なパイプの中にあって、他者との繋がりの薄さ、もっと言うと生きている実感の希薄さに懊悩していた…それは、精神的な悩みじゃなく、実は肉体的なものに遠因していたことに気付いたからだろう。

 睡眠障害の自分の心身に与えた傷は深く、深すぎて自分でも分からずに来た。

 十歳からの長すぎる障害。自分には睡眠がなかったこと。このことは他人には分からないだろう。親にも誰にも。

 自分は、レインの心理分析の示される世界は、似て非なる世界だったのだ。もっと物理的肉体的な心身の損傷。

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