青い空 白い雲
← レナード・ムロディナウ 著『ユークリッドの窓 ─平行線から超空間にいたる幾何学の物語』(青木 薫 翻訳 ちくま学芸文庫) 「平面、球面、歪んだ空間、そして……。幾何学的世界像は今なお変化し続ける。『スタートレック』の脚本家が誘う三千年のタイムトラベルへようこそ。」
レナード・ムロディナウ 著の『ユークリッドの窓 ─平行線から超空間にいたる幾何学の物語』を読んだ。刊行当時の15年に読んだので、僅か数年ぶりの再読。車中の友にと選んだ。文系っぽい本が続いたので、理系の匂いのする本を手にした。
著者のレナード・ムロディナウは、「1954年、ユダヤ人の両親のもとに生まれる。カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得。カリフォルニア工科大学特別研究員、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団招聘研究員等を経て脚本家に転身。『新スター・トレック』ほか、多くのテレビシリーズを手がける。」という人物。
脚本家として鍛えられたからからか面白く読ませる技術に秀でている。
本書の内容は、出版社によると、「紀元前の古代ギリシャ。単なる測量術にすぎなかった人類の知恵を、「幾何学」という一つの学問にまで高めた数学者がいた。ユークリッドだ。円と直線の組み合わせで描かれる世界観はその後のものの見方を決定づけ、幾何学に革命が起こるたびに、より深い真実があることが明らかになってきた。(中訳)世界の見方は古代以来変わり続け、数学と物理の深い関係が今、明らかになりつつある。ユークリッドが開いたのは、宇宙の姿を見せてくれる窓だったのだ。」
上記したように数学や物理学にも弱い小生も十分に楽しめた。最後の章のウィッテンのひも理論の帰趨が気になる。ひも理論は、何度も風前の灯状態だった。さて、浮沈の行方は? ウィッテンは、ニュートンやガウス、アインシュタインに続く物理学の誰もが知る新しき盟主になるのか…。
← フィリップ・ジュリアン (著)『世紀末の夢―象徴派芸術 (1982年)』( 杉本 秀太郎 (翻訳) 白水社)「ラファエロ前派→モロー→象徴派→シュルレアリスムという世紀末の絵画の流れを正しく捉えた絵画史。象徴派と表裏一体の運動であった「アール・ヌーヴォー」への言及も多い。読者は、珍しい多数の図版を見ながら観念とイメージの交錯により生み出された幻想の国々をじかに触れることができる。」
昨日から読み始めたフィリップ・ジュリアン著の『世紀末の夢―象徴派芸術 (1982年)』だが、何だか懐かしい。高校から30歳頃の自分の嵌っていた世界を回顧するような。今となっては溺れることはないが…。
泥水を啜ってる。黴臭い壁を這い伝ってる。分厚い曇りガラスの窓の外は晴れているようだ。
ん? 俺は今、何処にいる。青空の下を歩いてるんじゃなかったか。燃え上がる闇の一夜を命からがらやり過ごして、お袋に起こされて、目覚めた振りをして、味のない香りもない食事を済ませ、いつものように学校へ。
青い空、白い雲。だが、俺には空はない。垂れ込める雲、それとも血の滲む皮膚越しの爽やかな風を嗅ぎ取っている。今にも倒れ込みたい。その場に突っ伏して寝入りたい。いつものようにガンガン壁を叩く真っ赤な闇夜を忘れ去りたい。
隣の兄貴に話しかける。それはうっかりすると気を失いがちな俺の必死の足掻き。タールのような海の波に溺れ込まないよう、海の泡を拾い集めては口にしている。意味などない。そう、泡がごぼごぼ云っているだけ。
さぞ、お喋りな軽薄野郎と思われるんだろう。でも、仕方ないんだよ、生きるためなんだもの。
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