世の中 お互い様だ
← モンティ・ライマン著『皮膚、人間のすべてを語る 万能の臓器と巡る10章』(塩﨑香織訳 みすず書房) 「「自分」が皮膚の内側に隠れていると思ったら大間違い。皮膚こそ、自分そのものであり、つねに私たちを語っている。」皮膚は、「多彩なやり方で私たち自身を形作っている。そして、健康、美容といった生活面はもちろんのこと、「哲学や宗教、言語にまで、単なる物質的なあり方をはるかに超えた影響力を及ぼしている」と著者は言う。
吾輩はタクシードライバーである。お客さんに乗車の際に言われることで、気になるひと言がある。それは、近くでゴメンね、である。せっかくの客なのに、行く先が近場では運転手はさぞかしがっかりする…。
全く落胆しないわけではないが、我々が何が嫌だと言って、無線で呼ばれて相手先に迎えにいって、お客にお待たせしましたと案内して、それから延々待たされることである。
お客さんの行き先が遠い近いより遥かに不快である。距離が近ければ、短い時間で営業は終わる。我々は次のお客さんを求めるだけである。短距離でも何回も乗っていただければハッピーなのだ。
が、待たされるのはほとんど営業妨害だ。案内してから10分もそれ以上も待たされることがある。タクシーを呼んだ以上は、足が確保できたからというのか、さらに歌を歌ったり、グラスを重ねたり。そう、まだ店での支払いも済ませていない。まるでハイヤーである(ハイヤーなら運転手はメーターの運賃ではなく、時間給で働いている)。
自分だったら、清算して忘れ物をチェックしてタクシーを待つだろう。タクシードライバーも、無線で呼ばれたら、お客さんを待たせてはいけないと、何をさておいても駆けつける。
呼ばれた先でお客さんが出てくるのを待つ時間も、我々の貴重な営業時間である。お客さんにも都合があるだろうから、五分は許容の範囲だろう。が、十分となると!
日に無線配車が10回あったとして、10掛ける10で100分である。それだけの営業時間が無為に消え去っていく。余程気の利いたお客さんなら、メーター入れておいていいよと言ってくれるが、それは例外中の例外である。富山にはそんな客はいない。
タクシーの台数が足りない状況が続いている。可能な限り早めに乗ってくれれば、他のお客さんに迷惑をかけることもない。
世の中はお互い様なのだ。
モンティ・ライマン著の『皮膚、人間のすべてを語る 万能の臓器と巡る10章』を十日近くを費やして読んだ。実に面白かった。訳も適格だしこなれていて、ポピュラーサイエンス本だが、話題が豊富なので、読んで楽しめた。皮膚…肌に関心のある方には実用の書としても読めるかもしれない。
著者も言うように、「「自分」が皮膚の内側に隠れていると思ったら大間違い。皮膚こそ、自分そのものであり、つねに私たちを語っている」のだ。
← 村上 勝彦 著『進駐軍向け特殊慰安所RAA』(ちくま新書)「終戦からわずか三日後の一九四五年八月一八日、内務省警保局から全国の知事に秘密の指示が発せられた。それは、進駐軍向けの性的な慰安所を速やかに設けよという指令だった。特殊慰安所RAAである。(中略)占領下にあった敗戦国、その裏側史を活写する。」
村上 勝彦 著の『進駐軍向け特殊慰安所RAA』を17日未明読了した。日本軍が関わった従軍慰安婦については夙に知られているが、「終戦からわずか三日後の一九四五年八月一八日、内務省警保局から全国の知事に秘密の指示が発せられた。それは、進駐軍向けの性的な慰安所を速やかに設けよという指令だった。特殊慰安所RAAである」という事実はあまり知られていないのではないか。パンパンは映画にもなったくらいで世に知られているが、この特殊慰安所RAAはその前史のようなものか。
美辞麗句でお国のためにと説得(?)され、その実態は、日に十人二十人もの米軍兵士相手の性の接待。生活のために、騙され、あるいは強制的に慰安婦となった。
戦後ですら国が関わった慰安所が日本全国にあった。戦中は推して知るべしだろう。身を挺して国の治安を守る…というと綺麗事だが、そんな悲惨な歴史があったことを知らないでいてはいけないだろう。
← 海堂尊著『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 『チーム・バチスタの栄光』の著者による作品。「明治時代のニッポンにも、感染症との終わりなき闘いに挑んだ二人の男がいた。(中略)医師である著者が、北里柴三郎と、軍医・森鷗外のライバル物語を描く。(中略)二人は、互いへのライバル心を燃やしながら、「感染症から国民の命を守る」という同じ目標へと突き進んでいた。その二人がなぜ道を違え、対立したのか。」
海堂尊著の『奏鳴曲 北里と鷗外』を14日に読了した。1922年(大正11年)7月9日に鴎外は亡くなったので、今年は没後百年。関連の本は各種出ているが、読みやすそうなので、本書を手にした。
実際、伝記ではなく、小説仕立て。でも、小説でもない。なので、登場する人物らの喋りは、作り事と受け止める。事実関係だけを追うように心がけた。
二人の資質が随分と違う。北里は独立独歩の基礎研究者。野口英世については中学の頃だったか、英雄視されていて伝記も詠んだが、北里柴三郎については本書で初めておおよそのことを知ることができた。
鴎外は組織人として、内心は分からないが、脚気については陸軍のメンツを守ることに終始した。だが、内実は苦しかったのではなかろうか。その分、留学で学びつつも、若いドイツ女性に溺れていく。本人は真面目な恋のつもりだったのだろう。陸軍の幹部として役目を果たしつつ、心は女であり文学だった。
ところで、鴎外は37歳の時、出世競争に負け九州・小倉に左遷され陸軍を辞めようかと思いつめた時期があった。この件について、朝日新聞の天声人語にまさにこの話題が載った。揺れる心境のまま小倉にいたが、そこで玉水俊コ(交わるに虎)なる学僧に出会う。学徳があるのに荒れ寺に住み、俗事にとらわれない。生涯の親友となったとか。2年9か月ほどの小倉在勤中、アンデルセン『即興詩人』の翻訳に励んだり、九州各地を巡り、庶民の価値観に親しんだという。
鴎外は軍医としての職務を精勤しつつも文学にこそ己の本分を見出していたようだ。鴎外の作品は折々読んできたが、全集は所持したことがない。いつか手にすることがあるかもしれない。
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