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2022/06/06

華岡青洲に遺伝子本に…医学つながり?

 ← 有吉佐和子/著『華岡青洲の妻』(新潮文庫)「江戸後期、世界で初めて全身麻酔による手術に挑んだ紀州の名医青洲。一人の天才外科医を巡る嫁姑の凄まじい愛の争奪。」

 ルシア・ベルリン著の『すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集』(岸本 佐知子訳 講談社)を日曜日の夜半近くから読み始めた。揖斐編訳の江戸漢詩選と併行して読む。世界を股にかけて(?)読書できるのが現代人の特権? 

 ルシア・ベルリンは『掃除婦のための手引き書』が絶品だったので、新刊が出たということで、早速入手し、下記の本を読了したことだし、早速読む。

 まだ、冒頭の20頁ほどだが、実にあっけらかんとしていて、あけすけで面白い。日本の作家が書いたら深刻になり、自虐的か暴露趣味的になりそうだが、決してそうならないのがベルリン作品。

 有吉佐和子作の『華岡青洲の妻』を四日(土)読了した。既に古典と呼んでいい域にある作品。傑作。

「世界最初の全身麻酔による乳癌手術に成功し、漢方から蘭医学への過渡期に新時代を開いた紀州の外科医華岡青洲。その不朽の業績の陰には、麻酔剤「通仙散」を完成させるために進んで自らを人体実験に捧げた妻と母とがあった――美談の裏にくりひろげられる、青洲の愛を争う二人の女の激越な葛藤を、封建社会における「家」と女とのつながりの中で浮彫りにした」という物語。

「華岡 青洲(1760年 - 1835年)は、江戸時代の外科医。記録に残るものとして、世界で初めて全身麻酔を用いた手術(乳癌手術)を成功させた。欧米で初めて全身麻酔が行われたのは、青洲の手術の成功から約40年後となる」(Wikipedia参照)。

「実母の於継と妻の妹背加恵が実験台になることを申し出て、数回にわたる人体実験の末、於継の死、加恵の失明という大きな犠牲の上に、全身麻酔薬「通仙散」を完成させる。ただし、母と妻が投与試験に参加したことを裏付ける資料は見つかっていない」(Wikipedia参照)という。

「医師医学者でありかつ麻酔史、青洲の研究家でもある松木明知弘前大学名誉教授に拠れば、青洲が春林軒で乳癌の手術を行った患者143人の内、術後生存期間が判明するものだけを集計すると、最短で8日、最長は41年で、平均すれば約3年7か月となる。当時の医療水準から、外見から明らかにわかるほど進行した乳癌が主体だと推定されることを考えれば、乳癌手術として大変な好成績であるとしている。」(Wikipedia参照)

 小説を読んでずっと気になっていた消毒の件だが、「青洲はオランダ式の縫合術、アルコールによる消毒などを行い、乳癌だけでなく、膀胱結石、脱疽、痔、腫瘍摘出術などさまざまな手術を行っている。」とか。

 いろんな観点からやはり、青洲は傑出した医師だったようだ。

 肝心の「麻酔剤「通仙散」を完成させるために進んで自らを人体実験に捧げた妻と母とがあった」という話だが、「母と妻が投与試験に参加したことを裏付ける資料は見つかっていない」というのは、残念だ。

 史実はともかく、この作品での嫁と姑の確執の話などは鬼気迫るものがあり、男性の身からすると窮屈極まる。前にも書いたが、女性らの心理などは(吾輩が云うのも僭越だろうが)よく書けていると感じるが、男性の心理などはどうなのかなと思わせた。そこは主眼ではないから詮索する必要はないのだろう。

 

 ← 中屋敷 均著『遺伝子とは何か? 現代生命科学の新たな謎』(ブルーバックス)

 

 中屋敷均著の『遺伝子とは何か? 現代生命科学の新たな謎』を5日(日)の午後、読了した。文系の本が続いていたので、そろそろ理系の本への渇望の念が湧いてきたところで、この本。

 中屋敷 均の本は、『ウイルスは生きている』 (講談社現代新書)以来で、二冊目。この本も面白かったことも、本書を選ぶのに後押しとなったのは確か。

 期待以上の本だった。今更「遺伝子とは何か?」なんて教科書的な本など退屈なのではないか…そんな野暮な危惧など吹き飛ばされた。一応は、科学史に基いて「遺伝子とは何か」が綴られている。その過程でも、ワトソンとクリックらによるDNA発見というトピックの陰のドラマが描かれていたりして、実に面白い。

 が、終章で我慢がならなくなったか、著者個人の遺伝子に関する考察が述べられ、これがまた面白い。

 以下、出版社による説明を借りる:

「2003年にヒトゲノムの解読が完了したが、これで「遺伝子」がわかったのかというとそうではない。DNAにコードされている遺伝子の構成が判明したことで、ヒトゲノムの複雑さがかえって判明してきた。また、DNAに遺伝子はコードされているが、それらは非コード配列やそのコピーである多様なRNAなどによって、たくみに制御されていることがわかってきた。「遺伝子」とは、それらの制御機構を抜きにしては語れないし、「遺伝子」の概念は新たなステージで考える必要があるのではないだろうか?」

「本書では、メンデルの実験から、ワトソン、クリックによる二重らせんモデルの発表など、「遺伝子」をめぐる科学史を追いかけながら、「遺伝子」の正体を問い続ける。ゲノムの解読は終わりではなく、「遺伝子とは何か?」という、古くて新しい問いとその答えをめぐる研究の始まりであることを明らかにする野心的な一冊。」

 門外漢の小生など、遺伝子というとDNAであり、RNAはあくまでサブというイメージだったが、それが本書で一挙に覆された。下手すると、RNAが主役…というより、何かもっと複雑な全体的なシステムこそが主役なのではないかと思わせられた。

 まさに、題名にある「現代生命科学の新たな謎」が現下の遺伝子学のトピックであり、そのことを示すのが本書の主題なのである。面白かった。一読を推薦。

 

 以上、二冊を読了したが、無理やりこじつければ、医学…生物学繋がりとなるだろうか。それはともかく、どちらも読みごたえがあった。

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