顧みられない裏庭…
← 長野まゆみ 編『長野まゆみの偏愛耽美作品集』(中公文庫) 「三島由紀夫、横溝正史、塚本邦雄……編者が10代で出会った耽美作品から、小説、随筆、詩歌を精選。美と幻想の世界へ誘う26作」
今は九日の夜中過ぎ、丑三つ時。昨日は庭仕事に二時間半。納屋に溜まっている枝葉の処理、畑や裏庭の枝葉の剪定作業。ちょっと目を離すと、あっという間に繁茂する。可能なら伐採してしまいたい、邪魔な木が特に伸びる。その枝葉が植木への太陽の光を遮ってしまう。誰も目をくれる人もいない裏庭だが、せめて吾輩が気遣ってやらないとね。
長野まゆみ 編の『長野まゆみの偏愛耽美作品集』を車中で少しずつ読んできて、七日(火)に読了。題名や、表紙の絵をちゃんと考慮すべきだった。そもそも耽美作品嗜好は自分にはほぼない。あるいは皆無か。美しい人は好きだが、美と幻想の世界に妄想の中ですら、浸るのは尻込みする。まして、少年愛の性癖となると、自分の感性には全く刺さらない世界。
この作品集には、三島由紀夫、横溝正史、塚本邦雄、岡本かの子、泉鏡花、谷崎潤一郎、久生十蘭、福永武彦、夏目漱石、稲垣足穂、内田百閒、上田秋成、蒲松齢、永井荷風、幸田露伴、小泉八雲、木下夕爾、宮沢賢治、田中恭吉、萩原朔太郎、ブラウニング、北園克衛、北原白秋、葛原妙子、若山牧水、西東三鬼らの小説随筆詩歌作品が載る。
夏目漱石の「夢十夜」って、耽美だったっけ。だけど、何度読んでも発見のある傑出した作品だと痛感。永井荷風の「断腸亭日乗」は好きな日記だが、何故この作品集に選ばれたのか分からない。世情に背を向け己の資質と感性に頑固に固執した姿勢は分かるが。小泉八雲の蝶の話は胡蝶の夢風で好きだが、なるほど耽美でもあったのだなと教えられたものだった。
些末な苦情を。作品によっては、意味も含め難しい漢字が使われてる。せめて振り仮名くらい欲しい。中には付されている作品も。何処かからの転載だろうが、編集に際しては、統一した基準で通してもらいたかった。細部に神経が行き届いていない。
本書を手にするなら、下記の編者による推薦の言葉を参照するのがいい:
← 揖斐 高 編訳『江戸漢詩選 (上)』( 岩波文庫)「江戸時代に花開いた日本の漢詩から三百二十首を選ぶ。小伝や丁寧な語注と共に編む決定版アンソロジー」
揖斐高 編訳の『江戸漢詩選 (上)』を読了。下巻のほうは先に読んだので、一か月余りを費やして、これで上下巻を通読したことになる。白文は眺めるだけで、読み下し文を眺めただけだが、それでも、結構楽しめた。関連しての呟きは随時、日記にメモってきた。
以下一部だけ抜粋する:
江戸漢詩の世界の広さを感じた。……多くは医師など知識人だとはいえ……江戸に息づく世界が身近に感じられた。我々のやや遠い先祖たちも人間だってことをつくづくしみじみと。 (06/09 01:28)
下巻には、女性漢詩人は一人くらいだった。それが、上巻では何人も。編集の結果か、江戸時代前半には女性漢詩人は珍しくなかったのか。 (06/08 01:40)
ペット(狆)を愛玩愛惜する漢詩に遭遇。初めて。最初で最後か。ペットを溺愛する心も、仁の学びの端緒じゃないかと開き直ってる。異色の漢詩だ。 (06/06 17:04)
江戸漢詩選を繙いて一ヶ月余りか。今週中には読了……いや通読終了の見込み。多くの儒者の漢詩。かなりの詩が志ならずの帰郷だったり、老残を嘆く心境を吐露する。
年齢を重ねるほどに風物を愛でる感性が極まる。風物など儚き存在への共感度も高まる。夕景や朝焼けの清しさ果てしのない郷愁の念。……だけれど……
大概の晩期の漢詩人は、陋屋に閉じ籠る。体がいうことを効かない。何より目が。文字がぼやけ、風景が滲む。美しいはずの夕景に霞みが。輪郭が二重になったり歪んだり揺れたり。感性自体が鈍くなる。嘗ての自分は何処へ消えた?
医師の家に生まれた儒者が多い。幕末は分からないが、江戸時代には医師の身分も世間的地位も高くなかった……裕福じゃなかった。が、素養はあった。漢詩で傑出して仕官したのか。(06/06 16:36)
下巻に半月、上巻にも半月以上を費やしてたった今読了……通読。読んだとは恥ずかしくて言えない。字面を眺めただけ。それでもそれなりに楽しめたのは、編訳者の揖斐氏のお陰。可能ならこの本を未読するため、講師について1年間習いたい。 (06/09 14:58)
残念だったのは、上下巻で150人が扱われてるのに、(ゆかりの人はともかく)富山生まれの漢詩人が一人もいなかったこと。感想めいたことは随時メモってきた。ちゃんとした感想など書けない。ただ、通読するだけでも十分楽しめるってこと。150人の漢詩人の人生の縮図を観たような。詩の力であり、編訳者の賜物だな。 (06/09 15:02)
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