ルシア・ベルリンも宮本輝も
← ルシア・ベルリン作『すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集』(岸本 佐知子訳 講談社) 「『掃除婦のための手引き書』の底本から、収録しきれなかった19編を収録」
昨日(日)から小泉 八雲著『日本瞥見記〈上〉』を。
今日(月)からは、今日買ってきた、野口 悠紀雄著の『円安が日本を滅ぼす-米韓台に学ぶ日本再生の道』を読み出した。「日本はいま先進国の地位を失う瀬戸際に立たされている。この間経済発展を遂げてきた米・韓・台との比較から、日本の問題を炙り出す。日本復活のための方途を具体的・包括的にに論じる」という内容。昨日の日記にも書いたが、現状の日本の惨状を憂えて読む。危機感を抱かないなんて嘘だと思う。
ルシア・ベルリン作『すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集』を12日(日)に読了。『掃除婦のための手引き書』も素晴らしかったが、本作品集も存分に楽しめた。訳の良さも預かって大きいのだろう。
「ベルリン( 1936年 – 2004年)は米国アラスカ州ジュノーで生まれ、幼少時は鉱山技師の父親の仕事のために各地を転居した。一家はアイダホ州、モンタナ州、アリゾナ州、そしてチリの鉱山キャンプで暮らし、ベルリンはそれらの地で青春時代を過ごした。成人してからはニューメキシコ州、メキシコ、カリフォルニア州、そしてコロラド州で暮らした」(Wikipedia参照)という。
何度かの結婚と離婚や職業体験も豊富だが、「ベルリンは脊柱側弯症などの病気に悩まされていた。彼女の曲がった背骨は肺の一つに穴を開け、1994年以降亡くなるまで酸素ボンベを手放せなかった。病状が進行したので彼女は退職し、後に肺がんを発症した。彼女は放射線治療に苦労し、それは骨をすり潰して粉々にされるようだと言っていた」(Wikipedia参照)とか。
優秀な教育者という評価はあったものの、作家としての評価は死後のこと。
小説を物語…ストーリー性に求めるなら、何処か行きあたりばったりとさえ思える展開は、天衣無縫で筋を追うのがバカバカしい。現実ってのは、思い通りにならないし、ならないながらもなぜか何とかなることもあるよと、開き直って、著者の手のひらで読者は踊らされるに任せるのがいい。やんちゃでドラマチックで、どんなところにも厄介な人がいれば、共感を持って寄り添ってくれるひともいる…。ひょんなことから思いがけず結びつくこともあるが、別れも突然過ぎて、風のまにまにと思うしかない。
「すべての月、すべての年」もいいが、「ミヒート」も素晴らしすぎて困る。ま、再読必至の一冊である。
← 宮本 輝 著『泥の河/螢川/道頓堀川』(ちくま文庫)「川を背景に独自の抒情を創出した宮本文学の原点三部作」
宮本 輝 作の『泥の河/螢川/道頓堀川』を13日(月)未明に読了。車中で読む本ではなかったのだが、自宅では江戸漢詩選を読んでいて、已む無く。
「泥の河」と「蛍川」は、少なくとも再読。特に「蛍川」は、郷里である富山市のそれなりに土地勘のある場所が舞台なので、親近感を持って読んだ。今回、仕事の合間に読んだが、実に味わい深いと再認識。「道頓堀川」は初読なのだが、派手な展開はないことはないのだが、それが本筋ではない。あくまで泥臭いまでの等身大の目線で描かれている。これらの作品群に描かれているのは、嘗てあった戦後間もない時期の(焼け跡闇市時代よりはあとか)帰らざる、古臭い表現をすればセピア色の世界とでも云うべきか。
内容は出版社によると、「よどんだ水に浮ぶ舟べりから少年は何を見たのか?幼い眼でとらえた人の世のはかなさを描く、処女作「泥の河」。北陸・富山に舞う幾万の螢を背景に、出会い、別れ、そして愛を濃密な情感と哀切な叙情にこめてとらえた「螢川」。ネオン彩る都会の一隅にくりひろげる父と子の愛憎劇を軸に、男たち女たちの人情の機微をからめた「道頓堀川」」とある。
「泥の河・蛍川」の文庫は蔵書にあるが、敢えて三部作として一気に読んでよかったと感じた。再認識させてもらった。
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