『心は孤独な狩人』に感激
← カーソン・マッカラーズ/著『心は孤独な狩人』(村上春樹/訳 新潮社)「1930年代末、アメリカ南部の町のカフェに聾唖の男が現れた。大不況、経済格差、黒人差別……。店に集う人々の苦しみを男は静かに聞き入れ、多感な少女を優しく包みこむ。だがその心は決して満たされない――」
カーソン・マッカラーズ/著『心は孤独な狩人』を25日夕方、読了。二週間近くを敢えて費やして読んできた。
昨日の日記に、「やはり、寝落ちした。目が覚めたのは夕刻の六時前か。日差しは翳りを帯びていた。それからマッカラーズの小説を読み始める。残り60頁余り。読み出したら止まらない。二度寝して少し頭が冴えたか。吾輩には珍しく、残りを一気読みした。素晴らしい小説。唖然とするほどに感動した」と書いた。
「フィッツジェラルドやサリンジャー(やチャンドラー、カポーティら)と並ぶ愛読書として、村上春樹がとっておきにしていた古典的名作」だとか。遠い昔、読んだことがあるが、全く印象に残っていない自分が情けない。
今回改めて読んでその素晴らしさに圧倒された。若干23歳の女性が書いたとは思えない筆力表現力洞察力観察力。
村上氏によると、全く出口なしの暗澹たる作品世界。だが、作者の際立つ感受性と想像力が読み手の心をつかんで離さない。第二次世界大戦の始まる直前のアメリカ南部が舞台。当然のように黒人差別が苛酷だった時代。
だが、作者は差別や経済的貧窮を描いている以上に、人間模様を過度に個別の人に感情移入することなく描き切っている。若い人間にできることとは思えない。吾輩ももっと早く再読しておけばよかったと後悔している。村上氏の訳の刊行がいいチャンスとなった。同氏に感謝したい。
← 廣瀬 敬著『地球の中身 何があるのか、何が起きているのか』(講談社ブルーバックス)
廣瀬 敬著『地球の中身 何があるのか、何が起きているのか』を22日読了。村上春樹訳のマッカラーズ作『心は孤独な狩人』と交互に読んできた。文学と地球科学との両極を行ったり来たり。
内容案内によると、「物理・化学・生物学を総動員し、地震波観測・理論的考察・高圧高温実験を組み合わせ、地球の中身とその歴史の謎を解く! ターゲットは地表から深さ6400キロの中心部まで、現代から46億年前の地球誕生まで。世界で初めてマントル最下部の主要鉱物(ポストペロフスカイト)を実験室でつくりだした著者が、地球科学の最前線へと誘う」というもの。
イーロン・マスクが火星着陸を目指すと宣言する今日だが、人類が地球に空けたもっとも深い穴は12㎞。地球半径の0.2%。火星より遥かに遠い。火星へは着陸できても、マントルの中を潜っていくなど、今世紀には無理だろう。
地球深部の資料というと、200㎞よりも深い領域にあった岩石すら採取されたことはない。その一方、科学者らは地震波の観測や、本来は入手し得ない地球深部の岩石や鉱物を人工的に作り出して性質を調べたりしている。
地球は、誕生プロセスとその後のおよそ45億年の進化の結果として存在している。脚下照顧ではないが、大地の下を知らなくていいはずがない! 分からないことが多いとはいえ、ここまで分かっているということだけでも素晴らしいと感じた。
参考に、【目次】を示しておく:
序章 地球の中に潜る前に
第1部 現在――地球は何でできているのか? どんな活動をしているのか?
第1章 地球を覆うもの――大気、海、地殻
第2章 地球の白身――マントルは何でできているのか?
第3章 地球の白身は動き回る――プレートテクトニクスとマントルの対流
第4章 地球の黄身――コアの構造と運動
第5章 白身と黄身が殻の外側を決める――地球の表層と内部の相互作用
第2部 過去――「生命の惑星」はどうやってできたのか? どのように進化してきたのか?
第6章 はじまり――地球誕生からマグマオーシャン、生命の誕生まで
第7章 進化――地球の過去を復元する
第8章 謎――地球はどうして生命を宿すことができたのか
← 石田梅岩 著『都鄙問答』(加藤周一 訳・解説 中公文庫) 「ウェーバー、ドラッカーよりも二百年早い経営哲学。生産と流通の社会的役割を評価し、利益追求の正当性を説いた商人道の名著」
石田梅岩 著の『都鄙問答』を23日読了。商人道の名著で起業家必読の書だという。仕事の合間に読む本ではないが、余儀なく。
内容案内には、「文字がなかった時代にも、天の道理があった。文字を知るのではなく「心」を知れ。商人出身の梅岩は、神道・仏道、孔孟老荘を独自に解釈し、倹約と倫理を重んじる商人道を説いた。その思想は制度や階層を超えて、やがては武士にも「心学」として受け入れられる。本書は問答形式をとっており、生産と流通の社会的役割を評価し、利益追求の正当性を説いた画期的な 思想を読み解くことができる」とある。
自分のような惰弱な、経営マインドどころか己さえ律することの叶わないものには耳の痛い話が続いた。本書は、かの加藤周一 氏の訳であり解説が付せられている。本書の意義は最後に解説を読んで初めて教えられた。
経営と云うと、合理化、それもサービス残業や人減らししか考えなくなった日本の経営者たちにこそ、今こそ読んで石田梅岩の爪の垢を煎じて飲んでもらいたいと切望する。
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