万葉集の中の無常観
下巻に収められている4160の短歌。大伴家持の作と思われる下記の歌。読み出して即、鴨長明の『方丈記』の冒頭の一節を連想した。無常観が何処か共通する:
4160 天地の遠き始めよ、世の中は常なきものと、語り継ぎながらへ来れ。天の原振り離け見れば、照る月も満(盈)ち欠けしけり。足引きの山の木末(こぬれ)も、春されば花咲き匂ひ、秋づけば露霜置きて、風雑り黄葉散りけり。うつそみもかくのみならし。紅の色もうつろひ、ぬば玉の黒髪変り、朝の笑み夕変らひ、吹く風の見えぬが如く、逝く水の止らぬ如く、常もなくうつろふ見れば、にわたづみ流るる涙止めかねつも
上掲は訓読みだが、「万葉集4160番の作者・分類|訓読・読み|意味・訳|原文 | 万葉集一覧データベース」より、かな読みを示す:
あめつちの|とほきはじめよ|よのなかは|つねなきものと|かたりつぎ|ながらへきたれ|あまのはら|ふりさけみれば|てるつきも|みちかけしけり|あしひきの|やまのこぬれも|はるされば|はなさきにほひ|あきづけば|つゆしもおひて|かぜまじり|もみちちりけり|うつせみも|かくのみならし|くれなゐの|いろもうつろひ|ぬばたまの|くろかみかはり|あさのゑみ|ゆふへかはらひ|ふくかぜの|みえぬがごとく|ゆくみづの|とまらぬごとく|つねもなく|うつろふみれば|にはたづみ|ながるるなみた|とどめかねつも
← 「家持越中巡行推定図」(高岡市万葉歴史館資料より)
鴨長明の『方丈記』の冒頭の一節
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。玉しきの都の中にむねをならべいらかをあらそへる、たかきいやしき人のすまひは、代々を經て盡きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり。
あるいは、平家物語の冒頭の一文。徒然草の一節『あだし野の露消ゆる時なく』を想ってしまう人もいるかもしれない。いかにも仏教的な無常観の系譜。中国に範をとり、朝鮮人に学んできた古代。山上憶良や大伴家持にして早くも日本的な色合いが濃厚に漂い出していたんだと、折口版万葉集を詠んで、今更ながらに再認識したものである。
← 棕梠。近所でも目立つけど、我が家には5本。以前から疑問に思っていたのだが、棕櫚はこんなヒョロヒョロしてるのに、風にも雪にも負けない。今冬も棕櫚は何度も豪雪に見舞われた。棕櫚が庭に在るのは、農家の名残り。シュロ縄などを作ったらしい。(03/16 15:17)
昨日、「棕櫚はこんなヒョロヒョロしてるのに、風にも雪にも負けない」のが不思議と書いた。同じ疑問を持つ方はやはり居るものだ。
「樹高5mほどの棕櫚の木を庭に植え、40年以上経っていますが、強風のとき大きく揺... - Yahoo!知恵袋」によると、こうした疑問に対し、以下のアンサーがあった:
ヤシ科の植物は八方に多数の根を深く張っており、幹は繊維質でしなりやすく折れにくくかなりの風が吹いても倒れたり折れたりする事はありません。気に成るのでしたら広がっている葉を切り落としておくと風の抵抗が少なくなり、揺れなくなります。全ての葉を切り落としてもシュロの葉は再生してきます。
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