読書は楽しみで
この数年の習慣だが、なかなか気軽に書店に行けないせいもあって、纏め買いになっている。近所の書店が次々となくなり、買い物帰りにブラッと書店に立ち寄り、何か気に入った一冊を買い求め、読むのを楽しみに家路を辿るなんて、昔の話になった。何か淋しい。
茶の間(居間)には、買い求めた本を保管する小さな書棚がある。食事などをする机から真正面。十数冊も未読本があると、読むことがプレッシャーになる。つい、冊数を重ねることになる。それは読書メーターで詳細な読書の記録が自動的に作られることとも無縁じゃない。読むジャンルなどは広がったのだが、読むことが重荷になっては話が逆だ。あくまで楽しみなのだから、あくまでマイペースを保つ。
← デイビッド・モントゴメリー[著]『土の文明史』(片岡夏実[訳] 築地書館)「ローマ帝国、マヤ文明を滅ぼし、米国、中国を衰退させる土の話」「古代文明から20世紀のアメリカまで、土から歴史を見ることで社会に大変動を引き起こす土と人類の関係を解き明かす」
デイビッド・モントゴメリー著の『土の文明史』を昨夕(土曜日)読了。368頁の単行本だが、内容の濃さもあって、頁以上の大作に感じた。折口版万葉集と併行して読んでいたこともあって、十日以上を費やした。せいぜい日に30から40頁。人類が嘗て行った土への蛮行に嘆息する日々となった。嘗てではなく、今も…現在進行形の愚かさ。食べること、目先の食糧確保が喫緊とはいえ、国や支配者や経営者の愚昧さにうんざりする。
デイビッド・モントゴメリーの著書は、『土と内臓』『土・牛・内臓』に次いで三冊目。これら二冊を読んでから、本書の存在を知ったので、読む(買う)順番は逆になった。
本書について書きたいことはあまりに多い。付箋が何枚も。
愚かしさを強調し過ぎたようだが、マロリーが見た一九二〇年代のある中国は違った。アメリカの農民が土をひたすらやせ衰えさせていくばかりだった一方で、中国の小作農が、「都市や町から出る下肥を畑に戻して、集約的に有機肥料を与えることが鍵のようだった。化学肥料が手に入らなかった中国の小農は、みずから土地を肥やしたのだ。(中略)土壌の養分は四〇世代以上にわたる農民とその畑の間で循環していた。」
前後の脈絡は書かないが、内容から察せられるだろう。「バイテク企業は農家が――大規模な農企業も時給農家も同じように――自社に特許権がある種子を買い続けねばならないように不稔化した作物を設計している。かつて先を見た農民はもっとよい種を翌年作付けするために取っておいた。今、それをすると訴えられるのだ。」
これも脈絡を略すが、「産業革命以降、大気中に蓄積した全二酸化炭素の三分の一は、化石燃料ではなく土壌有機物の分解に由来する。」
これは、本書が書かれた十年以上前の時点では仕方ないだろう。「マルクス主義経済もこの致命的な盲点を共有している。マルクスとエンゲルスは生産物の価値を、生産に投入された労働力に由来すると考えた。彼らにとって、資源を見つけ、取り出し、利用するために要求sされる労力の高低が資源の不足に由来する問題を説明するのである。プロレタリアートの進歩のために自然を利用することを目指す彼らは、社会が主要な資源を使い果たしてしまうかもしれないという考えを、用語集に書き込むことはなかった。それどころか、エンゲルスは土壌劣化の問題をひと言ではねつけた。「土地の生産性は、資本、労働力、科学の投入で無限に増大しうる。」」。
つまり、「事実上、経済理論は――資本主義もマルクス主義も――資源は無尽蔵であるか際限なく代替可能だと暗黙のうちに想定しているのだ。」
この辺りのことについては、『大洪水の前に:マルクスと惑星の物質代謝』(Νυξ叢書 堀之内出版)や、『人新世の「資本論」』 (集英社新書)、さらには『100分de名著 カール・マルクス『資本論』 2021年1月』などでの斎藤 幸平の指摘を厳しく受け止める必要があろう。彼の論を知ったら、モントゴメリーはどう反応するか知りたいところだ。
それにしても、本書にも訳者による後書きも解説もないのは、ちと不親切なのではないか。膨大な参考文献が載っている。当然ながら欧米のもの。だけど、中には邦訳されているものもあるのでは?
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