『カルロ・ロヴェッリの 科学とは何か』読了
← カルロ・ロヴェッリ著『カルロ・ロヴェッリの 科学とは何か』(栗原俊秀訳 河出書房新社) 「はじめに」が詳しい。
カルロ・ロヴェッリ著『カルロ・ロヴェッリの 科学とは何か』を昨夜半過ぎ、読了。昨日の夕方には読了できるはずだったが、午後の庭仕事を張り切り過ぎて、夕方からはグロッキー状態。僅かにブログ日記を書くだけで、夜半からはテレビを眺めつつ、ぼんやり過ごした。ひと眠りし、夜半を回ってようやく本が読めるかなと本を手にしたものの、あっさり寝落ち。トイレで二度ほど目覚め、ようやく起き上がれたのが、昼前。
やはり、今年初めての庭仕事はきつかった。しかも、やりすぎ。
今年に入ってからも、除雪はもちろん買い物から帰宅後、短時間の…それこそ庭を見て回る程度の作業はやったが、ウオーミングアップの程度にもならないもの。今年も週に二度ほどの庭仕事の日々が続くのか、それとも腰が赤信号を灯すのか。今日の仕事への影響が心配。
さて、本書は抜群に面白く、素晴らしい本だった。彼の翻訳本はこれまで『世界は「関係」でできている』や『時間は存在しない』など三冊読んできた。訳者あとがきによると、本書は一般向けのサイエンス本としては初期の本。後続の本が評判ということもあって、敢えて翻訳となったのだろう。
彼は、既刊本でデモクリトスを称揚していたが、本書でのアナクシマンドロスは、そのとば口となるもの。吾輩などは、解説を最後に読んだので、恥ずかしながら、これまでの論考の発展本かと勘違いして読んでいた。不明を恥じるが、それだけ優れた内容とも言える(よね)。
「あらゆる古代文明は、上にある空と、下にある大地が、世界を形づくっていると考えていた。大地の下には、大地が落下しないよう、また別の大地があるに違いない。あるいは、アジアの神話が伝えるように、象に乗った大きな亀が大地を支えているか、はたまた、聖書が語っているように、大地を支える巨大な柱が立ちならんでいるのだろう。(中略)今日まで痕跡を残している古代の社会はことごとく、こうした世界認識を共有していた。ただし、ひとつだけ例外がある。古代ギリシア文明。」
「大地が虚空に浮かんでいること、空が足の下にも広がっていることを、ギリシア人がそんなにも早い時代に把握できたのはなぜだろう? 誰が、どのようにして、それを理解したのだろうか?」「世界を知るための、この巨大な一歩を踏み出した人物こそ、本書で主役を務めるアナクシマンドロスである。」 ということで、本書はアナクシマンドロスを縦軸に、カルロ・ロヴェッリの 科学とは何かが探求されている。
本書の要諦は、以下にある:「古代世界の歴史を学び、自然にたいする(広い意味における)合理的思考の最初の歩みをたどりなおすことは、この思考様式の際立った特徴を浮かびあがらせることにつながる。アナクシマンドロスについて語ることは、アインシュタインによって端緒を開かれた科学革命がなにを意味するかを考えることでもある。」
が、さらに現代においても深甚に問題となっていることが本書での主題だろう。それは、「プリニウスの言葉にあるように、「自然への扉」を開けることによって、アナクシマンドロスは途方もない対立を引き起こすことになった。それはつまり、根本的に性質の異なるふたつの知の対立である。一方には、好奇心、「確かさ」への反抗心、すなわち「変化」に基礎を置いた世界についての新たな知があり、もう一方には、その時代において支配的で、もっぱら神話–宗教的な思想がある。後者は「確かさ」の存在に全面的に依拠しており、そうした性質があるがゆえに、いかなる疑義も受けつけようとしない。」
これはアメリカでの幾つかの州でのダーウィンの進化論の講義を学校で許さないとか、イタリアなどでの宗教界の復古的な動きに示されている。宗教的権威を是が非でも守ろうとする立場からは、科学的探究は今もって唾棄すべき在り方なのだ。リチャード・ドーキンスやダニエル・デネットらのそうしたキリスト教原理主義的立場との格闘はそうした一端だろう。日本では想像を絶する思想的格闘が展開されている。つまり、ロヴェッリの本書でのテーマは、科学者の単なる関心事に留まらないのだろう。
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