今夜も小雪の降りかかる
← 平井 美帆著『ソ連兵へ差し出された娘たち』(集英社)「作品は、共同体の「自己防衛」のために女性たちを「人柱」に捧げる「隠された暴力」の柔らかなシステムを浮かび上がらせている点で、極めて現代的な意義を有していると言える。 ――姜尚中氏(東京大学名誉教授)」
今日も買い物以外、外出せず。庭仕事もなし。睡眠や休憩以外、椅子に座って机に向かい植字やら読書やら。それにしても、家の中が寒い。玄関や廊下、脱衣所などが寒いのは仕方ないとして、茶の間の隣の台所も寒い。吐く息が白い。お茶や食事の用意で台所に立つにも気合が要る。
平井美帆著の『ソ連兵へ差し出された娘たち』を今朝未明に読了した。読むのがつらい本だった。読み辛いのではなく、内容の重さのゆえである。本ブログでも何度か呟いてきた。
「(前略)満州開拓団幹部らは駅に進駐していたソ連軍司令部に助けを求めたが、今度は下っ端のソ連兵が入れ替わるようにやってきては“女漁り”や略奪を繰り返すようになる。頭を悩ました団長たちが取った手段とは……」といった話だが、あとは察してもらいたい。日本の仲間たちを守るため、防波堤になってくれと、十代の後半、未婚の女性らがソ連兵に提供された。「接待」という名目である。共同体の仲間らとソ連兵らとの合意があったとしても、それは幹部の勝手な決定。少女らにすれば強姦以外の何物でもない。敗戦で日本の群ぐ官僚や兵隊はさっさと帰国するが、一般人は置き去り。一番ひどい目に遭ったのはシベリア抑留された人たちか、少女らか。しかも、帰国しても何の保証もない。あるのは、嘗ての共同体の仲間だったた村人、特に男たちからの冷たい視線。それどころか、折に触れ、「減るもんじゃなし」と迫られる。そういう奴らは、満州開拓の際、現地の中国人らを強姦している前歴があったりする。が、そんなことは口を閉ざして語らない。多くの似た経験のある日本兵と同様に。
← 雪解けの庭に……今夜も小雪の降りかかる……
このルポ…ドキュメントで当事者の(当時)少女らは、匿名で登場する。が、最後には実名でも構わないと。事実をありのままに伝えないと、自分らはただ犠牲にないr蔑まれただけに終わる。それでも、姓名の姓だけは結婚前の旧姓でと。結婚して子供も家族もいる。家族らには迷惑をかけるわけにいかない。性的犠牲、特に強姦となると、被害者であっても、世に訴えるのは極めて困難。女性が声を上げるのは、日本ではなおのこと。それでも、近年、ようやく変化の兆しは見えつつある。本書が脚光を浴びるのもその一端か。
前にも書いたが、「本書には、「善子(よしこ)」なる人物が扱われる。誰よりも多くの過大な犠牲を払い担った人。この方のことを知るためだけのために本書を読んでも余りある意義がある。こういう人が居たことに胸が熱くなる。決して有名人にはならないだろうが。」
← 『口訳万葉集 (上)』(折口 信夫 著 解説=持田叙子 岩波現代文庫 )「折口信夫は,『万葉集』の全体を当時の読者にも親しんで読めるようにした.さらに口述による現代語訳で古代の人々の思いが籠った歌を直に味わうという,画期的な試みをおこなった」
折口信夫による『口訳万葉集 (上)』を昨夜半というか、夜半過ぎに読み出した。
中西 進の「万葉集 全訳注原文付(全四巻)」(講談社文庫)を詠んでから何年になることやら。四半世紀は経ったか。大伴家持が越中に赴任してきたこともあり、富山県民は所縁を感じてる。但し赴任の地は、高岡市(伏木)である。富山県の西部。家持への思い入れも富山市など(東部)とは雲泥の差。(01/30 02:42)
毎年、万葉集の歌四千ほどを全て昼夜を分かたず詠いきるイベントが行われている。大人から学生まで それらしい恰好で。西部では、百人一首カルタ大会も熱心。片や我が富山市でそんな催しなど聞いたこともない。近年になって、家持を高岡(県西部)ではなく、富山県の数少ない有名人として利用しようとしている。(「「第41回高岡万葉まつり「第32回万葉集全20巻朗唱の会」」これが毎年10月に2日に渡って。昨年は中止だったか。」01/30 02:48)
解説の持田叙子によると、折口は、中学生の頃にはすべての歌をそらんじていたとか。解釈も持論がある。中西版を薬籠中でもないのに、癖の強そうな折口版に接するのは如何なものかと思わないでもないが、手にしてしまった以上は仕方ない。何とか最後まで食らいつきたい……楽しみたい。(01/30 03:02)
「万葉集に残された歌は全部で4516首。 このうち大伴家持が作者であるとわかっているものは473首。 そのうちの220余首がこの越中で詠まれているのです。 さらに、家持の部下たちが詠んだ歌や、この地に伝わる歌などを加えると、337首にものぼります。」(「越中万葉歌めぐり」より (01/30 14:05))
「家持の最大の業績は『万葉集』の編纂に加わり、全20巻のうち巻17~巻19に自身の歌日記を残したことでしょう。家持の歌は『万葉集』の全歌数4516首のうち473首を占め、万葉歌人中第一位です。しかも家持の『万葉集』で確認できる27年間の歌歴のうち、越中時代5年間の歌数が223首であるのに対し、それ以前の14年間は158首、以後の8年間は92首です。その関係で越中は、畿内に万葉故地となり、さらに越中万葉歌330首と越中国の歌4首、能登国の歌3首は、越中の古代を知るうえでのかけがえのない史料となっています」(「大伴家持と万葉集|高岡市万葉歴史館|大伴家持が来た越の国[富山県]」より(01/30 14:12))
余談だが、まだ冒頭の20頁ほどを詠んだだけだが、馴染みの歌が多いことに我ながら驚いている。20年余り前に読んだ時はどうだったろう。恐らく、「古事記」や「万葉集」を含め、古代史関連の本を読み齧って来て、少なくとも第一巻の初めのほうの歌は何度となく触れてきたからだろう。なんとなく嬉しい。
← ブライアン・グリーン著『時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙』(青木 薫訳 講談社)『エレガントな宇宙』著者の最新作。「なぜ物質が生まれ、生命が誕生し、私たちが存在するのか? 進化する宇宙は私たちをどこへ連れてゆくのか? ビッグバンから時空の終焉までを壮大なスケールで描き出す!」
ブライアン・グリーン著の『時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙』を読み始めて四日目。読了までにあと一週間を要するか。じっくり楽しんでいる。
「時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙」にて多くの文献が言及参照されている。その中には全く未知のものが多いのは当然として、読んだことのある本も。既読のポピュラーサイエンス本がグリーンに言及されていると、今も読むに値するのかとか、批判はあっても採り上げるに値するのかとか、ちょっと嬉しい気持ちになる。
今日の件でも、スタニスラス・ドゥアンヌ著の『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』やダニエル・C. デネット著の『解明される意識』、アンリ・エレンベルガー著『無意識の発見 上 - 力動精神医学発達史』などが参照されていた。
意識…心…心身問題は、まさに科学者に限らず、デカルトなどの近代、あるいはアウグスティヌスの古代より意識…心と身体との関係は謎であり、問われてきた。いよいよ科学の俎上になるのか。
スタニスラス・ドゥアンヌ著の『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』は吾輩には手強かった。感想や評価は我輩には難しい。印象的だったくだりだけメモ:「ハードプロブレムがむずかしく思えるのは、不明瞭な直観が関与しているからだ。認知神経科学とコンピューター・シミュレーションによって私たちの直観がひとたび訓練されれば、チャーマーズの言うハードプロブレムは消えてなくなるだろう。いかなる情報処理の役割からも切り離された純粋な心的経験としてのクオリアという仮説的な概念は、十九世紀の生気論のごとく前科学時代の奇妙な考えと見なされるようになるだろう」(p.362)。
「意識」が科学の対象になってきたらしい。嘗ては第一線を退いた大家だからこそ許された私的研究と、見て見ぬふりをされていたものだが……。(01/30 18:12)
ダニエル・C. デネット著の『解明される意識』は、「先端諸科学の成果を背景に、ヘテロ現象学、意識の多元的草稿論、自己および世界についてのヴァーチャル・リアリティー論など、新しい哲学的見取図を提示し、意識の生成・進化・展開の解釈に画期的地平を拓く。認知科学の最新の成果を結集。」というもの。悲しいかな本書は生活の困窮と引っ越し代の捻出のため、2008年初に所蔵していた大半の本共々売却した。改めて買うか、改めて読むか、迷う。(01/30 18:52)
上記二冊は既読だが、最後のアンリ・エレンベルガー著の『無意識の発見 上 - 力動精神医学発達史』は未読。フロイトが見出したとされる無意識は、実はすでに発見されていたという話で参照されていた。高そうだし、古い本。普通の書店では入手は困難か。評判はよさそうなのだが。
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