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2021/09/29

庭に人影だけはない

Mori ← ピエール・ルメートル作『僕が死んだあの森』( 橘明美訳 文藝春秋)「『その女アレックス』で世界中を驚愕させた鬼才ルメートル、まさに極上の心理サスペンス。」

 ピエール・ルメートル作の『僕が死んだあの森』を読了。「『その女アレックス』で世界中を驚愕させた鬼才ルメートル、まさに極上の心理サスペンス」という出版社の案内に偽りはなかった。原題は、「Trois jours et une vie」。訳者によれば、「三日と、一つの人生」。ニュアンスは、「一つの人生と引き換えになった三日間」、乃至は「あの三日間の代償となった人生」になる……とか。

 ことの発端は、「母とともに小さな村に暮らす十二歳の少年アントワーヌは、隣家の六歳の男の子を殺した。森の中にアントワーヌが作ったツリーハウスの下で。殺すつもりなんてなかった。いつも一緒に遊んでいた犬が死んでしまったことと、心の中に積み重なってきた孤独と失望とが、一瞬の激情になっただけだった。でも幼い子供は死んでしまった。」この前後の三日が主人公の人生を決定する。ネタバレ? 物語の展開はドキドキハラハラの連続で、行き詰る描写が続く。そして最後は…まさに想像を絶する。基本、残酷な描写はない。それでもここまでの心理サスペンスを描けるってことをルメートルは証明してみせた。

Kama ← 昨日朝、燃えるゴミを出しに行ったら、カマキリに遭遇。でっかい。ついでながら、昨日 庭で見かけた生き物たち。カマキリにチョウにコオロギにホタルガに……あとクモ。あ、あと、カ。昨日、内庭に突如出現した謎のキノコも生き物だよね。ただ……人間だけは見掛けない。

  今日は休み。前回買いだめした本はほぼ読了したので、晴れていたし、自転車を駆って町中の書店へ。明日は仕事なので、庭仕事はパス。
 例によってスマホを使って読みたい登録してある本を書店のパソコンで検索。やはり出版してほんの数年も経った本でも在庫が無くなっていた。驚いたことに、最近(でもないか)話題になっている、ミア・カンキマキ 著の『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』(末延 弘子訳 草思社)が在庫切れになっていたこと。「遠い平安朝に生きた憧れの女性「セイ」を追いかけて、ヘルシンキから京都、ロンドン、プーケットを旅する長編エッセイ」って内容。え、まさか、だった。さすがに注文すれば届くようだけど。
「源氏物語 A・ウェイリー版」も、第3巻と第4巻はあったが、第2巻店舗在庫がなく、注文。まさか、高価な単行本は、買うほどの人は買っただろうし、近々、文庫版が出る、なんてことはないよね! さて、第2巻が届くまでは、中西 進著の『源氏物語と白楽天』(岩波書店)でお勉強だ。紙袋に本を詰めてもらって、地下の食堂街へ。お好みの和菓子を買うため。さらに帰途、吉野家さんで牛丼の大を買った。牛肉を食べるのは、こういう機会しかないのだ。

 

Sannin ← リサ・タッデオ著『三人の女たちの抗えない欲望』(池田 真紀子 早川書房)「高校時代に恋愛関係だった教師に裏切られたマギー、夫の望み通りに、夫婦以外を交えた性生活を送っていたスローン、夫との別居を決意したところで高校時代の恋人に再会したリナ。3人の女性たちの欲望と、抑圧からくる苦悩を丹念に取材したノンフィクション。」

 リサ・タッデオ作の『三人の女たちの抗えない欲望』を読了した。
 著者は、米ニュージャージー州出身の作家・ジャーナリスト。本作については、「八年越しの取材で女性のリアルを描き出し、各紙誌の絶賛を浴びたノンフィクション…ルポルタージュ」とも。3人の女性たちのリアルが交互に螺旋を描くように断片的に描かれていく。それぞれに何処にでも居そうな、しかし現実には同じ人生などありえない生活が描かれ、ドンドン展開していくので、前の話との繋がりが見えず戸惑うことも(これは自分が最初は日に数十頁ずつ読んでいたせいもある)。段々、個々の女性と馴染みになっていくうちに、他人からは碌でもない、あるいはアブノーマルな生活を送っているようで、彼女たちなりの流れがあったのだと、共感とまではいかなくともかばってやりたくもなる。男もだが、女も肉体を抱え、社会的制約や女はかくあれかしという桎梏、しかも肉体のピーク時は短いというプレッシャーもあって、貴重な時間が指の隙間を零れ落ちる砂のように容赦なく潰え去っていく。愛も恋も望みも今、なのだ。が、そうはいかない現実との相克。本作は読み手を選ぶ。普通で十分と思う人には眉を顰めるばかりの世界だろう。

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