膝栗毛とウェイリー版源氏を往還
← 『源氏物語 A・ウェイリー版第1巻』(著者:紫式部 英訳:アーサー・ウェイリー 日本語訳:毬矢まりえ+森山恵姉妹訳 左右社)「光源氏が「ゲンジ」「シャイニング・プリンス」とカタカナ表記される、ちょっと不思議な世界」「ヴィクトリアン・GENJI」「光り輝く美貌の皇子シャイニング・プリンス、ゲンジ。 日本の誇る古典のなかの古典、源氏物語が英訳され、ふたたび現代語に訳し戻されたとき、 男も女も夢中にさせる壮大なストーリーのすべてのキャラクターが輝きだした」
今日は休み。秋晴れ。ツーリング日和。が、生憎、バイクは不調のまま。とりあえず車検は通すが、その先はどうするか半年以上、迷ってきた。そろそろ決断の時が近づいている。
午後四時半から庭仕事。畑の落ち葉拾いや防草シートの補修。ついで隣家との間の通路の植木の剪定。脚立に登って柘植などの伸びきった枝葉を刈り落した。六時半近くまで作業。その後、シャワーを浴び、ついで体の垢を手のひらで擦ってボロボロ落とした。なんとなく気持ちいい。
彼岸……我が家の庭には、雑多な植物(雑草)が勝手に生えている。が、何故か彼岸花……曼珠沙華は見当たらない。隣家など近所には当たり前に見付かるのに。いつか我が家に彼岸花が悲願、だけど悲観的。
自民党の総裁選が始まった。四人の候補が。岸田候補、河野候補がいいかなと思っていたが、あからさまにアベ一派に引き摺られ、タカ派路線にすり寄っている。その点、野田候補は筋が通っている。選ばれるのは難しいだろうが、嘗ての保守本流の候補は野田候補だけなのが淋しい。
日本の古典を会社で一つ、自宅でも一つ、読んでいる。会社では十返舎 一九作の「東海道中膝栗毛 」、自宅ではウェイリー版の「源氏物語」である。膝栗毛は下巻へ。ウェイリー版源氏は第一巻を読んだところ。
どちらも物語の中に折々歌が読み込まれている。一方は狂歌、他方は式部の和歌。日本文学の古典といいつつ、あまりに違う世界を往還している。
昨日のブログ日記にも書いたけど、源氏物語の世界は色に例えたら紫と思う。1925年から徐々にイギリスに姿を現していった、ウェイリー版源氏物語。ヴィクトリア朝時代の桎梏からの脱却を苦闘していた詩人らに衝撃を与えた。T・S・エリオットやW・B・イェイツらとの交流のあったウェイリー。当時の評論家らは作者のムラサキをプルースト、ジェーン・オースティン、ボッカッチョ、ジェイクスピアになぞらえたり。ムラサキとウェイリーとの合作と言っていい本作は、ヴァージニア・ウルフにも衝撃を与えた。英訳された源氏物語を訳者らは日本語へ訳した。百年前のヨーロッパ文化を潜り抜けた『源氏』を現代日本に蘇らせる。再創造の試み。我輩は与謝野晶子版源氏しか知らない。結構苦労して読み通したが、分かったようで分からない。和歌がまるで訳されていないのは別としても、主語述語が吾輩の頭の中ではっきりしない。それが、この翻訳では(あるいはウェイリー訳では)明確になっている。これだったら英語版で読んでも理解できるかもしれない。とにかく、理解できる。ほんの上っ面だろうが、それでも源氏物語の一端くらいには触れた気になれた。この版を読み通したら改めて、日本の誰かの既訳を読んでみたいと思う。そんな闘志を掻き立ててくれただけでも稀有な体験になりそう。登場人物の名前がカタカナだとか、ズボンとかスカーフ、カーテン、リュート、ロングドレス、パレード、フルートなどの表記には最後まで違和感が残った。
念願の、噂の『源氏物語 A・ウェイリー版第1巻』を昨日より読み始めた。「光源氏が「ゲンジ」「シャイニング・プリンス」とカタカナ表記される、ちょっと不思議な世界」である。日本の平安時代の宮小人の物語のはずなのに、アラビアンライトを読んでいるような不思議な感覚に戸惑っている。
以下、各帖を読むたび、読書メーターにメモしていった:
「桐壺」読了。語彙に違和感はあるものの、読みやすい。我輩にも理解できる。与謝野晶子版とは大違い。
「帚木」読了。凄い話だ。結末もドラマチック。ある性癖の者には身に覚えのありそうな。
「空蝉」読了。ゲンジが羨ましいな!って思っちゃいけない? 硯をインクポットとは!
「夕顔」ドラマチック。夕顔も哀れだけど、間違って睦んでしまった相手は何なのか。だが、ゲンジはそんな時も、貴女に逢いたくてと言い繕って。学ぶべきか。いや、そんな機会はあり得ないのだが。……本書を読んで初めて情況を理解できた。分かったからどうだとも云えないが。
「若紫」の帖 読了。少女を拉致監禁。ゲンジなればこそ 罷り通る?
「末摘花」の帖 読了。味わい深い……深すぎる。ゲンジの気紛れ?優しさ?は末摘花に光をもたらした? 翳りを手放すわけにいかない光を……
「紅葉賀」の帖 読了。不義の子が生まれ、ますますゲンジに似てくる。その義母が皇后に。叶わぬ想いは拐かしてきたムラサキに向かう。
「花の宴」の帖 読了。高貴なるお姫様と仮初めの宴……が……
「葵」の帖 読了。一層 罪深き人に。が、愛欲の我執は罪と罰をも踏み越えて……拐かしてきた少女……叶わぬ方の面影の濃厚な幼女を頃合いとばかり凌辱する。ゲンジには蜜より甘い味か。
「賢木」の帖 読了。この世を我が世とばかりに生きてきたゲンジが様々な方との別れに見舞われ、約束されていた権勢も失い、いよいよ土壇場に追い込まれる。
ゲンジ ますます愛欲の深みにはまっていく。けれど、式部の手は緩むことはない。今でさえ二進も三進も行きそうにないのに、この先 式部はどう描く? やはり、式部は凄い。
「花散里」の帖 読了。なんとまあ沁々 けど呆気ない逢瀬。
「須磨」の帖 読了。新しい天皇の母に憎まれ(るようなことを仕出かした)、都に居ては危うい身となったゲンジ。遠く須磨へ自ら隠棲する。漁村の貧相な館で待つ生活は嘆きばかり……なのかな
「須磨」の帖から、本巻の最後の帖「明石」へ。須磨の仮の館は猛烈な嵐に見舞われ、棲むのも難儀に。何とか嵐を生き延びると、ゲンジは父である故・天皇の夢を見る。折しも明石の入道も夢を見、それをお告げと受け止め、嵐の海を突いてゲンジの元へ。どうぞ明石へ。
「明石」の帖 読了。これで、第一巻読了。明石の入道や姫様 哀れ。ようやく念願叶ったが、追放されていたゲンジは都へ戻るのだ。耀けるゲンジに鄙の娘の居る隙はない。姫も宿った子も棄ててゲンジは去る。優しい言葉や歌を残して。慰めの見え透いていることは誰よりゲンジが分かっている。
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