昔話の深層 白雪姫じゃなく雪白娘かも
← 『完訳グリム童話集 1』(金田鬼一訳 岩波文庫)「比較言語学・説話学の分野に偉大な足跡しるすグリム兄弟が,ドイツ各地で口から耳へと伝えられた昔話の数々をあまねく採録.児童文学の一大宝庫であり,民間伝承研究に不可欠の文献である。」
『完訳グリム童話集 1』の中の白雪姫が、出てくる。読書メーターで、「白雪姫の通称で名高いが、訳者によると、「雪白姫」が正しいのだとか。」と呟いた。
日本語訳の文を抜粋してみる:
昔、真冬に、雪が羽のようにチラチラと空から降っているとき、窓のところでお后が縫物をしていました。窓枠は黒檀でできており、縫物をして窓から雪を見ている間に、お后は針で指を刺してしまい、3滴の血が雪の上に落ちました。その赤は白い雪の上できれいに見え、お后は「雪のように白く、血のように赤く、窓枠の木のように黒い子供が欲しいわ…」と思いました。
その後まもなくお后は女の子を産みました。その子は雪のように白く、血のように赤く、髪は黒檀のように黒かったので、白雪姫と呼ばれました。子供が生まれたとき、お后は亡くなりました。
英語訳だと、Snow-white (英語)。ドイツ語原文(低地ドイツ語)だと、Schneewittchen。
雪白だと「ゆきしろ」もだけど、「せっぱく」とも読める。どうしたって「ゆきしろ」という読み方に違和感があって、文脈では……切迫した際は ありかなと。事例はやはりあるんですね。「しらゆき」……「しらゆり」なる花の語感に慣れ親しんできたからか やはり馴染む。
雪姫 白姫 蒼白姫 潔白姫 羽二重姫 雪国姫 ミルク(母乳)姫 白鳥姫 白壁姫 白墨姫 白子姫 白蝋姫 晒し姫 まだまだ訳語の候補がありそう……ってのは、却下。
白塗姫や厚塗り姫はあからさまなので、ドーラン姫がいいかな。漂白姫は? 白蝋姫が好きだな。そもそも雪は白いんだから、雪白にしろ白雪にしろ言葉(漢字)の無駄遣い。雪姫か雪女で十分かも。
やはり白雪は変。白い雪って、雪は白いもの。赤かったら驚き。雪白なら、雪のような白で筋が通る。って拘る奴は嫌われますね。
多少のダブリは気にせず……和紙娘 真珠姫 白堊姫 漆喰姫 豆腐姫 白髪染め姫 白昼姫 白寿姫 シラケ姫 白貂(てん)娘
その後も仕事の合間に、自宅で暇の徒然に女性の肌の白さの表現を探したり考えたりした:
塩田娘 白癬菌娘 砂糖娘 白磁娘 鍾乳石娘 象牙娘 プラチナ(白金)娘 漆喰娘 豆腐娘 白亜娘 白亜娘 真珠娘
← 『完訳グリム童話集 2』(金田鬼一訳 岩波文庫)「比較言語学・説話学の分野に偉大な足跡しるすグリム兄弟が,ドイツ各地で口から耳へと伝えられた昔話の数々をあまねく採録.児童文学の一大宝庫であり,民間伝承研究に不可欠の文献である.名訳をもって知られるこの金田訳は,一八五七年刊の原著決定版から削除された昔話をも数多く収録する」
『完訳グリム童話集 2』を本夕(五日の夕方)読了。過日、本グリム童話集全五巻を十数年前読了していたことに気づいたと書いた。今回は、この第二巻で止めておく。面白さは楽しめた。王さま、王子さま、王女さま、悪魔、意地悪か姑息というか、現実的な兄乃至姉二人と、どんくさい末弟か末妹という、三人の息子(娘)たちという登場人物。娘は誰も観たことのない美しさ。美人か金持ちか、魔力的能力(才能)を持つ人物でないと話の俎上に上らない。王さまは娘の意志を確かめることなく、自分の決めたところに嫁がせる。深い森にすむ動物たちは不思議な力を持つ。森の案内者でもある。擬人化された森の動物たち。動物に限らず家や木も不思議な力を持つ。
「グリム童話 - Wikipedia」によると、「『グリム童話集』は、ヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟が編纂したドイツのメルヒェン(昔話)集である。メルヒェンとは「昔話」を意味するドイツ語で、グリム兄弟はメルヒェンを収集したのであり、創作した(創作童話)のではない。正式なタイトルは『子どもと家庭のメルヒェン集』」
自然を土台とした物語集というイメージがあるが、実際は「兄弟の聞き取りの取材源のほとんどが都市富裕市民の家庭であり、その中にはフランスなどをルーツとする人物が少なからず含まれていたのである」という。「グリム兄弟は(一般に信じられていたように)農村を歩き回って民衆から話を聞き取ったりはせず、中流以上の裕福で教養ある若い女性に自分のところまで来てもらって話の提供を受けていた」という。但し、「読み書きができ、話もうまいこれら上流階級の女性は下層階級(下僕や女中など)から聞いた話を仲介する役割も担って」いたと理解すべきだろう。
← 河合 隼雄【著】『昔話の深層―ユング心理学とグリム童話』(講談社) 吾輩が読んだのは、これより古い版だったはず。
グリム童話に限らず昔話の深層は探求に値する豊かな世界だと感じる。学生時代だったか、一時期ユング心理学に浸り、当然ながら、河合 隼雄氏の著作に親しんだ。その一冊に『昔話の深層』がある。久しぶりに読み返したくなった。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 第三の鮮度保持技術「ZEROCO」に刮目(2025.03.24)
- 終日家に籠っていた(2025.03.21)
- 焚き火代わりの柴ストーブ(2025.03.20)
- 木乃伊は見知らぬ世界を彷徨う(2025.03.19)
- 自分は観客ですらない(2025.03.17)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 第三の鮮度保持技術「ZEROCO」に刮目(2025.03.24)
- 終日家に籠っていた(2025.03.21)
- 焚き火代わりの柴ストーブ(2025.03.20)
- 木乃伊は見知らぬ世界を彷徨う(2025.03.19)
- 自分は観客ですらない(2025.03.17)
「書評エッセイ」カテゴリの記事
- 終日家に籠っていた(2025.03.21)
- 焚き火代わりの柴ストーブ(2025.03.20)
- 木乃伊は見知らぬ世界を彷徨う(2025.03.19)
- 自分は観客ですらない(2025.03.17)
- 確定申告に翻弄された(2025.03.16)
「恋愛・心と体」カテゴリの記事
- 第三の鮮度保持技術「ZEROCO」に刮目(2025.03.24)
- 終日家に籠っていた(2025.03.21)
- 焚き火代わりの柴ストーブ(2025.03.20)
- 木乃伊は見知らぬ世界を彷徨う(2025.03.19)
- 自分は観客ですらない(2025.03.17)
「読書メーター」カテゴリの記事
- 第三の鮮度保持技術「ZEROCO」に刮目(2025.03.24)
- 終日家に籠っていた(2025.03.21)
- 焚き火代わりの柴ストーブ(2025.03.20)
- 木乃伊は見知らぬ世界を彷徨う(2025.03.19)
- 確定申告に翻弄された(2025.03.16)
コメント