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2021/05/24

ブロワを買った

Saterday ← イアン・マキューアン/著『土曜日』(小山太一/訳 新潮クレストブックス)「突発的なテロ、見知らぬ若者の激発、親友との仲違い。なにが起こっても起こらなくとも不思議ではないその日、ヘンリーの周囲は危機の予兆に満ちていた。そう、世界はあの日以来変容してしまったから――。果たして安息の日曜日は訪れるのか。名匠が優美極まる手つきで鮮やかに切り取る現代ロンドンの一日」

 

 今月26日(水) スーパームーンで皆既月食
 逃げ出したヘビ。灯台もと暗し。……頭上はもっと暗かった。ま、結果オーライ。
 久しぶりにツバメ……そして巣を見た。あんなところに。民家の敷地なので、撮影できず。昔は、我が家にも。なんと、玄関の中に。
 思い立って、コメリへ。ブロアを買いに。店を出る頃に雨が降り出し、さすがに今日は早速の使用とはいかなかった。

 

 イアン・マキューアン作の『土曜日』を読了した。
 イギリスのある優れた脳神経外科医の2003年2月15日 土曜日一日の物語。2001年9月11日の同時多発テロの余韻が熱い頃。アメリカのペンタゴンやCIAなどに奇妙なタカ派シフトが誕生していた。アルカイダをラディンをイランをフセインを倒さないとならないという、狂おしい熱の高まり。今日では、多発テロが先かアメリカの狂気の発作が先かの解明は歴史家の仕事に委ねられてしまっている。だが、2003年はまだ発作は高まるばかりの時期。アメリカは必死になってイラクのフセイン政権打倒の世論を世界に巻き起こそうとしていた。日本(小泉政権)はイラク侵略戦争にあっさり合意した。イギリスも世論も政権も揺れていた。大量破壊兵器がイラクにあるというデッチ上げを仕立てでもアメリカはやるきである。2月のある日、主人公が未明に目覚め窓の外を眺めると、旅客機が不穏な飛行をしているのを目撃する。まさかこのイギリスでもテロが?!
 長い物語、長い一日はここから始まる。主人公は勤め先の病院へいそごうとして、ある接触事故に見舞われる。相手側のミラーが破損。トラブル。喧嘩。その相手がまずかった。彼は仲間を連れて主人公の家を襲うのだ。……と書いていくと先が長くなる。
 長い一日を濃厚に描くというと、ジョイスを連想しそうだが、幾つか積み重ねられる、事故や手術、家族間の煩悶など個々の場面はいかにもマキューアンらしくリアルでありじっくり読ませ読者を飽きさせない。脳の外科手術の場面など圧巻である。
 一日を描ききることで何が浮かび上がるのか。国家の戦争へ傾斜する狂気の世相と、平和なはずの家庭への野蛮な侵入者がもたらす突然の家庭の崩壊の危機か……。どうやらそれも違いそうだ。判断は読者が決めるしかないのだろう。

 

Life_20210524204001 ← ポール・ナース 著『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』(竹内 薫 訳 ダイヤモンド社)「生きているっていったいどういうことだろう?ノーベル生理学・医学賞を受賞した生物学者ポール・ナースが「生命とは何か?」という大いなる謎に迫る。「細胞」「遺伝子」「自然淘汰による進化」「化学としての生命」「情報としての生命」の生物学の5つの重要な考え方をとりあげながら、生命の仕組みをやさしく解き明かす」

 

 ポール・ナース 著の『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』を読了した。
 著者はノーベル生理学・医学賞受賞者。初の著作。シュレディンガーの高名な書にちなんだ題名。本書の扉に、父や孫たち、惑星の「生命」を気にかける必要がある若い世代に贈る とある。我輩のようなロートルには用がない? なんて僻みはさておいて、子供たちに語りかける優しく分かりやすい口調。父は便利屋と運転手、母は料理人で、しかもフランス語の試験に五回も落第し大学に入学できず……子供時代はイギリスの片田舎で育ち、長時間の通学の途中、寄り道しつつ生き物に親しんだ……そういった背景がある。
 内容は平易だが、本格的。細胞、遺伝子、自然淘汰による進化、化学としての生命、情報としての生命などの視点から生命とは何かを解き明かす。内容は深くメッセージ性が強い。生命はこの宇宙で地球だけで花開いた確率は低い。ただ、地球上のあらゆる生命体は遠い昔、「たった一回」だけ発生し生き延びてきた。つまり、人間も微生物たちも仲間であり家族。そんな中 人間は、生物同士の「深い絆を理解し、その意味に思いを馳せることができる、唯一の生命体」。
 われわれは、「地球の生命に対して、特別な責任を負っている」。科学者の知見のみならず、文系理系に共通した想像力と創造力を総動員する必要がある。DNAなど生命の成り立ちに関心のある、でも必ずしも科学には馴染めていない方にもお勧め。

 

Brower ← ブロアーを買ってきた。「リョービ(RYOBI) ブロワバキューム RESV-1000

 落ち葉掃除用。庭仕事で落ち葉掃除は当たり前に。普通は竹箒を使う。これで十分。が、困るのは苔の庭。松からの(お菓子の柿の種に似た)朱色の花粉や松葉が手間取る。箒で掃くと苔を傷める。仕方なく手……指で気長に拾ってる。段々億劫になってきた。余談だが、家の中は掃除しないのに、庭は綺麗にするのねって、突っ込みはなしにね。

 

 この一週間で二冊読了した一方、新たに二冊読み出している。一冊は、「主人公のオーランドーは16世紀のイギリスに16歳の少年として登場し、17世紀に性転換、1928年においてなお36歳である。「時」の限界と「性」の境界を超えて、多様な「読み」を誘発するメタバイオグラフィ」という、V.ウルフ 著の『オーランドー』(杉山洋子 訳 国書刊行会)と、「かつて大学講師であった著者は失われた記憶を求め、心を閉ざす息子とともに大陸横断の旅へと繰り出す。(中略)彼が探求していた“クオリティ”の核心へと近づいていく。だが辿り着いた記憶の深淵で彼を待っていたのはあまりにも残酷な真実だった…。知性の鋭さゆえに胸をえぐられる魂の物語」という、ロバート・M.パーシグ著の『禅とオートバイ修理技術〈上〉』(五十嵐 美克【訳】ハヤカワ文庫)
 さらに、ロブ・ダン 著『家は生態系 あなたは20万種の生き物と暮らしている』(今西康子 訳 白揚社)も読み出した。本書は、「生態学者の著者が家の中を調べると、そこには20万種を超す多種多様な生き物がすみつき、複雑な生態系をつくりあげていた」というもの。
 既に、「『新しい宇宙創造説』、『ロビンソン物語』、『誤謬としての文化』など、<存在しない書物>をユーモラスに読み解く究極の書評集」という、スタニスワフ・レム 著の『完全な真空』 (沼野充義 /工藤幸雄/長谷見一雄 (訳) 河出文庫)も読み出している。なかなか稀有な手強い本。いずれの本もだが、楽しまないと読み続けられないかも。

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