「明暗」から「ヴィレット」へ
← シャーロット・ブロンテ 著『ヴィレット(上)』(青山誠子 訳 白水Uブックス) 「 異国の街で寄宿学校の教師として生きる英国女性の内面を描き、『ジェイン・エア』以上に円熟した傑作と称されるブロンテ文学の到達点」
シャーロット・ブロンテ 作の『ヴィレット(上)』を読み始めた。
本書は1995年にみすず書房から出ていたもの。2019年に白水Uブックス入り。全くノーマークだった。
若くして書いた「ジェイン・エア」とは、うってかわって、ソフトな出だし。個性(感性)の鋭く強烈な女の子(6歳)が物語の焦点。冒頭の数十頁を適当に編集して短編作品として刊行しても売れそう。「ヴィレット」は、「ジェイン・エア」の僅か6年後の作品だけど、格段の熟成を感じる。本書の刊行の2年後に四十才になることなく亡くなった。天才過ぎる。
ソフトな始まりと書いたが、嵐の前の何とやらかもしれない。俗な表現をすると、始めちょろちょろ中ぱっぱかもしれない。今後の展開が楽しみなような怖いような。
← 昨夜のうちに降り出すかと思っていた雪、今朝はうっすら。薄化粧程度なら可愛い。日中も数センチ積もっただけ。が、宵闇が迫り気温が下がると一気に降り積もってきた。やはり、積もる!
本書には注釈が皆無(かほぼない)。1995年に最初に翻訳が出されたらしいが、その時点では付されていた? 主人公がボートで本船に乗り込む際、チップ(あるいは渡船料)に、シリング貨幣でいいのをクラウン貨幣で払って(事情……相場を知る人に)嗤われている。この辺りの事情は注釈すべきだろう。
訳者によると、「ジェイン・エア」は、ジェインの自立と愛の成就の物語として若い人々にアッピールしたという。え? そうなの? 我輩は「ジェイン・エア」は三回は読んだけど、そういう物語として認識したことは全くない。ひたすら心理描写……人間観察の見事さ……文章表現の見事さに圧倒されてきた。愛が成就したなんて気付かなかった。我輩が迂闊なだけか。それじゃ、ありがちな少女小説に過ぎないじゃないか…ってのは、頓珍漢かな。
← 『夏目漱石全集〈13〉 』(角川書店(1974年))
「明暗」「断片」「同時代人の批評」「解説:吉田精一」「作品論:小島信夫」「注釈:吉田精一」さすがに他の巻より厚いためか、書簡や日記は所収となっていない。他巻より不便だな。
『夏目漱石全集〈13〉 』(角川版)を読了した。これで、古本市で買った全集は、最初から欠品だった11巻を除き、全部読んだことになる。コロナ禍だからこそ昨年の七月から読み始めたのだが、コロナ禍がこんなにも長引くとは夢にも思っていなかった(だから、ここまで読んでこれるとは想定外だった)。
このコロナ禍でトルストイの「戦争と平和」を再読し、ナボコフの文学講義を四冊読み、ラフカディオ・ハーンの著作集(欧米の文学講義を中心)を数冊読みと、大作や手付かずの全集を読んだり、ナボコフの講義を再読したりなど、それなりに有意義に過ごしたとは言える。
さて、「明暗」を読むのは、三度目か。吾輩は漱石の中で本書が一番好き…だった。最初から魅せられた。が、今回読み返して、若いころの自分が本書を読解できたのか疑問に感じた。が、同時に人間(主に夫婦や親族間)の心理をどんどん抉っていくその鋭さは夫婦の機微など知る由もない若造でも鬼気迫るものを感じたろうとは分からなくもない。重い胃の病に苦しみながら、漱石山房で弟子らと対峙し、書簡で率直極まる書簡を書き送り、講演会の場に立ち…と、その文学活動は目を瞠るものがある。
たまたま平野氏の「マチネの終わりに」と平行して読んでいた。漱石作品の大半を読んで感じたのは、漱石の主人公の心理や過去をギリギリ抉っていく凄み。並み大抵じゃない。胃病を抱えながらの執筆生活。弟子への対応。書簡の率直さ。改めて偉大さを痛感した。
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