ハーンと漱石の2本立てで
今日は夏の空じゃなく、薄日あるいは薄曇りといった空模様。山かどこかにあるいは夕立で雨が突如降ってもおかしくない。
昨日と同じで、午後の早めに庭仕事して、五時過ぎには着替えを持って銭湯へとも考えたが、連日の銭湯は吾輩には贅沢過ぎる。働かざる者 銭湯へ入るまじでもある。家のお湯の出ないシャワーで我慢である。
『夏目漱石全集〈14〉 (1974年)』(角川書店)を本日読了。一か月以上を要した。その割に理解のほどは怪しい。
実を云うと、明日(つまり今日)は休みということで、昨夜は残りの80頁を読み切ろうとした……が、あと20頁というところで寝落ちしてしまった。情けない。庭仕事と、汗まみれのままに銭湯へ向かった疲れがドッと出たということか。
書庫に眠っていた本。というか、角川書店版の全集を古書店で購入。小説などは読んだが、この「文学論」の巻については、いつかはと思いながら、困難さを予感し、先伸ばししてきた。
本書、読めば読むほど漱石は凄いと感じる。徹底して研究し講義する。こんな講義を聞いて理解できる学生も優秀なんだろう。昨夜の寝落ち寸前の箇所(本論もあと30頁ほどで結末かという辺り)では、天才論が熱っぽく語られている。天才の多くは世に受け入れられず、理解されずに非業の死を遂げる。確かに、時代にあっさり理解されるようでは天才じゃないんだろう。つまるところは、己の信じるところを生き尽くすってことか。
言うまでもないが、天才には漱石自身が反映されている。何も自分が天才だと自惚れているわけじゃなく、留学の地ロンドンで着想し企図した文学論の壮大な構想を一生懸けて実現しようとした、その規模や独創性のあまりの高みと深み困難さに、身の震える思いだったことを示している。
実行できたことは、漱石の当初の構想の何分の一にも及ばなかっただろう、あまりに中途半端だったろう(学生による講義ノートを基に漱石による若干の手直しの上に本文学論は成っている)。このまま構想の実現に邁進したなら、やはり中途半端で終わり、且つ彼の業績は立派な試みだったとして、敬して無視されるに終わっただろう(物好きな後生の研究者による専門家すら読まない論文が数年に一度書かれるかどうか……)。
後生の我輩のよふな文学の門外漢ですら、生意気にもこうして手にするのは、「坊ちゃん」や「我輩は……」から「明暗」に至る作品群があるからに他ならない。講義録はそれとして、漱石は創作したかったのだ、文学研究者として生きるのではなく。
この講義にしても、ひと月半前に読了した「文学評論」同様、漱石の創作衝動が煮えたぎっているのが感じられる(晩年の10年ほどの創作活動)。他の当時の高名な作家たちとは、出発点自体違う。創作活動の姿勢や方法論自体が自己本位なのである。
代わって、『夏目漱石全集〈1〉 (1973年)』(角川書店)を読み始めた。これほどの英文学の勉強や理論を語るものがどのような小説を書くのか、確認しようと思った。小説そのものは、1990年代の岩波版漱石全集や、その前に各種の文庫本で大概の作品は二度ならず読んできた。
が、それから随分と時間が経った。ある意味、辟易に近い感もあったのだ。少しは若いころより文学の世界を広げた今の自分がどのように感じるのか、興味深くもある。
『ラフカディオ・ハーン著作集 第6巻 文学の解釈 1』(恒文社)をつい先日から読み始めた。本著作集も早四冊目となった。コロナ禍だからこそ、こんな読書が現実化している。皮肉なものだ。
ハーンは漱石の前の英文学講義を担っていた。日本の学生に英文学を理解させようと懇切丁寧に。漱石と比べ、己の出自の文化であり文学なので、肩の力が抜けていて、聴いていたら楽しかっただろう。ハーンは、突如、首。後任は漱石。明治政府はそろそろ日本人による英文学講義が可能だと言う判断を下した。ハーンは、松江へ熊本へ島根へ。漱石は松山や熊本へ赴任。ハーンの後を追うように。何故なの?
というわけでしばらくはこれまで同様、ハーンと漱石の2本立てを中心の読書になりそう。
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