夏はロートルには辛い
先月は読了した本が19冊と、読んだ本がそれなりに増えているが、読みたい本も増えている。一時は、読みたい本の数を500冊に制限しようとしたけど、あっさり突破。今はせめて、読みたい数が読んだ数を越えないようにと思ってるが、本を買わないんだから、読みたい本の数は減りようがない。せめてもの慰めは、積ん読の数が激減したこと。……本を買ってないんだから、当然至極の傾向なんだけどね。ちょっと悲しい現実。
← オスカー・ワイルド 著『ドリアン・グレイの画像』(,西村孝次訳 岩波文庫)「美貌の青年ドリアンが罪を犯してもどった夜,彼の肖像画は奇怪にも口許に残忍な微笑を浮べていた.快楽にふけり醜さを加えてゆく彼の魂そのままに,肖像は次第に醜悪になってゆく.美貌と若さを保ちつづける肉体と恐ろしい姿に変貌する魂との対比を主題に,ワイルドがその人生観・芸術観・道徳観をもりこんだ代表作」
オスカー・ワイルド 作の『ドリアン・グレイの画像』を読了した。ほとんど仕事の合間にせっせと。何十年ぶりの再読…三回目か。
まず、題名に違和感がある。画像とあるが、肖像が望ましいと感じる。「肖像とは、特定の人間の外観を表現した絵画や写真、彫刻である」。画像とは、「事象を視覚的に媒体に定着させたもので、(中略)定着される媒体は主に2次元平面の紙(後略)」とやや広義。本書の場合、まさに主人公の肖像画が狂言回しの焦点になっている。
この作品は、耽美主義であり芸術至上主義的であり、1890年の作ということもあって、世紀末的雰囲気を濃厚に漂わしている云々と語られる。その辺りは世上に語られる評に任せる。本書が今後も小説としての命脈を保つとしたら、若き日、己の美貌に酔いしれ、若さの特権と併せ己の都合と快楽のためには周りの犠牲など眼中にない人間の生き方の悲劇を描いた作品という点にこそ求めるべきか。年を取ること、体が衰えること、何より外見が重視される世界。科学の発達が嘗ては不可能だった若さの持続を可能ならしめるに違いないという思いの齎す、行き場のない、見果てぬ幻想。小説の途中、ウイットに富んだかのような芸術や人生観談義がやや鬱陶しいが、そこは時代の制約ということで、結末に至る最後の展開はなかなか読ませる。今後も映像化の可能性がありそうである。
『ラフカディオ・ハーン著作集 第6巻 文学の解釈 1』(恒文社)を読み続けている。
我輩は、詩にも疎いのだが、そんな我輩にもハーンの詩(人)紹介は分かりやすく面白い。思わず詩集を買っちゃおうかと思ったり。が、自制。詩は文章じゃないから、意味が分ければいいってものじゃない。音韻やリズムさらには何ゆえその言葉が選ばれたかが分からないと感じきれない。19世紀前半までのイギリスにも優れた詩人がいた。対訳で楽しむかな。
一方、『夏目漱石全集〈1〉 (1973年)』(角川書店)を読み始めた。冒頭の作品は「坊ちゃん」。漱石の「文学論」などを読んできたせいか、小説としてというより、漱石の田舎での教師暮らし、あるいは帝大での講師の鬱屈した生活の鬱憤晴らしをしたような作品という印象を受けた。
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