漱石と自転車との不幸な出合い
『夏目漱石全集〈1〉 (1973年)』(角川書店)を相変わらず読み続けている。
「倫敦塔」も漱石独特の諧謔的というか江戸風…落語的な滑稽味があって楽しかったが、「倫敦消息」もなかなかおもしろかった。ロンドンからの子規への手紙。子規が面白いからと、「ホトトギス」に載せたもの。ロンドン滞在中に、子規は亡くなった。
続く「自転車日記」がこれまた傑作。神経衰弱になり下宿に籠ってしまった漱石に、外の空気を吸わそうと、知人が自転車に乗ることを勧めた。無理矢理ボロ自転車に跨がり……。乗ったことがないとは言わない(言えない)漱石の悪戦苦闘ぶりのドキュメント。転倒や壁への激突などの挙げ句、乗る能わず、下宿の婆さん連に憐れまれるに終わる。嗚呼!
アイスクリームを食べなくなって3年。石の上にも3年。栄養士さんに、炭水化物ダメ、油っこいものダメ、塩っ辛いのダメ、炭酸飲料ダメ、極めつけは甘いものダメで、アイスクリームは夢に。アイ スクリーム ユー スクリーム 好きだよ~~!
ガス代の請求書が届いた。湯沸かし器でのお湯洗髪の影響か、ガス代の基本料金はダメだった。
← 『ラフカディオ・ハーン著作集 第6巻 文学の解釈 1』(訳者:池田雅之/伊沢真一/金沢豊/中里寿明/立野正裕 解説:池田雅之 恒文社) 本巻内容:ヨーロッパ文学研究のむずかしさ 至高の芸術について 文体上におけるロマン主義文学と古典主義文学 クーパー、ブレイク、ワーズワス、コールリッジ、バイロン、シェリー、キーツ、フッドなど詩人論 カーライルの『衣装哲学』について 社交詩の作家 『ジャグパットの剃髪』 文学と世論 など
『ラフカディオ・ハーン著作集 第6巻 文学の解釈 1』をこの連休に残りの260頁を読み切り読了。感想めいたことは随時書いてきた。
素晴らしい本だった。大学での英文学講義録。当然ながら、フランスやドイツ、アメリカ文学(作家)への言及は抑制的。となると、そちらも読みたい(「アメリカ雑録」は読んだが、これは講義録ではない)。
一連の「ラフカディオ・ハーン著作集」は、本巻で4冊め。長年書庫に眠っていた……コロナ禍を契機に引っ張り出してきた。サラリーマンになって本を買えるようになり、何冊かを集めたが、収集の中途で頓挫。今思えば、全巻揃えておきたかった。
ハーンの英文学講義は卓抜してる。日本の学生(帝大生)相手を意識して懇切丁寧。数多くの作家詩人に魅了されちゃう。こんな講義受けるなんて、羨ましい。ハーンが首になった際、惜しまれたのも無理はない。
ハーンのあとを漱石が担った。大人気だったハーンの講義内容は、漱石は知っていたのだろうか? ギリシャ哲学や文学神話から始まって、膨大な造詣に基づく文学味たっぷりのハーンの講義を上回るには、漱石はどれほど勉強しなくちゃいけなかったか、そら恐ろしい。
ハーンの講義録は、一連の怪談ものなど新奇な作風が持ち味の旅行作家という欧米での評価を一変させた書。講義は東京帝大での1896年から1903年までの主要な英文学講義を編纂しアメリカで出版されたもの(ハーンは草稿も作らず、僅かなメモを手に語ったもの。文章に煩いハーンはアメリカでの出版に関わっていない。ダメだしを喰らったろう)。それだけにハーンの熱意や学生への思いやりの気持ちが溢れる書でもある。
講義には、筆記した学生の他に上田敏、土井晩翠、小山内薫、戸川秋骨らが関係していた。本書など講義録は、芥川龍之介、夏目漱石、小川未明、永井荷風、荻原朔太郎らに深い感銘を与えた。講義であると同時に一個の作品ともいえる業績。ハーンの日本などでの業績は、深い学識と文化理解に基づいた、再検討を迫られるものと思える(というか既に素養ある人たちの間では玩味され自家薬籠中のものとなっているのだろうが)。
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