ナボコフ『ロリータ』読了
← ウラジーミル・ナボコフ/著『ロリータ』(若島正/訳 新潮文庫)「中年男の少女への倒錯した恋を描く恋愛小説であると同時に、ミステリでありロード・ノヴェルであり、今も論争が続く文学的謎を孕む至高の存在でもある。多様な読みを可能とする「真の古典」の、ときに爆笑を、ときに涙を誘う決定版新訳」
今日は雨。折々雨の止み間もあって、その隙間を縫って自転車を駆って買い物へ行ったりした。が、少しは庭仕事するかと思ったが、雨が降り出し、無理は禁物と自制。読書に専念。夏目漱石の『文学論』と、更科功氏の本とを交互に読んで過ごした。大半は居眠りだったが。
ウラジーミル・ナボコフ著の『ロリータ』を読了した。小生は、若いころ、二度、読んだことがある。どうやら、最初は大久保康雄氏の手になる翻訳(新潮文庫)だったようだ。最初は、ロリコンもの、ポルノ紛いの本を期待して読んだ気味がある。が、期待が見事に裏切られ、吾輩の読解力が足りないのかと、数年後、再読したものだった。が、その二度目もあっさり跳ね返された。何故にかも分からないまま。
その後、若島氏によりハードカバーの翻訳が出たらしいが、吾輩は気づいてなかったようだ。この若島訳の新潮文庫版だが、英語版の『ロリータ』をナボコフ自身がロシア語に訳したものがあり、それらを踏まえての新訳となったようだ。(実際の翻訳事情はもっと複雑だし、そもそも原書の『ロリータ』が出版に至る経緯も生みの苦しみがあった)。この吾輩にとっての新訳を読めて幸いだった。
大久保版の『ロリータ』が書庫に見当たらず、已む無く新たに新潮文庫版を買い求めたのだが、そんな経緯を知ることもなく、本書を手にしたわけである。読み終えてから、解説を観て、大江健三郎の文が載っていてびっくりした。あれ? こんなの昔あったっけと、唖然。
そんな吾輩の戸惑いなど、まさに私事である。いずれにしろ、『ロリータ』を読み返してよかったとつくづく思う。今回は、春先にナボコフの文学講義を四冊立て続けに読んだこともあり、ナボコフの小説は何冊も読んできた。ナボコフの評価はどうであれ、ウエルベックの小説で鍛えられてもいる。そんなハイブローな講義をするお前はどうなんだと、『ロリータ』を読み返して、これはかなりレベルの高い小説だと、つくづく感じ入った次第。下世話なポルノ小説の期待はあっさり裏切られるが、代わって意匠を凝らしたナボコフならではの虚構…物語の世界が繰り広げられる。アメリカを車で動き回るロードノベルとしても読めるが、究極のところ、これは純愛小説だと思った。語り手の、惚れた少女への、あるいは一度惚れた少女像への一途な想いが、ついには彼が涙ぐむほどの中年男の純情物語に成り果てる。
いやはやである。が、小説なんて、作家の見果てぬ夢を追う究極の手段だということであるなら、これも大いにありかなと思うのだ。傑作である。
← 更科 功 著『若い読者に贈る美しい生物学講義 感動する生命のはなし』( ダイヤモンド社)「最新の知見を親切に、ユーモアたっぷりに、ロマンティックに語る。あなたの想像をはるかに超える生物学講義」
更科功 著の『若い読者に贈る美しい生物学講義 感動する生命のはなし』を読み始めた。『残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか』(NHK出版新書)以来、同氏の手になる本は二冊目。まだ半ばだが、読みやすく分かりやすい。初学者向けか。ただ、惜しむらしくは装丁など本作りがやや安手。書店でたまたま生物学(自然科学)の書架を物色して見つけたのだが、更科氏の本を読んだことがあるからこそ手にした。そうでなかったら、素通りしたかもしれない。ま、内容とは関係ないけどね。
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