水の哲学
← 関根虎洸/著『遊廓に泊まる』( 新潮社 とんぼの本)「売春防止法施行から60年。地図上から「遊廓」は消えても、転業旅館や飲食店として今なおその姿を留める元妓楼があった! そんな希少な現役営業中の「泊まれる遊廓」を渾身取材」
本夕、二週間ぶりに銭湯へ。垢塗れの体がすっきりするのが分かる。恒例の体重測定。幸い、この一か月は変化なし。19日、21日の汗だくの庭仕事の効果か。
関根虎洸著の『遊廓に泊まる』を読了した。女性にとっては苦界。一部の男性には愉楽の場。遣り手婆さんがいて日本各地へ 女性を買い付けに行く。貧困の極みにあった時代にあって、僅かなカネで苦界へ身を沈めていったとも。贅沢と妍を凝らした意匠の遊郭の建物。赤…朱色主体の外観。男の欲望を満たす場。濃厚接触の場にあって思惑がどこまでも擦れ違う真っ赤な闇の場。
車中での待機中には、上掲書に代わって竹村 俊則著の『名歌京都百景』(京都新聞社)やワイルド著の『ドリアン・グレイの画像』(岩波文庫)を読み始めた。
一昨日も寝落ち。夕方に庭仕事してシャワー 食事したら、数頁も読まないうちに。翌日が仕事じゃなければ、夜中に目覚めてから、清新な気分で読めるんだが、仕事……眠くなくても目を閉じて悶々。無為な時間が消えていく。眠ったかどうかわからない夜を過ごした後、早朝起き上がって食事し仕事へ。不規則の極まりのような生活。だましだまし仕事して、なんとか夜半まで頑張る。が、無理の影響は翌日の休みに来る。寝たり起きたりして、夕方頃、やっと動く気になれる。と、その頃にはもう翌日に備えないといけない。老骨に鞭を打ってやり過ごす日々。
自宅では、漱石の『文学論』や『スティーヴンソン ポケットマスターピース 08』 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)を読み続けている。
スティーヴンソンは、かのヘンリー・ジェイムズとも長く交流を持った本格的な作家。「宝島」などがあまりに人気を読んだので、大人の鑑賞に耐える作品が注目されなくなったようだ。
実際、『ジキル氏……』の他の作品を幾つか読んだが、読み応えがある。
雨続きだからというわけではないが、ふと、水に絡む思い出が浮かんできた。それは高校時代での西谷啓治さんの講演のこと。
西谷啓治さんには思い出がある。高校の教頭が京大の同窓か何かの縁があった。だからだろうか、我輩が高校の2年か3年な時、高校で講演。題名は忘れたが、水の哲学。ターレス辺りに絡めて。デカルトやパスカル、ベルクソン、ニーチェ、ヴィトゲンシュタイン、ラッセル、西田幾多郎、三木清、親鸞らを読み漁り哲学に惹かれていた当時の我輩には、絶好のタイミングの講演だった。
西谷啓治さんの話は訥々としていて声高らかではなかったが、水のイメージが脳裏に鮮やかに描かれた。(後年、バシュラールの水の哲学への傾斜に繋がったかも)惜しくも、愚かにも西谷啓治さんの話に感心しつつも聞き流すだけだった。感動したからには、帰宅してからでも、メモしておくべきだった。何度も記録しなかったことを後悔した。高3の夏休み入り直後の8月1日、理系から哲学志望に転向したのだった。
西谷啓治さんに全集があるだろうが、さすがに母校での公演の記録などは載っていないだろうな。
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